114 / 163
10章 アレクシアと愉快な仲間2
いよいよ始まった勉強会②
しおりを挟む
「いでぇな!何すんだ!!」
背中を摩りながらアレクシアに猛抗議するエルマ。
「何すんだだと!?シアの授業でナンパするあんたが悪いんでしゅよ!早く授業してけろ!!」
「けろ?」首を傾げるミルキルズ。
睨み合うエルマとアレクシアだったが、爺や婆をそのまま立たせては置けないので部屋の奥にあるソファーに案内する。
「爺や婆はここに座ってて下しゃいな。今熱いお茶とお煎餅を頼みまちたから!」
アレクシアの配慮(?)に喜ぶ爺と婆。だが未だに爺とか婆というアレクシアの言い方に納得できていないエルマと弟子達は首を傾げている。
「ガハハ!わしは酒がいいのう!!」
デイルズが豪快に笑うが、アレクシアは完全無視してスタスタと自分に用意された席に座った。
「ゴホン!先ほどは失礼致しました。ではアレクシア様、自己紹介を歌で表現して下さい!」
音楽家でもあるエルマの無茶振りにアレクシアは一歩も引かずに、椅子の上に立つと大きく息を吸い込んだ。
「あ、あー!⋯コホン!アウラード~大帝国~の~第四皇女~アレクシアでしゅよ~~!さんしゃいでしゅ~!シアの父親は~冷酷皇帝~~!母親は~牢屋~~!!」
アレクシアの微妙にズレた音程はさておき、最後の内容に爺や婆は飲んでいたお茶を吹いてしまった。
「アレクシア様!内容が⋯評価できません!!私は聴いていません!知りません!!」
エルマは冷や汗を流しながら何事もなかったように次に進もうとした。横にいる弟子の男女も顔面蒼白だ。
「どういう事なの!?確かに母親が現れないから後であの子に聞こうと思ってたのよ!もしかしたら亡くなってるのかもと思って⋯でも牢屋ですって!?」
エルフの女王であるエルメニアとナナーサは驚きを隠せない。あのデイルズも顔から笑顔が消えた。ポーポトスやミルキルズは何となく察してはいたが、心中は複雑だ。神獣ガイアはアレクシアの身に何かあったのかを心配している。
「爺、婆。いつかは言わないといけないのであとでシアからちゃんとお話ししましゅ」
アレクシアの真剣な顔を見た爺や婆は、静かに頷き自分を落ち着かせた。アレクシアの頭上にいる小鳥に擬態したウロボロスも心配しているのかピイピイと鳴いている。
「ん?その鳥は本物だったんですか!?髪飾りだと思っていましたが、小鳥を乗せるとは意外ですね?」
「何ででしゅか?シアは可憐でお淑やかな美少女でしゅ。シアがお庭に出れば鳥達が集まってきましゅよ!」
「お淑やかですと!?先ほど私に向かって飛び蹴りしたのをもうお忘れですかな!」
また睨み合うエルマとアレクシアだが、弟子の男女に宥められた二人はやっと授業を始める。本当はアレクシアの兄姉達も参加したがったが、他の授業や公務があり今日は断念したのだった。
「では、今日の課題ですが⋯この美しい私を描いて頂きます!!」
「えーー!!無理難題!!」
「何でだ!?あとそこ!うるさいですよ!!」
エルマは駆け回って遊んでいるアレクシアの子犬従魔達を注意する。だが、その子犬達を面倒見ている青い髪の美青年執事に睨まれてしまう。その優しそうな雰囲気からは想像もできないほどの寒い空気がエルマに突き刺さり自然と身震いする。
それにもう一人の執事服を着た金髪の美少年は、何故か客人達と共にソファーに座りお茶を飲んでいた。
「⋯⋯とにかく!出来たら声をかけて下さい」
そう言うと、エルマは口に赤い薔薇を咥えて華麗なポージングをする。
「⋯⋯チッ」
聞こえるか聞こうないかぐらいに舌打ちしたアレクシアだったが、諦めて紙に描き始めた。
「嫌でしゅけど頭に入ったからもうポージングを止めてくだしゃいな!!」
「さすがアレクシア様!!では頑張って描いて下さい!!」
そして静まり返る室内。子犬達は遊び疲れたのかスヤスヤと眠り始め、爺や婆とエルマの間に気まずい空気が流れ始めた。
「ゴホン!では客人達に私の作品を紹介致します!」
「おお!確か孫がお主の絵の大ファンなんじゃよ」
ポーポトスが興味津々に作品を待つ。孫のランゴンザレスにプレゼントしようと考えていた。デイルズは興味がないのか欠伸をしていて、ミルキルズはアレクシアの描いている絵の方が気になるのか背伸びして覗いている。神獣ガイアも同じくアレクシアの描いている絵が気になるのか振り返り覗いていた。
