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3章 それぞれの事情

アンリの場合

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ルルが5歳の時にアンリがやって来た。最初は誰とも馴染まずずっと1人で行動していたアンリ。だが何故かルルとは気が合い行動を共にするようになる。


とある侯爵家の当主とメイドの間に生まれたアンリ。疎まれる存在の筈が何故か父親である当主に気に入られ屋敷で暮らしていた。メイドである母は正妻と上手くいかずアンリをおいて出ていった。


だが何故か正妻の女性もアンリを気に入り普通に受け入れられた。だがメイド達の噂話はアンリの耳にも入ってくる。正妻の妊娠を聞いて捨てられるのが怖くて自ら家を出た。そして路頭に迷っている所をキルア院長に拾われる。


そして現在。

「アンリ、今日もお父様がいらしているわよ」


院長がアンリを呼びに来る。


「チッ」軽く舌打ちするアンリ


院長室に入ると大柄で逞しい男性が座っていた。


「親父、私は帰らないよ!ここがいいの!ってこいつ誰?」


父親である男性の隣にちんまり座っているチロ位の男の子。


「おう!お前の弟だ!名は言えるか?エドワード」


もう言ってんじゃん、相変わらず脳筋バカだな。だから母さんに嵌められるんだよ!


「ぼくはエドワードでしゅ!3歳でしゅ!」


男の子は緊張気味に立ち上がると大声で自己紹介する。


「私はアンリ。あんたの一応姉だよ。」


「はい、よろちくおねがいしましゅ!」


「一応じゃなくて姉だぞ!」


「…で?今日はどうしたの?」


いつものように聞くと親父の顔が曇る。


「母さんが倒れた…どうしたらいいんだ!」


「…今度は何で倒れたの?」


「えっ!かーしゃまたおれたのー」あ、こいつも馬鹿か?


「そんな嘘はいいから!私は帰らないよ?ここが楽しいし!」


「どうしてだ?俺達はお前を愛してるんだ!」


「あいちてます!」


「恥ずかしいな!お前も真似するな?分かってるよ!でもここが本当に居心地いいのよ」



確かに家が恋しい時はある。そして自分がこの家に居てはいけない気がしているのも確かだ。でもここでルルやチロ達に出会い、居場所が出来たと思えたのだ。



「…たまには帰ってきてくれるか?母さんも喜ぶからな!」


「うん、分かった。こいつの教育もしなきゃなー!」


エドワードが脳筋バカにならないようにしないとな。


「ねえさま、またきていいでしゅか?」


「いいよ」


「やったー!」喜ぶエドワード


「よし!久々に剣の手合わせを…」


「しないよ?」


こうしてこの変わった親子の会話を聞いていつも肩を震わすキルア院長なのでした。
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