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一章 小蘭(シャオラン)の秘密
置き手紙を残して消えた愛娘
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「あの馬鹿娘がぁぁぁーーー」
広大すぎる屋敷に響き渡る男性の怒号。
この屋敷には数えられない程の女官や従者がいるが、凄まじい怒号に驚く事もなく各自の仕事を進めていた。怒号の主はというと屋敷の最奥にある部屋で頭を抱えていた。
見た目は二十代後半といったところだろうか。絹のように綺麗な黒髪を後ろで軽く縛り、冷たい印象を与える切れ長の目、そして恐ろしいくらい端正な顔立ちをしている。最高級の生地で作らせた真紅の漢服に身を包んだ圧倒的な存在感の美丈夫だ。
「司炎様、手紙には何と書かれていたのですか?」
頭を抱える主に話しかけるのは茶色の漢服を着た小柄で温厚そうな老人だった。
「⋯⋯。女官になります。今までお世話になりました。⋯何がお世話になりましただ!!女官だと!?」
手紙を読んでいてまた腹が立ったのか、手紙を丸めて投げ捨てた。
「ハハハ!あの方は本当に予想を遥かに超えてきますな」
老人は丸まった手紙を床から拾い嬉しそうに読み始めた。
「如何なさいます?」
「連れ戻す!今から皇宮に向かうぞ!」
「やれやれ」
怒り心頭で歩き出した司炎とその後を楽しのうに追う老人。
「旦那様?どこへ行かれるのですか?」
そこへやって来たのは三十代後半くらいの美しい女性だった。派手な化粧と衣装で装飾品も最高級だと分かる物ばかりじゃらじゃらと身につけていた。司炎はそんな女性に冷たい視線を向けた。
「皇宮だ」
「先ほど帰られたばかりではありませんか?何かあったのですか?」
女性は司炎に近づこうと一歩踏み出したが、司炎は顔を歪ませて一歩下がる。
「お前には関係のない事だ」
そう言うと、司炎は女性を見る事もなく歩き出したのだった。
「⋯⋯。葉雲(イエウン)、何かあったのですか?旦那様があんなに感情を出すのは見たことがないわ」
女性は気になるのか茶色の漢服の老人、葉雲に視線を移した。
「奥様、すみませんが旦那様が話さない事は私も言えません」
一礼すると葉雲は司炎の後を追った。そんな二人の後ろ姿を女性はずっと見つめていたのだった。
「これは酷いな」
古びた小屋を見た高青は顔を歪めた。
「布団もカビ臭くて薄いですし、持ち物を入れる箪笥もなくて、見て下さい!あの籠一つですよ!!」
小蘭が事細かく説明するたびに高位宦官の男性が青ざめていく。
「⋯これはどういう事だ?ここの修繕費はどこへ消えたんだ?」
凄まじい怒りを滲ませながら男性を問い詰める高青だが、男性は口を割ろうとしない。
「まあいい。口を割らせる方法はいくらでもある。こいつを尋問所に連行しろ!」
高青は冷酷に命じて逃げようとする男性を衛兵が取り押さえ連行していった。
「すまなかった。今から早急に修繕工事に入る。それまでの仮住居だが⋯」
「ああ、それなら紅嬰宮が空いてますよね?そこでいいです」
小蘭の無礼な発言に開いた口が塞がらない高位宦官達と下級女官達。紅嬰宮とは紅州王が皇宮に所有する屋敷である。この陽蘭国は皇帝とその忠実な配下である五人の王で成り立っている国なのだ。その中でも最も影響力があるのが宰相でもある紅州王であった。
「ふざけているのか!!下級女官が何を言っているか分かっているのか!!」
「そうだ!先ほどから失礼な発言が過ぎますぞ!」
「紅嬰宮だと!?不敬な発言で拘束しろ!」
高位宦官達が怒り心頭の中、高青は何やら考えているのか黙ったままだ。
「あそこは誰も利用してないですよね?勿体無いから使わせて頂きます!」
小蘭の下級女官とは思えない発言にますます顔を真っ赤にしていく高位宦官達。
「小蘭!もうやめなよ!捕まっちゃうよ!」