エルメニアとナナーサは先ほどのアレクシアの母親の件が心配で何やら話し合っていた。そこへエルマの弟子達が一枚の絵画を持って現れた。
「これが私の最新作です!どうですか?美しいでしょう!?」
自分に酔いしれたように話すエルマだが、最新作だと公開した作品を見たポーポトスの目が点になる。真っ黒に染まった紙に赤い棒のような線が二本描かれているだけだった。
「何じゃこれは?失敗したのか?」
何気なく言ったデイルズの発言に、エルマの顔色が変わった。
「失敗だと!?オメェはどこを見てんだ!!どう見ても完璧だべ!!」
「何じゃ?急に話し方が変わったぞ」エルマの変化に戸惑うデイルズ。
騒ぎを聞いていたアレクシアがそこに割って入る。
「爺、それはシアでしゅよ」
「!?!?」
正解だったので驚くのはエルマだった。
「何で分かったんだべ!?」
「ふん!オラを馬鹿にすんな!黒はシアの黒髪で赤い線がシアの目を表現してんだっぺ?って言ってもシアもこの絵が分かる自分が怖いべ⋯」
アレクシアの持っている筆が小刻みに震えている。
「ふふふ⋯アレクシア様も成長しましたな!!このエルマの世界へようこそ!」
「嫌だっぺーー!!」
「あの子さっきからどうしたの?だっぺとかオラとか⋯変な物でも食べたのかしら?」
エルメニアが本気でアレクシアを心配するのであった。
背中を摩りながらアレクシアに猛抗議するエルマ。
「何すんだだと!?シアの授業でナンパするあんたが悪いんでしゅよ!早く授業してけろ!!」
「けろ?」首を傾げるミルキルズ。
睨み合うエルマとアレクシアだったが、爺や婆をそのまま立たせては置けないので部屋の奥にあるソファーに案内する。
「爺や婆はここに座ってて下しゃいな。今熱いお茶とお煎餅を頼みまちたから!」
アレクシアの配慮(?)に喜ぶ爺と婆。だが未だに爺とか婆というアレクシアの言い方に納得できていないエルマと弟子達は首を傾げている。
「ガハハ!わしは酒がいいのう!!」
デイルズが豪快に笑うが、アレクシアは完全無視してスタスタと自分に用意された席に座った。
「ゴホン!先ほどは失礼致しました。ではアレクシア様、自己紹介を歌で表現して下さい!」
音楽家でもあるエルマの無茶振りにアレクシアは一歩も引かずに、椅子の上に立つと大きく息を吸い込んだ。
「あ、あー!⋯コホン!アウラード~大帝国~の~第四皇女~アレクシアでしゅよ~~!さんしゃいでしゅ~!シアの父親は~冷酷皇帝~~!母親は~牢屋~~!!」
アレクシアの微妙にズレた音程はさておき、最後の内容に爺や婆は飲んでいたお茶を吹いてしまった。
「アレクシア様!内容が⋯評価できません!!私は聴いていません!知りません!!」
エルマは冷や汗を流しながら何事もなかったように次に進もうとした。横にいる弟子の男女も顔面蒼白だ。
「どういう事なの!?確かに母親が現れないから後であの子に聞こうと思ってたのよ!もしかしたら亡くなってるのかもと思って⋯でも牢屋ですって!?」
エルフの女王であるエルメニアとナナーサは驚きを隠せない。あのデイルズも顔から笑顔が消えた。ポーポトスやミルキルズは何となく察してはいたが、心中は複雑だ。神獣ガイアはアレクシアの身に何かあったのかを心配している。
「爺、婆。いつかは言わないといけないのであとでシアからちゃんとお話ししましゅ」
アレクシアの真剣な顔を見た爺や婆は、静かに頷き自分を落ち着かせた。アレクシアの頭上にいる小鳥に擬態したウロボロスも心配しているのかピイピイと鳴いている。
「ん?その鳥は本物だったんですか!?髪飾りだと思っていましたが、小鳥を乗せるとは意外ですね?」
「何ででしゅか?シアは可憐でお淑やかな美少女でしゅ。シアがお庭に出れば鳥達が集まってきましゅよ!」
「お淑やかですと!?先ほど私に向かって飛び蹴りしたのをもうお忘れですかな!」
また睨み合うエルマとアレクシアだが、弟子の男女に宥められた二人はやっと授業を始める。本当はアレクシアの兄姉達も参加したがったが、他の授業や公務があり今日は断念したのだった。
「では、今日の課題ですが⋯この美しい私を描いて頂きます!!」
「えーー!!無理難題!!」
「何でだ!?あとそこ!うるさいですよ!!」
エルマは駆け回って遊んでいるアレクシアの子犬従魔達を注意する。だが、その子犬達を面倒見ている青い髪の美青年執事に睨まれてしまう。その優しそうな雰囲気からは想像もできないほどの寒い空気がエルマに突き刺さり自然と身震いする。
