その勇者はバス停から異世界に旅立つ 〜休日から始まった異世界冒険譚〜

たや

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VSキュクロップスとか

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陽はまだ沈んでいない。
情報によるとキュクロップス一つ目巨人が活動を始めるのは昼過ぎ。

7メートルはある巨大が動けば辺りには振動が響き渡り低ランクの魔獣など恐れをなして逃げてゆく。

Bランクの脅威度に定義づけられている故、生半可な腕の者では返り討ちに合ってしまう。

そして本日もその魔獣は行動に狂いなく活動を始める。

行動理由はもちろん、生きるため。

自らの種を残すために生きようと毎日獲物を喰らい、時折感情に任せて木々を破壊し満足感に浸ることもある。

例え誰であろうとこの身と生活に危険を及ぼすのであれば力づくで排除せねばならない。

「へー。ほんとにでっけーなぁおい」

正面から小人達が悠々と歩いきながら自分を見上げていた。
取るに足らないほど小さく非力に見える小さな命だ。

「油断するなよ。図体の割にすばしっこい時あるからな」

「りょーかい。どうする?2人で一緒にやる?」

「金稼ぎを優先するなら手短に終わらせたほうがいいだろうな」

「そうだな。いっちょやりますか。アレタはちょっと下がってて」

「もちろん!下がりまくるよ!」

目の前に立つは両手の指を鳴らしてウォームアップを行う人間と背中の大剣をこちらに向けて構える人間の2人。

非力に見える人間は距離を取って後ろから2人を見守っている。

着火イグナイテッド

1人が何かを唱えると体に赤く燃ゆる炎を拳に纏い身を構えた。

明確な敵意を痛い程この身に感じたので威嚇を兼ねて大声で叫ぶ。

「ヴヴォォォォッ!!」

小さいからといって侮り痛手を負った同胞を何度も見てきた。
だからこそ慢心せず、叩き潰さねばならない。

「ウヴァウ!」

炎を纏う少年を叩き潰そうと拳を振り下ろす。

「威勢がいいなぁ!手っ取り早いのは大好きだぜぇ!【魔拳 炎上抉えんじょうけつ】!」

キュクロップス一つ目巨人の振り下ろした右拳に相対するのは炎を纏った右手を空へと昇るように突き上げた少年の技。
普通の格闘技的なソレとは違う。
技量、魔力、力、それらすべてが最適化され効果的なダメージが与えられるように研ぎ澄まされたワザだ。

「んっぐぅ!重…!」

上下2つの力がぶつかり拮抗して、どちらが先に折れるかの力比べになる。

まあ、それは1VS1タイマン勝負の場合のみに限るが。

視界の端に大剣を持った少年が高速で移動してたのを確認できた。

「足止めご苦労さん」

ほんの一瞬、時間にして3秒にも満たない僅かな時間だったがこの少年は大剣を持ったまま地面を駆け、跳びあがり、空中で剣を構えている。

「【迅雷断裂ボルトディヴァイド】」

鉄で造られているであろうその巨剣に雷が迸り、空気が弾けて圧倒的な存在感を示している。
そして同時に秘めたる危険性も。

「ヴングァァ!」

咄嗟に左腕で薙ぎ払おうとするが間に合わなかった事を悟るのは遅くなかった。

「ヴグガァ…」

左脇腹から右肩にかけて大きな切り傷を刻まれてしまい背中を地面につけて倒れてしまう。
倒れた後に目に入った光景は空中の2人の少年が背中合わせに各々、技を繰り出す最中。