「そうだよ!拷問されるよ!」
睦瑤と環莉も必死に小蘭を止める。
「私には決められない。お前が紅州王に交渉しろ」
「えー⋯怒ってるよな⋯」
嫌そうな小蘭を見てフッと笑う高青。
「偶然だが、紅州王は今皇宮にいらっしゃるから特別に席を設けてやろう」
高青の発言に唖然とする周りの者達。待機する兵士ですら驚いていた。
「分かりました。宜しくお願いします」
「他の女官は仕事へ!お前達も仕事へ戻れ。小蘭、私について来なさい」
白風に目配せした小蘭は高青と共に皇宮本殿へ向かった。高位宦官達は不満ながらも高青の言葉は絶対なので各自の職場へ戻って行った。
「白風、小蘭は大丈夫かな?あんなこと言って⋯殺されたらどうしよう!」
睦瑤が心配してか涙ぐんでいる。
「ああ、それは絶対にあり得ないから大丈夫よ」
何故か自信満々の白風に睦瑤も環莉も訳が分からずに首を傾げるのだった。
「紅嬰宮とは⋯全く何を言い出すのやら!下級女官が利用していい場所じゃありませんよ!?」
「勿体無いじゃん」
「勿体無かったら皇帝の使用していない寝所も使うのですか?」
「うん」
小蘭の言葉にため息を吐く高青。
「そんな事より、父上はどのくらい怒ってる?私、ボコられる?」
「そんな事って⋯まぁボコられますね。ですが葉雲も一緒だったのでまだ救いがあります」
葉雲と聞いて小さくガッツポーズをする小蘭をジト目で見る高青。周りの女官や宦官、兵士達は高青を見て急いで平伏すが、一緒に歩いているのが下級女官だと気付き驚愕する。
「あれ誰よ!大長秋様が下級女官を連れているなんて⋯何者よ!」
「馴れ馴れしいな!あんなに距離が近いなんて、それを高青様が許しているぞ!?」
この異様な光景は皇宮中で大騒ぎなった。なので後宮の妃達もその噂を耳にする事になりそれが騒動へとつながっていく事になる。
皇宮のとある広間の前までやって来た小蘭と高青。
「失礼致します。例の方を連れて来ました」
「⋯⋯入れ」
高青は広間の扉をゆっくりと開けていく。小蘭は高青の背後に隠れながら歩いて行き奥にいる人物の機嫌を伺う。
「お前という奴は!」
紅州王こと紅司炎は下級女官の服を着た愛娘を見てまた頭を抱えた。
「父上。お元気そうでなによりです」
「これが元気そうに見えるか?」
紅親子の会話を聞いて肩を震わす高青と葉雲。
「今すぐに帰るぞ!」
「嫌です!」
「何故に女官なんだ!皇后になりたいなら私に言え!すぐにでも手続きをしてやる!」
「何で皇后なんですか!あんなくそ親父の妻になんてなりたくありません!」
失礼な紅親子の会話にハラハラする高青と葉雲。
「ものの例えだ!何故女官なんだ!一体誰に惚れたんだ?」
「内緒です!言ったらすぐに婚姻の手続きをしますよね!?あの方には家柄ではなく私自身を見て欲しいんです!」
うっとりとしながら語る娘を見て司炎は溜め息を吐く。
「身分が高い奴なのか?」
「秘密です!とにかく紅嬰宮をもらいます!」
「⋯紅嬰宮?急に何を言ってるんだこの馬鹿娘は?」
意味不明な娘を無視して高青に説明を求める。
「葉雲、葉雲は反対?」
「ホホ!面白そうなので反対はしません。ですがある意味で心配です」
「何?」
「お嬢様のいるところで騒動ありですからのう」
「⋯⋯言い返せないわ」
葉雲と仲良く話す小蘭だが、高青から全ての事情を聞いた司炎が難しい顔をしながら近くまでやって来た。
「下級女官の一時的な仮住まいに紅嬰宮を使いたいと?」
「あ、はい」
「そんな事したら上級女官達が騒ぐだろうな。妬みから下級女官を虐める可能性もあるから賛成できない」
「ああ、妬みかぁ⋯面倒くさいですね」
「使っていない建物がありますのでそこに移ってもらいます。元々は上級女官達が住んでいたのですが、“人為削減”で使わなくなったんです」
「ああ、何か悪さをしたんだ?こちらとしては助かったけど!」