それにもう一人の執事服を着た金髪の美少年は、何故か客人達と共にソファーに座りお茶を飲んでいた。
「⋯⋯とにかく!出来たら声をかけて下さい」
そう言うと、エルマは口に赤い薔薇を咥えて華麗なポージングをする。
「⋯⋯チッ」
聞こえるか聞こうないかぐらいに舌打ちしたアレクシアだったが、諦めて紙に描き始めた。
「嫌でしゅけど頭に入ったからもうポージングを止めてくだしゃいな!!」
「さすがアレクシア様!!では頑張って描いて下さい!!」
そして静まり返る室内。子犬達は遊び疲れたのかスヤスヤと眠り始め、爺や婆とエルマの間に気まずい空気が流れ始めた。
「ゴホン!では客人達に私の作品を紹介致します!」
「おお!確か孫がお主の絵の大ファンなんじゃよ」
ポーポトスが興味津々に作品を待つ。孫のランゴンザレスにプレゼントしようと考えていた。デイルズは興味がないのか欠伸をしていて、ミルキルズはアレクシアの描いている絵の方が気になるのか背伸びして覗いている。神獣ガイアも同じくアレクシアの描いている絵が気になるのか振り返り覗いていた。
エルメニアとナナーサは先ほどのアレクシアの母親の件が心配で何やら話し合っていた。そこへエルマの弟子達が一枚の絵画を持って現れた。
「これが私の最新作です!どうですか?美しいでしょう!?」
自分に酔いしれたように話すエルマだが、最新作だと公開した作品を見たポーポトスの目が点になる。真っ黒に染まった紙に赤い棒のような線が二本描かれているだけだった。
「何じゃこれは?失敗したのか?」
何気なく言ったデイルズの発言に、エルマの顔色が変わった。
「失敗だと!?オメェはどこを見てんだ!!どう見ても完璧だべ!!」
「何じゃ?急に話し方が変わったぞ」エルマの変化に戸惑うデイルズ。
騒ぎを聞いていたアレクシアがそこに割って入る。
「爺、それはシアでしゅよ」
「!?!?」
正解だったので驚くのはエルマだった。
「何で分かったんだべ!?」
「ふん!オラを馬鹿にすんな!黒はシアの黒髪で赤い線がシアの目を表現してんだっぺ?って言ってもシアもこの絵が分かる自分が怖いべ⋯」
アレクシアの持っている筆が小刻みに震えている。
「ふふふ⋯アレクシア様も成長しましたな!!このエルマの世界へようこそ!」
「嫌だっぺーー!!」
「あの子さっきからどうしたの?だっぺとかオラとか⋯変な物でも食べたのかしら?」
エルメニアが本気でアレクシアを心配するのであった。
623
あなたにおすすめの小説
オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~
雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。
突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。
多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。
死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。
「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」
んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!!
でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!!
これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。
な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。
BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。
父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した!
メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。