その勇者はバス停から異世界に旅立つ 〜休日から始まった異世界冒険譚〜

たや

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ただの旅をしよう

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この役割は気がつけば自分に固定されていた。
異界へと戻っているギルドマスターを迎えるために謎の模型を地面に突き刺す。

「なぁ、アレタは何をしてるんだ」

その様子をバルは少し離れた距離から見ていた。

「まぁ黙って見とけ。またアレ見れるぞ」

「あぁ。アレね」

アテラとシフラは2回目のアレ。
バルに関してはこっちハーモラルから向こうチキューへ行く所しか見ていないので驚くだろうか。

「うぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ッ~~~!!!」
「あははははっ!」

アレタが刺した模型のすぐ近くに空から鉄の箱が降り落ちてきた。

「おお。この前の鉄の箱じゃねえか」

「ちっ。つまんねー反応だな」

想像より冷めた反応のバルにアテラは舌打ち。

そしてその箱の中からは少年の叫び声と少女の笑い声が漏れ出ており、青い顔したリントとスノウ、上機嫌で楽しそうな顔をしたアヤネが出てきた。

「やあリント君たち。相変わらず死にそうな顔をしてやってくるね」

「おぼぼ…アレタ…状況…は?」

「あと2日でミガレユノの中心街ってところかな。夕方には小さな村に着くよ」

「おっけー…うぷ。アテラぁ…もうちょっとだけダリオル引いて…休む…」

「ったく、分かったよ」

ヨボヨボとした足取りで後方の荷車に乗り込み、横になった。

ハーモラル到着2分後、ギルドマスターダウン______

「ごめんアレタ。私もちょっと…」

「うん。ひどくなったら教えてね」

ハーモラル到着3分後、副ギルドマスターダウン______

「アヤネちゃんは大丈夫?」

「うん!私ああいうの好きだから!」

元気をアピールするために側転などのめちゃくちゃな動きをする。

「大丈夫そうだね。じゃあこのまま移動しようか」
「そうだな」
「そうね」
「うん!」
「おう」

ダリオルの鞍にアテラは跨り、手綱を握ると歩み始める。

アヤネが歩いていると周りの植物がナフィコで見た植物と葉の形が違うことに気づいて落ちている葉がついている枝を拾い興味深そうにそれらを観察。

「なんか肌寒いかも…」

「ここはもうミガレユノの領内だからね。木々も針葉樹が多いしベリダバ山に近づくにつれて寒くなるからどこかで上着を買った方がいいよ」

後ろからアレタが自分が疑問に思っている事を解決してくれただけじゃなくて更なるアドバイスを頂いた。

「確かに…この格好じゃ凍え死にそー…」

「あたしもこの気温では泳げないわ。かと言って歩いて向かっても多分凍え死ぬもの」

「へへ。じゃあ会えてラッキー!だね。シフラちゃんはミガレユノでなにするのー?」

「…人を探してるの」

「人?だれだれ?」

「あたしの___」
「きゅむぅおん!!」

シフラの口から誰を追い求めてるか聞こうとすると魔獣の咆哮が前方から響く。

「おおい、なんだこいつ。でっけえな」

ダリオルに跨って対面しているアテラ見たのは白い剛毛を纏った妙に愛くるしい姿のまん丸とした見上げるほどの大きさの魔獣だ。

「おっきくて可愛いー!」

「きゅおん!」

4メートルはある全高に臆さずアヤネは近寄り魔獣の体を撫でた。

「見た目に騙されんなよ。こいつはホワイトスィール白雪あざらし、Cランクの魔獣。ごりっごりの肉食獣だ」

「え?」

バルの解説に耳を貸して魔獣から目を逸らしてしまった。
異形の口が悍ましく開いているとも知らずに。

そして低く鈍い音を立てながら口を閉じてアヤネを食らう。

咀嚼するも口の中に食べ物が入っておらず噛みしめる感覚も味わえない。

「もー!怖いじゃん!食べるなら食べるって言ってよね!」

頭部に何者が足を乗せており、声を発している事に気付き体を揺らす。

「きゅきゅ!」

暴れるとその感覚は無くなるが自らの捕食を妨げられた野生のプライドが傷つけられた。
その事で目的を捕食から戦闘へと切り替える。

「きゅきゅおーん!」

「こいつの肉はうめえ。魔力を介さずに殺せれば食糧になるが…ちとデカすぎるか」

「そうだね!じゃあいつも通りやっちゃおう!」

「よーしオレもやる!」

「あたしも手伝う」

「怪我したら教えてよ!後ろで控えてるから!」



荷車の揺れが心地よく、気がつけば眠りについていた。
それもそうだろう。
地球を出発したのは午後7時なのだから睡眠を取るには生物的に当たり前。

「悪い、ちょっと寝ちゃったわ」

荷車から降りて先頭のダリオルの手綱を握っているアテラに軽い謝罪を入れた。

「よう、寝坊スケ。よく寝れたかよ」

どことなく体に汚れがついていたり衣服が乱れていたりと何か一悶着あったのかと想像してしまう。

「ああ、気持ちよく寝れたよ。ありがとう」

「はは!そうかよ!んじゃ、オレもちょっくら休憩してくらぁ」

ダリオルの鞍と手綱を受け継ぎ旅を再開する。

「そういえばアレタ達は…」

「呼んだ?」

リントは荷車から左側面に出たが、アレタとバルは右側面を歩いてたらしい。

バルも多少衣服が汚れており、やはり何かしらのアクシデントがあったのだろうか。

「…なんかあった?」

「ちょっと魔獣が出ただけだ。誰も怪我してねえよ」

「ええ!起こしてよ!」

「別に、起きてる奴らだけで十分だ。それに休んでるギルドマスター起こせるかよ」

「そっか…気遣いありがとな。でも今度からは起こしてくれよ。仲間になんかあったら嫌だからな」

「俺が負けるわけねえだろ」

「バルくん。多分そういう事じゃないと思うよ」

「そういや綾音とシフラは?」

「シフラちゃんは…」

「ここにいる」

後ろから声が聞こえたので振り向いて上を見ると小部屋タイプの荷車の上に座り込んでいた。

「見晴らしいいわね。ここ」

「そうか?」

「ええ。アヤネは部屋の中よ」

シフラは指を下に指す。

その中にはこの中の誰よりも疲弊して誰よりも満足気に眠るアヤネの姿が確かにあった。
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