幼子は最強のテイマーだと気付いていません!

akechi

文字の大きさ
100 / 105
ユリア、旅をする!!

巻き起こる異変

しおりを挟む
修行の森の異変はまだ終わらなかった。

アネモネがいつもの様にチェスターを説教しようとした時だった。森の奥の方からまた悍ましい鳴き声がした瞬間に倒したはずのマンティコアが今度は五体も現れてこちらに向かって来たのだ。

これには喜びを分かち合っていたスーミレの兵士とジェロラル国の兵士達も驚き過ぎて腰を抜かしてしまった。

「どういう事なんだ⋯!?何でこんなにマンティコアがいるんだ!!」

「おかしいぞ!⋯⋯どうなってるんだ!!」

チェスターはすぐに剣を抜き、アネモネも急いで魔法攻撃の準備をする。シロはユリアを守ろうとするが、当の本人は母親であるアネモネの横で慣れた感じでパンチの準備をしていた。

「まだいりゅーー!!ユリアがたおちゅぞ!!」

「お前はまだおチビだ!怖がるのが普通なのに何でいつもそんなにやる気なんだよ!パンチは禁止だ!俺が全部倒すからな!!」

「あにちうるちゃい!!ユリアがパンチでたおちゅの!」

「いいから二人とも邪魔よ!私とシロで引きつけて倒すから原因を調べてちょうだい!」

睨み合うチェスターとユリアだったが、アネモネの一喝に対して素直に従い背後に下がった。

「原因は森の奥にある。禍々しい気配がする」

シロがそう言いながら邪神セラムに目配せした。

「⋯ええ。分かりましたよ。このマンティコアが湧き出てくる状況を何とかしないとこの二人は帰らなそうですしね⋯はぁ」

背後でチェスターにパンチしているユリアとそれを華麗に避けるチェスターを見て頭を抱えながらセラムが答えた。

アネモネは人が変わったかの様に高笑いしながらマンティコアを一体、また一体と次々に瞬殺していく。そんな光景を唖然と見ている兵士とブルブル震えて見ている妖精コウとジョジュア。

「おい、おちび。あんなふうにはなるなよ?」

「かーしゃん⋯いつものかーしゃんじゃにゃい!!」

自分の娘に呆れながらも、孫の将来の心配をせざる負えないチェスターであった。



アネモネがマンティコアを攻撃している間にセラムとシロは禍々しい気配を追って森の最奥に来ていた。

「これは⋯」

「ええ。空間が歪んでいますね。ここからマンティコアが湧き出てきてるんだろう」

空間が歪むという現象は遥か昔に起こった事がある。それは邪悪の塊である破滅の子“ユーメア”が生まれた時だった。それにより世界が混沌と化し滅亡の危機に陥ったのだ。

「徳丸夢が関係しているかもしれない」

「何故ですか?この件はユメが現れる前から起こっている事です」

シロの意見に真っ向から反論するセラムだったが、何故か胸騒ぎがする。

「ああ。だが、この歪みは無視できない」

「⋯神の愛し子であるあの子なら何とかできると思うのは私だけですか?」

目の前の禍々しい歪みを前にして二人が考え込んでいると、背後から元気な幼児の声が聞こえてきた。

「おーーい!!何やってんでしゅかー?」

チェスターに肩車され、満面の笑顔でこちらに手を振るユリア。

「ユリア。こっちは危険だからあまり近づくな」

シロが歪みの前に立ちチェスター達が来るのを制止する。

「おいおい⋯何なんだよ」

歪みを見たチェスターは驚くが、ユリアはいつもの如くチェスターからズルズルと下りると、シロに駆け寄ろうとした。

すると歪みからドス黒い禍々した煙の様なものが出てきてユリアだけを襲おうとする。だが、あのユリアである。案の定ユリアから眩い光が溢れ出して禍々しい煙を一瞬で包み込み、歪みまでも綺麗さっぱり無くなってしまっていた。

これにはユリアの奇跡を見慣れたシロやチェスターも目が点になってしまう。邪神セラムは何が起こったのか理解できずに固まっていた。

「まぶちい!!」

ユリアが文句を口にすると、眩い光は一瞬で消えた。

「さすがの神の愛し子でもこんな簡単に歪みを消せるのか?」

「⋯⋯」

シロの問いに何も答えられないセラム。今までの愛し子でここまで力がある者は誰一人といなかったのだ。

「神にも匹敵する力をこんな小さな幼子が⋯」

「ユリアはちいさくにゃい!!」

自分の事と分かったのかセラムに向かいプンスカと怒り出すユリア。

「いや、小さいでしょう。あなたはまだ幼子なんですよ?」

真面目に答えるセラムだが、小さいという言葉に敏感なユリアを更に刺激してしまう。

「ユリアはちいさくにゃい!!」

「いや、豆粒だろ」

「あにちはうるちゃいーー!!」

小さく呟いたチェスターの言葉を聞き逃さなかったユリアが怒りのパンチを食らわす。ついでに邪神セラムにもポカポカとパンチを食らわしていく。

「おいおい!ユリアが邪神を攻撃してるぞ!!アハハハ!!」

妖精コウが指さして爆笑しているが、駆けつけたアネモネは急いでセラムからユリアを引き剥がした。

「ユリア!そのパンチはやめなさい!」

「にゃんで!?ユリアのひっしゃつわじゃ!!」

そう言ってユリアは崩れ落ちたのだった。
そんな攻撃をされてもユリアに何もせずにずっと考え込んでる邪神セラムとシロ。チェスターはパンチ禁止を言い渡され落ち込むユリアを小脇に抱え、アネモネと妖精コウ、そしてジョジュアと共にとりあえず兵士達が集まる場所に戻ることにした。

















しおりを挟む
感想 570

あなたにおすすめの小説

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。

桜城恋詠
ファンタジー
 聖女見習いのロルティ(6)は、五月雨瑠衣としての前世の記憶を思い出す。  異世界から召喚された聖女が、自身を虐げてきた前世の姉だと気づいたからだ。  彼女は神官に聖女は2人もいらないと教会から追放。  迷いの森に捨てられるが――そこで重傷のアンゴラウサギと生き別れた実父に出会う。 「絶対、誰にも渡さない」 「君を深く愛している」 「あなたは私の、最愛の娘よ」  公爵家の娘になった幼子は腹違いの兄と血の繋がった父と母、2匹のもふもふにたくさんの愛を注がれて暮らす。  そんな中、養父や前世の姉から命を奪われそうになって……?  命乞いをしたって、もう遅い。  あなたたちは絶対に、許さないんだから! ☆ ☆ ☆ ★ベリーズカフェ(別タイトル)・小説家になろう(同タイトル)掲載した作品を加筆修正したものになります。 こちらはトゥルーエンドとなり、内容が異なります。 ※9/28 誤字修正

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。