その勇者はバス停から異世界に旅立つ 〜休日から始まった異世界冒険譚〜

たや

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再開の二人

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夕暮れまでは時間はある。
おばちゃんには日が落ちるまでには戻ると伝えてあるし少しだけ腕試しでもするか。

センタレア周辺は王国新兵の鍛錬や冒険初心者の為にどういう理屈かは聞いたことは無いが生息している魔術の強さを意図的に弱い魔獣のみに絞っている結界があると聞いた。

二つ角の兎ダブルホーンラビット暴走水牛カウレイジは問題なく倒せた。流石にEランクには手間取らないな」

マナストーンと残った物は忘れずにカバンに詰めて
これでよし

しかしごく稀にその結界に迷い込むDランク以上の魔獣がいるらしい。

「シャドウ・タイガルには勝ったけどあいつってDの中でも下の方だしな。トロルもDの中でもそこそこ上だったけどそんなに変わんなかったし今の俺のリハビリにはもってこいだ」

一応今日は体にハーモラルのマナを吸わせて軽く慣らすだけの予定だが可能であれば今の自分の上限値も知っておきたい。

「お、木槌の魔猿ハンマーモンキー

急な殺気を感じて振り向くも時すでに遅し。
ハンマーモンキーが最期に見た光景は嬉々とした狂った顔で拳を燃やしながら飛びかかる人間の姿だと言う。

「マナストーンも小っちぇ~。こんなん売ってもそんな金になんねーよ」

瞬間、強大な魔力を持つ魔獣の気配を少し離れた場所から感じた。

今の気配…間違いない
Cランク以上の何かが出たな

「よーし行っくぞぉー!」

大体の場所は察した。
そんなに遠くはない、走って5分かかるかかからないか。

「うぁぁぁぁぁぁ!」

男の叫び声?
あの崖の上からだ

崖を己の脚のみで駆け上がり踏破する。
ちなみにこんな芸当はマナ濃度の薄い地球じゃ到底できない。
駆け上がった先に見たのは電車一両ほどの大きさはある四足の赤いトカゲが旅人らしき男に火炎弾を放った光景だった。
旅人の男は死を覚悟したのか顔を覆い目を瞑っている。

「あんた、大丈夫?」

恐る恐る男は景色を覗き込むと目の前に立つは自分よりも幼い少年が平然とした顔つきでこちらを覗いていた。

「き、きみは?」
「冒険者だよ。話はあと、逃げれるなら逃げて」

震えた声の旅人に放たれた火炎弾は手で弾いたら空に昇っていき爆破。

「どなたか存じませんがありがとうございます!すぐに助けを呼んできますので!ご無理をなさらぬように!」
「はいはーい………行ったな」

この巨大に火の玉を吐くトカゲ…昔、図鑑で見た事はあるけど実際にお目にかかるのは初めてだな。

「たしか火吹きの偽竜ファイアレプタイルだったっけ?Cランクのド平均魔獣がこんなとこで何してんだか」

そもそもこいつの生息地はかなり外れてるはず
火山地帯や石炭が豊富に取れる場所をテリトリーにしている魔獣だろ

「お、炎の熱さ比べでもやるか?」

口を開けると炎が渦巻いており火炎弾の発射準備をしている。
体内の魔力を球状に整えてそれに炎を纏わせて発射するのが偽竜レプタイル種の特徴だ。

「っとお!」

先ほどより速い速度で放った火炎弾を今度は両手で受け止めた。

「ちょーっとだけ痺れるけど…問題ないな」

この個体は今までの狩猟をこの火炎弾で終えてきたのだろう。
獲物が死んでいないことに動揺してるのか何もせずこちらを見ているだけになってしまった。

「次は俺な」

火炎弾のお礼に、高く飛び上がり空中で縦回転をしつつ脳天に速度と重力の乗った踵落としをプレゼントしてあげるとどっしりと構えていた四足が崩れて腹面を地面にびったりと付けてしまった。

「はっはぁ!やっぱそこがお前の脳か!」

脳震盪でも起こしているのか動かなくなっているがマナストーンを残していないのでまだこいつは生きている。
再度、空中に舞い上がる。

「【着氷アイシード】!」

両手に纏わせるは氷の魔力。
空で拳を構える、手の届く距離まで魔力を限界まで滾らせたのち、脳天に両拳をぶつけた。

魔拳 内裂波まけん ないれつは

勝敗は決した事をリントは確信したのでファイアレプタイルから背を向けて戦闘が始まる前に地面においていたカバンを拾う。

しかしファイアレプタイルはまだ動く事が可能であった。
残った力で口を開きその獲物に火炎弾を放とうとしている。

「これさ、ぱっと見はただのパンチなんだけど。打ち込んだ相手の体内に魔力を直接流せるんだよね。んで、俺の魔力がお前の心臓とか脳とか大事な場所に到達したら仕込んだ属性に応じて魔法が発動するんだわ。だから

