その勇者はバス停から異世界に旅立つ 〜休日から始まった異世界冒険譚〜

たや

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魔王VSじいちゃん

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「立たんか、まだこんなもんではないぢゃろ」

魔王を地面に叩き落とし清も再び足を地に足付けると上半身に着ていた甚平を脱ぎ捨てた。
その体の至るところに傷跡が刻まれており、数々の修羅場をくぐり抜けた事を証明している。

「久しぶりだな…戦いの場で足を地に着けたのは」
「這いつくばってもいーよ?」
「ほざけ」
「ぬぅっ!」

その重装備のどこからそんなインチキじみた速さが出てくるのか。
瞬時に懐まで入り込み、怪しく光る魔力を纏った掌底を清の腹に押し付けると紫に輝く爆発を起こした。

「こんなものでは終わらぬか」
「当然ぢゃ」
「ではこれはどうだ」

魔王の掌は清の腹部に密着しておりその掌から魔力の刃を生やし腹から背中に貫通させる。

「遊びに来たのなら帰ったほうが身のためぢゃぞ」

刃の貫通をもろともせず清の右拳がお返しと言わんばかりに魔王の腹部に深く入れ込みその体を空中に浮かばせるほど殴り上げる。
しかし清には手応えはない。
肉を殴った感覚より鎧を砕いた感覚のほうが強かったのだ。

「お前は何着、着込んどるんぢゃ。鎧はそういうもんぢゃないに」

重い金属が地面に落ちた。
魔王は地面に着地せず黒い鎧のみを破棄したのだ。
だが、まだその奥には青い鎧を装着しており清の発言から考えてもまだ鎧を数着纏っているのだろう。

「戯れに付き合ってみれば調子に乗りおって」
「だったら速くワシを倒しすんぢゃ」
「いや…貴様を殺すことは骨が折れる。そうであった、そこの女も老いてもなお凄まじく研鑽された魔力だ。仮に貴様を殺したとて次に待つ戦い老婆で我が完全に勝てるとは言い切れぬ」
「ならば撤退せい、そして二度と地球に干渉するでない。貴様にその資格はぢゃろ」
「それは出来ぬ話しだ。だが、ここに釣り合わぬ者は消しておくとしよう」

人差し指を、魔王は向けた。
清にではなく少し離れた場所に絶対なる守護牢バルケクト・グアドに守られているに。

「…幸ぃぃぃぃっ!!」
「あいよ!」

次の魔王の行動を察した幸恵は杖をスノウ達の入っている絶対なる守護牢バルケクト・グアドに向けて強度を上昇させる。

「無駄だ」

糸よりも細く高密度の魔力の光線が夜に光る。
スノウの心臓を撃ち抜くべく三重に重ねられた絶対なる守護牢バルケクト・グアドを打ち破った。

「えっ…」

咄嗟のことで反応が出来ず、スノウは死を覚悟した。

あぁ。人の終わりって、案外なんの前触れも来るんだ
パパとママをまだ見つけられてないし、魔法士団の団長や先輩にもまだ学びたいこともあるのに
シアナお祖母様にも突然旅に出るとしか言えなかった
あと、一途に私のことを変に好いてくれてる男の子リントにはちょっとだけ申し訳ないかも

パパ、ママ、ごめんなさい
もし生まれ変わるとしてもあなた達の子として生まれたいです
願わくば、今度は私の成長を眼の前で見ていてください

なんてこの生を諦めていると体に軽い衝撃が。
まるで誰かに突き飛ばされたかのように。

きっと彼も咄嗟だったのだろう。
手で突き飛ばせばよかったのに全身を使って私をずらして…

「リント…?」

体を魔王の放つ光線に撃ち抜かれた。

分からない
何が起きたのかは理解している
でも

「「凜斗!」」

倒れた彼の体を受け止めると次第に手に温かな液体を感じる。
幸恵は慌てて駆け寄るが魔王の言葉がそれを止めた。

「おっと、ババア。バリアを解いても構わぬが…次こそ女殺す」
「くぅっ!」
「きさまぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

怒りに任せた清の右拳が魔王の顔面をぶち抜き崖に叩きつけた。

「なんで私を庇ったのよ!ばか!」
「ひひ…ぶじか?」

貫かれた場所は心臓からは離れてる。
だけど血は止まらない。

「スノウちゃん!回復魔法を使っておくれ!」
「【小回復エヘル】!」

だめだ
回復や支援魔法を本職にしてる人じゃないと私みたいな攻撃魔法が本職じゃ直せない

「リント!死なないでよ!ねえ!」

魔王は離れた距離に飛ばされた
今なら絶対なる守護牢バルケクト・グアドを解除して子どもたちを連れて逃げることが出来る!

「と、あのババアは思っているであろうな」

清に殴り飛ばされた先で不敵に笑う魔王に

「ワシの妻を侮るでない。貴様にはワシ達の孫を傷付けた責任を取ってもらうぞ」
「我もあの子どもを傷付けたのは想定外だ。あの少年は我のに必要なものだからな」
「計画ぢゃと…まさか!」
「あわよくば連れ去ろうと思ったが難しいな。ところで…ここは我の間合いだ…」
「ほざけぇ!ワシ間合いぢゃ!」

魔王は右手を貫手の形に変えると荒々しく弾け跳ぶ雷を纏う。
対して清は両手を握り合わせ、すべてを燃やし尽くす程の炎の魔力を込めた。

「【雷撃断裂貫らいげきだんれつかん】!」
「【魔拳 内裂激波まけんないれつげきは】ぁ!」



魔王の仕掛けた罠を見抜き、回避した上で絶対なる守護牢バルケクト・グアドを解く。

「おばあさま!リントが!」
「大丈夫だよ!おばあちゃんに任せな!」

凜斗を地面に寝かせて上半身を脱がせる。
後ろで巨大な爆発音が発生したが今は構っている暇はない。
自慢の夫が魔王を抑えることが出来ていると決めつけて凜斗を救うべく詠唱を開始した。

「生命の根源、循環する理よ。蝕む呪を滅ぼせ【肉体再生リ・バース】」

腹部に空いてしまった穴が少しづつ塞がるが流れてしまった血液は戻らない。

「大丈夫だよスノウちゃん。血の流れはひどくない、助かるよ」
「ほんと…ですか!」
「あぁ。おばあさまに任せな!」

死ぬんじゃないよ凜斗
こんなべっぴんさんが心配してくれてるんだからね

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