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学院都市 ナフィコ
しおりを挟むリント達がチキューに戻って5日後。
ヘンテコな模型を地面に差し込んだからそろそろあの車輪の付いた鉄の箱がどこからか現れてあの3人がそこから出てくるはず…
「薬師、大工。何故ここで止まっているの?」
事情を知らぬシフラとアテラはこれから何が起こるか分かっていない。
アレタはもう見慣れた光景なので落ち着いて見守る。
「何だこの音?」
アテラが聞き慣れない音を感知したということはいつものアレが来たということだ。
程なくしていつも通りの鉄の箱が地面を爆走していると思ったら急停止した。
「わぁ!この前の!」
「すごいわね…」
その中から出てきたのはスノウ、アヤネ、そして何故か殴られたかのように顔を腫らしたリント。
「やあリントくん。その顔、蜂にでも刺されたのかい?」
「よ、よぉアレタぁ…なんでも…ないぜ…」
「ふんっ」
「あはは…」
スノウとアヤネは呆れた顔でため息を付いたり頑なにリントに視線を合わせない。
一体地球で何があったのか?
「ナフィコはもう見えてるよ。ほら」
アレタが指差す方を見ると建物が多く建っている場所が見える。
あれが今目指している学院都市のナフィコらしい。
「この山は下るのに大体2時間だから…昼には到着出来るね」
「サンキューなアレタ。アテラにシフラも助かるよ」
「なんでギルドマスターがいねえのに旅すんだよ。まったく」
「誘った張本人がいないってどういう事なの?」
「ぐっ…すみません」
アテラとシフラから手痛い指摘を受けてただただ頭を下げるしかなかった。
気を取り直してダリオルの鞍に跨がりナフィコに向けて進む。
少し進むと整備された道が現れたのでどうやらこの辺りは人の通りがちらほらある模様。
「魔法使いさん。どうしてギルドマスターはあんなひどい顔をしてるのかしら」
「私のこと?」
絵画のように腫れた顔をしているリントが気になったシフラは歩きながらスノウに尋ねるとアヤネが間に顔を割り込んだ。
「裸見られちゃったもんねー」
「出発する直前に私とアヤネは一緒に湯船に浸かっていたのだけど…」
「見てねえ!」
先頭から犯人による否定の言葉が聞こえるが無視。
「偶然を装って風呂場に入ってきたのよ。それで私達が怒ってあの顔にしたって訳」
「まじで偶然だって!というか電気つけて入れや!」
「…このギルド大丈夫?」
「来週には解散してたりね」
「おい!冗談でも言うなよ!」
スノウほど気に留めていないのかアヤネは冗談が言えるほど軽い気持ちだった。
山を下ると家や見張り塔などの人工物が多くなる。
着実に街に近づいている証拠で自分たち以外の冒険者を見かけることも多くなってきた。
「久しぶりね…ナフィコも」
「スノウちゃん来たことあるんだっけー?」
「そうよ。去年までここで一人暮らしをして学校に通っていたの」
「じゃあ道案内頼むぜ。オレはシンヘルキからあんま出たことねえし」
「別にいいけど…用があるのはアレタとシフラでしょう?私達は何するの?」
「だったらみんなも合同市場を見てみないかい?僕が欲しい薬の材料だけじゃなくて武器とか魔獣の鱗とか売ってるんだよ」
「武器か…じいちゃんから渡されたこの剣錆びてるし丈夫な剣欲しかったんだよな」
「だったら今日と明日はナフィコで過ごそうよ!依頼とかも受けてみたいし!」
「そーだな。そーするか!」
「まずはダリオルと荷車預けれる宿探さないと…」
「だったら私が通っていた学校の宿舎がいいわ」
「学校の宿舎ってそんな簡単に借りれるの!?」
「私、ここでは顔広いから。任せなさい」
ナフィコ国立ユーレア魔法学院
センタレア大陸に数ある魔法学校の中でも頂点に君臨する魔法学校だ。
卒業できれば国直属の魔法士団への就職、魔法研究学会への入会、治安維持の中でも重役の配属など輝かしい未来が待ち受けている。
卒業できれば…だが
「あーらメロウルさん!一年ぶりでございすねェー!」
他の人を置いてきてスノウに着いていき校内に入るとあからさまに権威を振りかざして出来損ないの子どもを見捨ててもおかしくなさそうな大人がスノウとの再開を喜んでいた。
数多の大人に怒れられてきたリントが直感的にこの大人は嫌いと判断したようで獣のように威嚇している。
「バミナ先生、お久しぶりです」
「センタレアの魔法士団はいかがですかァー!というかその横のみずほらしくこの場にふさわしくない獣のようにいきりたっている子は…」
「ぐるる…!」
「私の部下です」
「え?」
「まァー!なんと一年で既に部下をお持ちなの!?さすがはユーレア学院創立以来の天才少女!飛び級で卒業しただけでなく仕事も順風満帆だなんてェー!ナフィコに訪れたのもお仕事で?」
「ええ。私とこの子を含めた部下6人が泊まれてダリオルと荷車2台が預けれる宿を探しているのですが…」
「そォーんな事!メロウルさんであればいつでも学院の宿舎を使ってくださァーイ!3部屋すーぐに使わせるよう連絡しまァーす!ダリオルちゃんにも最高のおもてなしをォー!」
「ありがとうございます先生。ほら、行くわよ」
「部下…部下…」
部下と言われぶつぶつと虚無に浸っているリントの耳を引っ張り連れ出す。
廊下を歩いていると気を取り直したリントが窓から外の景色を見てスノウに聞く。
「ナフィコっていろんな学校が集まってんだろ?どの学校が一番すげーの?」
「どれもすごいいわよ。でも強いてあげるならユーレアとカヤトとジャルザンかしら」
「ジャルザン?カヤト?俺地球人だから知らねえな」
「分かってるわよそのくらい。あんたにも理解できるようにざっくり教えてあげる」
「お願いします!」
「カヤトはカヤト自然学院。魔獣、植物の生態や天候、マナを研究する学校よ。ここを卒業する人は自然学者とかになる人が多いわね」
「へー!面白そ~!」
「ジャルザンは騎士学校。名前の通り騎士になるための学校よ。剣術だけじゃなくてどんな事態にも対応できるように常日頃から厳しい鍛錬と護衛術を学んでいるわ。卒業後は…大体どっかの国の王国に仕えるわね」
「じゃあみんなつええんだ。だったらここで強いやつ…できれば歳近いやつ仲間にしときたいな」
「この国の同年代で私より強い人なんていないわ。いや、1人だけ…」
自分の力に結構な自信を持っているスノウが珍しく自分以外の強者を考えた。
「なんにせよ、みんな学生なんだからここじゃ着いてくる人なんていないわ。アヅラタンで探しましょう」
「そーだな。さっさと荷物置いて、合同市場見に行こうぜ」
ナフィコ国立ジャルザン騎士学校
の、屋上に仰向けに背中を地面に付け、昼寝に勤しむ少年がいた。
その傍らには柄から切っ先にかけて細くなっている大剣が壁に立て掛けられており、周辺には鍛冶や大工の失敗した鉄くずの山がそびえ立っている。
「んだよ、うるせえな」
地上が騒がしくなってきたのを感じて目を覚まして体を起こす。
学院の屋上から地面を見下すと荷車を引いている商人が多く動いている。
「あぁそっか、合同市場やるのか。ちょうどいい、俺もそろそろやるか…」
幼き時から実行すると決めていた計画。
それの引き金を引くのは今、この時期が相応しい。
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