体内に感じる違和感は知性の低い魔獣とはいえ気づく事が容易だった。
最初で最後のという感覚を味わったファイアレプタイルは氷に包まれてその生涯はサッカーボール程の大きさのマナストーンとなって現れた。

「おっほぉ~!マナストーンでっけぇ~!おまけに火炎器官も残してくれたじゃ__!」

金属音が響いた。
誰かが見ていたのは感じていたが奇襲に気が付いた時にはすでに腰に置いてある錆びかけた剣を抜いて自分に向かって放たれていた氷魔法で生成されたであろうつららを捌いていた。

「おいおい、急に人に向かって魔法ぶっぱなすなんてマナー違反じゃないの?」
「あら失礼。助けを求めにきた旅人さんを脅かしていたのはてっきり盗賊かと思ったわ」

木陰から現れたのは長い白髪の少女。
円錐形の帽子をかぶっているためか目元までは確認できない。背丈は少女の方が低いが纏っている雰囲気の余裕さからみるに実力と年齢は近く感じる上に襟元にはセンタレア国直属魔法士の証のバッヂまで付いている。

「名前と活躍を聞いてすぐに確信したわ。あんたがセンタレアに来てるってことをね」
「わざわざ俺の事を探しに来てくれたのか。そんなに俺に会いたかったのかい?」
「えぇ、とっても」
「そいつぁうれしい。でも俺はただの旅人だぜ?国直属の魔法使い様に追われるような事をした記憶はないね」
「記憶はない…ね。私はずっとずーっとあんたの事を考えてたわよ。私の歴史においての唯一の黒星をね!!」

握っていた杖の先端を地面に小突くと少女の背後には魔法陣、そして30本はくだらない数のつららが今にも発射されんとばかりに待ち構えている。

あ、飛んできちゃった。

「まじかまじかまじかぁ!【着火イグナイテッド!】」

体全体から豪炎を巻き起こしつららの全てを溶かしきるも外に少女の姿はどこにもない。

「死になさい!リント・ヒナタぁ!!」

真上、直角90度。
杖の中は仕込み刃か!

錆びかけの剣で仕込み刃の杖と打ち合い、剣が負けてしまったが狙いは杖の軌道を逸らす事。
それさえ出来てしまえば…!

「きゃぁっ!」

杖の持ち手を掴んで少女ごと地面にぶん投げる。

「って…その顔…その髪…!」

円錐形の帽子が転がっていき現れた顔はとても印象深い顔だった。

「スノウ!?」
「いったぁ…」

かつてあの最後の夜に互いの力比べをしたあの可憐な少女だ。

「無事だったのか…よかったぁ!」

感極まって思わずスノウを強く抱きしめてしまった。

「はっなっせってのぉ!」

突き飛ばされた。

「ごめんごめん。いやー、嬉しいよまた会えて」
「ちっ」
「舌打ち!?」
「だって私も生きてたのは少しだけ嬉しいけどさ、あの約束守んないといけないじゃん」
「あの約束…約束…あっ!」

『あんたとケッコンしてあげてもいいわよ?顔はちょっとかっこいいし、あんたも私に惚れたんでしょ?』

10年前のあの夜の力比べの結果はリントの勝利、従って敗者のスノウは約束を全うする義務がある。
最初はジュースをタルで(パパが)買えばいいと思ったがリントの要求は最終的にこうなった。

『じゃあケッコンして?おまえのこと好きになった』

とその場でプロポーズだけでなく地球のお菓子についてきたおもちゃの指輪を差し出したのだった。

「スノウちゃ~ん。律儀にあの約束覚えててくれたのぉ~?ういやつめぇ~」

調子乗って頬を人差し指で小突くと本当に心底不愉快不快そうな顔をしていた。

「しっかしえらいべっぴんさんなってまぁ。いろんな男に言い寄られるんじゃないの?」
「鬱陶しいくらいにはね。でもあんたがくれた指輪見せたら引き下がって行くからそこだけ助かるわ。自分より弱い男とか恋愛対象外だもの」
「そんなものまだ持ってんのかよ。まあでもちゃんと覚えててくれて嬉しいよ。手荒なことしてごめんな」
「仕掛けたのはこっちなんだから謝らないで。それよりも」
「それよりも?」
「明日、もう一度私と手合わせしてもらえる?10年前のリベンジしたいの」
「全然いいよ。俺もちょうど自分の力知りたかったとこだし。あ、それともまた何か賭ける?」
「ふーん…じゃあ私が勝ったら10年前の約束放棄して」
「うぇっ!?」
「あったりまえじゃない。あんな子供の約束、馬鹿馬鹿し…」

うわめっちゃショック受けてる。
なんか顔から生命力無くなってるし…

「そ、その代わり私が負けたら!なんでも言うこと聞いてあげるから!」
「ほんとぉ!?じゃあやるやるー!」
「単純なのは変わらずか…」

明日…?何か忘れてるような…
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