転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi

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10章 アレクシアと愉快な仲間2

いよいよ始まった勉強会②

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「いでぇな!何すんだ!!」

背中を摩りながらアレクシアに猛抗議するエルマ。

「何すんだだと!?シアの授業でナンパするあんたが悪いんでしゅよ!早く授業してけろ!!」

「けろ?」首を傾げるミルキルズ。

睨み合うエルマとアレクシアだったが、爺や婆をそのまま立たせては置けないので部屋の奥にあるソファーに案内する。

「爺や婆はここに座ってて下しゃいな。今熱いお茶とお煎餅を頼みまちたから!」

アレクシアの配慮(?)に喜ぶ爺と婆。だが未だに爺とか婆というアレクシアの言い方に納得できていないエルマと弟子達は首を傾げている。

「ガハハ!わしは酒がいいのう!!」

デイルズが豪快に笑うが、アレクシアは完全無視してスタスタと自分に用意された席に座った。

「ゴホン!先ほどは失礼致しました。ではアレクシア様、自己紹介を歌で表現して下さい!」

音楽家でもあるエルマの無茶振りにアレクシアは一歩も引かずに、椅子の上に立つと大きく息を吸い込んだ。

「あ、あー!⋯コホン!アウラード~大帝国~の~第四皇女~アレクシアでしゅよ~~!さんしゃいでしゅ~!シアの父親は~冷酷皇帝~~!母親は~牢屋~~!!」

アレクシアの微妙にズレた音程はさておき、最後の内容に爺や婆は飲んでいたお茶を吹いてしまった。

「アレクシア様!内容が⋯評価できません!!私は聴いていません!知りません!!」

エルマは冷や汗を流しながら何事もなかったように次に進もうとした。横にいる弟子の男女も顔面蒼白だ。

「どういう事なの!?確かに母親が現れないから後であの子に聞こうと思ってたのよ!もしかしたら亡くなってるのかもと思って⋯でも牢屋ですって!?」

エルフの女王であるエルメニアとナナーサは驚きを隠せない。あのデイルズも顔から笑顔が消えた。ポーポトスやミルキルズは何となく察してはいたが、心中は複雑だ。神獣ガイアはアレクシアの身に何かあったのかを心配している。

「爺、婆。いつかは言わないといけないのであとでシアからちゃんとお話ししましゅ」

アレクシアの真剣な顔を見た爺や婆は、静かに頷き自分を落ち着かせた。アレクシアの頭上にいる小鳥に擬態したウロボロスも心配しているのかピイピイと鳴いている。

「ん?その鳥は本物だったんですか!?髪飾りだと思っていましたが、小鳥を乗せるとは意外ですね?」

「何ででしゅか?シアは可憐でお淑やかな美少女でしゅ。シアがお庭に出れば鳥達が集まってきましゅよ!」

「お淑やかですと!?先ほど私に向かって飛び蹴りしたのをもうお忘れですかな!」

また睨み合うエルマとアレクシアだが、弟子の男女に宥められた二人はやっと授業を始める。本当はアレクシアの兄姉達も参加したがったが、他の授業や公務があり今日は断念したのだった。

「では、今日の課題ですが⋯この美しい私を描いて頂きます!!」

「えーー!!無理難題!!」

「何でだ!?あとそこ!うるさいですよ!!」

エルマは駆け回って遊んでいるアレクシアの子犬従魔達を注意する。だが、その子犬達を面倒見ている青い髪の美青年執事に睨まれてしまう。その優しそうな雰囲気からは想像もできないほどの寒い空気がエルマに突き刺さり自然と身震いする。

それにもう一人の執事服を着た金髪の美少年は、何故か客人達と共にソファーに座りお茶を飲んでいた。

「⋯⋯とにかく!出来たら声をかけて下さい」

そう言うと、エルマは口に赤い薔薇を咥えて華麗なポージングをする。

「⋯⋯チッ」

聞こえるか聞こうないかぐらいに舌打ちしたアレクシアだったが、諦めて紙に描き始めた。

「嫌でしゅけど頭に入ったからもうポージングを止めてくだしゃいな!!」

「さすがアレクシア様!!では頑張って描いて下さい!!」

そして静まり返る室内。子犬達は遊び疲れたのかスヤスヤと眠り始め、爺や婆とエルマの間に気まずい空気が流れ始めた。

「ゴホン!では客人達に私の作品を紹介致します!」

「おお!確か孫がお主の絵の大ファンなんじゃよ」

ポーポトスが興味津々に作品を待つ。孫のランゴンザレスにプレゼントしようと考えていた。デイルズは興味がないのか欠伸をしていて、ミルキルズはアレクシアの描いている絵の方が気になるのか背伸びして覗いている。神獣ガイアも同じくアレクシアの描いている絵が気になるのか振り返り覗いていた。

エルメニアとナナーサは先ほどのアレクシアの母親の件が心配で何やら話し合っていた。そこへエルマの弟子達が一枚の絵画を持って現れた。

「これが私の最新作です!どうですか?美しいでしょう!?」

自分に酔いしれたように話すエルマだが、最新作だと公開した作品を見たポーポトスの目が点になる。真っ黒に染まった紙に赤い棒のような線が二本描かれているだけだった。

「何じゃこれは?失敗したのか?」

何気なく言ったデイルズの発言に、エルマの顔色が変わった。

「失敗だと!?オメェはどこを見てんだ!!どう見ても完璧だべ!!」

「何じゃ?急に話し方が変わったぞ」エルマの変化に戸惑うデイルズ。

騒ぎを聞いていたアレクシアがそこに割って入る。

「爺、それはシアでしゅよ」

「!?!?」

正解だったので驚くのはエルマだった。

「何で分かったんだべ!?」

「ふん!オラを馬鹿にすんな!黒はシアの黒髪で赤い線がシアの目を表現してんだっぺ?って言ってもシアもこの絵が分かる自分が怖いべ⋯」

アレクシアの持っている筆が小刻みに震えている。

「ふふふ⋯アレクシア様も成長しましたな!!このエルマの世界へようこそ!」

「嫌だっぺーー!!」

「あの子さっきからどうしたの?だっぺとかオラとか⋯変な物でも食べたのかしら?」

エルメニアが本気でアレクシアを心配するのであった。












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