「【強襲炎蹴レイダーズキック】!」
「【轟けるブリッツ落雷ストライク】」

炎の少年は炎を纏った右脚を突き出して落下してきており、大剣を持つ少年も剣を下に向けて突き立てながら落下している。

両手を交差させ防御を試みるがそれは無意味だった。

「おぉぉらぁぁぁぁ!!」

炎の少年の蹴りと大剣の少年の剣がキュクロップス一つ目巨人に触れると爆発が発生し、周辺にも轟音を響かせた。



場面は雪落とし鳥スノーフォールバードの群れの駆逐へと出向いたスノウとアヤネに切り替わる。

牧場から少し離れた森に巣を作っていたことが発覚したので巣の破壊と雪落とし鳥スノーフォールバードの駆除へと行動を変更し、目的地へ向かっていた。

「う~、寒いなぁ。スノウちゃん寒くないの?」

「ううん、むしろ心地良いわ。雪に宿っているマナが私に合ってるもの」

「ユキにヤドッてるマナ?」

「ほら、私って氷属性の魔法使うでしょ?だからこういう冷たくて自然の生命力が強い場所だと調子がいいのよ」

かなりざっくりと、端折って説明をしたがアヤネにはいまいち理解できていない様子。

「ほんっっとうにわかりやすく言うと自分の属性と似た環境ならちょっと強くなるって考えね」

「なるほどぉ…だから私も夜になったらちょっとテンション上がっちゃうんだ」

それは多分関係ないと思うけど…
もうめんどくさいからやめよう

「キキィーッ!キィーッ!」

「この鳴き声…間違いない!」

上空から鳥の鳴き声が聞こえたので空を見上げる。
するとそこには今回の依頼の目的である鳥の魔獣が群れで悠々と西へと飛翔している。

数で言うと30匹以上は確実か。

雪落とし鳥スノーフォールバードの群れよ!巣が近くなってきてる証拠ね!」

シンヘルキで壊してしまった杖に代わって新たな杖を地面に数回小突き背後に魔法陣を出現させてそこからつららを百本ほど生成する。

「スノウちゃんのその杖かっこいいー!」

「これ?ナフィコでこっそり買ったの。高かったんだからちゃーんと役に立ってもらわないとね。【踊るつららアイスクロウ】」

上空に向けて大量のつららを発射。
群れているとはいえ空を自由に飛び回る雪落とし鳥スノーフォールバードにつららを命中させるのはかなり難しい。

ま、数打てば当たるでしょう

それに…

「ピギャァーッ!」

スノウの想定通り、半数ほどのつららが的中し6匹を討伐、7匹ほどの雪落とし鳥スノーフォールバードが高度を下げた。

「アヤネ!お願い!」

「はいはーい!」

スノウの呼びかけでアヤネは高速で木々に登っては飛び移るを繰り返し高度を下げた魔獣を着実に刈り取った。

「よっと…あだっ!」

地面へと戻ったアヤネが着地のポーズを決めていると空から落ちてきたマナストーンが頭を複数回小突いた。

「作戦通りね。アヤネの身軽さが羨ましいわ」

「ありがとっ!私だってスノウちゃんの魔法羨ましいよ」

「ふふ、ありがとうアヤネ。私達もあの群れを追いかけてさっさと終わらせましょう」

「そーだね。あ、そうだスノウちゃん」

「どうしたの?」

「昨日の夜、凛斗くんと何してたの?」

「………何もないわ」

「え?嘘だよ。だって朝になったら凛斗くん凍ってたもん」

「何もないわ。いい?何もないの」

「えー!教えてよー!」

思春期の少女達は、再び歩みを再開した。

ただ1人は頑なに表情を見せずに早歩きだったが。



時を同じくして氷王鮭アイスキングサーモンの漁の依頼を受けたアテラとシフラは中央街から引き戻った場所にあるホルメルト川にいた。

「ふぇっくしょい!」

桟橋に座り釣竿振って針を川へと投げ入れる。

「ざびぃ~。なんで釣りなんだよぉ…漁っつったら網とか船だろうがよぉ」

アテラはてっきり、投網や仕掛けた罠を使った漁を行うと想像していたが実態は釣竿と餌を渡されて鮭を釣れとのことだった。

報酬は1匹3000エルで、現状はアテラが3匹、シフラが1匹。

合計12000エルの報酬が確定しているがそれでもなお釣り続ける。

「どうだべ。ドワーフの嬢ちゃんに人魚の嬢ちゃんや」

背後から杖をつき不安定な歩きをしながら声をかけるのは依頼主の老父。

「オレはぼちぼちだけどよ、相方が釣れてねえみてえだ」

シフラに目線を向けるとちょうど当たりがあったようで釣竿を持ち上げると釣れたのは川に生息する小さな魔獣のカニであった。

「そりゃカワガニだ。油で揚げるとうんめえぞ」

老父が針からカニを取り外すと川へと帰してやると、何を思い立ったかシフラが立ち上がって一言。

「……泳ぐ」

そう言い残して桟橋から川の中へと飛び込んだ。

「はぁ!?ちょ、オマエ!」

こんな寒中の中、更に低温であろう水中へと身を投げたシフラを心配してアテラは桟橋から水中を覗こうとするが状況は分からない。

「アイツ…人魚とはいえこの気温じゃあ…」

シフラを案じた次の瞬間に水が弾ける音が聞こえると桟橋に1匹の魚がじたばたと暴れていた。

すぐ数秒後に今度は水面から魚が飛び出して同じように桟橋にまた1匹魚が落ちた。

「おいおい!もしかしてシフラ…素手で氷王鮭アイスキングサーモン捕まえてんのか!」

「ほーっほっほっ!やっぱり人魚はたくましいのぉ!」

1匹、また1匹と地上へと鮭を打ち上げて3分後に桟橋へとシフラが戻ってきた。

「この水温なら3分が限界。それ以上は危険」

「たった3分で15匹も持ってきやがった!」

「ほーっほっほっほっ!大漁大漁!今日はもう終わりだべな!報酬も弾んだる!」

合計18匹、金額にして54000エル。
実際に働いた時間は2時間程なので時給換算すると約27000エルと破格の金額になった。


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