高青の提案を受け入れる小蘭だが、司炎はまだ納得していない。
「父上、私は大丈夫ですから馬車馬のように仕事をして出世しまくって下さい」
「お前⋯そこはお体に気をつけてとかだろ!」
「私はあの方をものにしてみせます!」
「人の話を聞け!あの方って誰だ?ろくでもない奴だったらどうするんだ!?」
「あの方に限ってそれは無いです。とにかく一ヶ月!その間に問題を起こしたら帰る!それで手を打ちませんか?」
「私が悪いみたいな言い方するな!この馬鹿娘が!」
そんな紅親子の会話を微笑ましく見守っている葉雲と苦笑いする高青であった。
広大すぎる屋敷に響き渡る男性の怒号。
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「皇宮だ」
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女性は司炎に近づこうと一歩踏み出したが、司炎は顔を歪ませて一歩下がる。
「お前には関係のない事だ」
そう言うと、司炎は女性を見る事もなく歩き出したのだった。
「⋯⋯。葉雲(イエウン)、何かあったのですか?旦那様があんなに感情を出すのは見たことがないわ」
女性は気になるのか茶色の漢服の老人、葉雲に視線を移した。
「奥様、すみませんが旦那様が話さない事は私も言えません」
一礼すると葉雲は司炎の後を追った。そんな二人の後ろ姿を女性はずっと見つめていたのだった。
「これは酷いな」
古びた小屋を見た高青は顔を歪めた。
「布団もカビ臭くて薄いですし、持ち物を入れる箪笥もなくて、見て下さい!あの籠一つですよ!!」
小蘭が事細かく説明するたびに高位宦官の男性が青ざめていく。
「⋯これはどういう事だ?ここの修繕費はどこへ消えたんだ?」
凄まじい怒りを滲ませながら男性を問い詰める高青だが、男性は口を割ろうとしない。
「まあいい。口を割らせる方法はいくらでもある。こいつを尋問所に連行しろ!」
高青は冷酷に命じて逃げようとする男性を衛兵が取り押さえ連行していった。
「すまなかった。今から早急に修繕工事に入る。それまでの仮住居だが⋯」
「ああ、それなら紅嬰宮が空いてますよね?そこでいいです」
小蘭の無礼な発言に開いた口が塞がらない高位宦官達と下級女官達。紅嬰宮とは紅州王が皇宮に所有する屋敷である。この陽蘭国は皇帝とその忠実な配下である五人の王で成り立っている国なのだ。その中でも最も影響力があるのが宰相でもある紅州王であった。
「ふざけているのか!!下級女官が何を言っているか分かっているのか!!」
「そうだ!先ほどから失礼な発言が過ぎますぞ!」
「紅嬰宮だと!?不敬な発言で拘束しろ!」
高位宦官達が怒り心頭の中、高青は何やら考えているのか黙ったままだ。
「あそこは誰も利用してないですよね?勿体無いから使わせて頂きます!」
小蘭の下級女官とは思えない発言にますます顔を真っ赤にしていく高位宦官達。
「小蘭!もうやめなよ!捕まっちゃうよ!」
「そうだよ!拷問されるよ!」
睦瑤と環莉も必死に小蘭を止める。
「私には決められない。お前が紅州王に交渉しろ」
「えー⋯怒ってるよな⋯」
嫌そうな小蘭を見てフッと笑う高青。
「偶然だが、紅州王は今皇宮にいらっしゃるから特別に席を設けてやろう」
高青の発言に唖然とする周りの者達。待機する兵士ですら驚いていた。
「分かりました。宜しくお願いします」
「他の女官は仕事へ!お前達も仕事へ戻れ。小蘭、私について来なさい」
白風に目配せした小蘭は高青と共に皇宮本殿へ向かった。高位宦官達は不満ながらも高青の言葉は絶対なので各自の職場へ戻って行った。
「白風、小蘭は大丈夫かな?あんなこと言って⋯殺されたらどうしよう!」
睦瑤が心配してか涙ぐんでいる。
「ああ、それは絶対にあり得ないから大丈夫よ」
何故か自信満々の白風に睦瑤も環莉も訳が分からずに首を傾げるのだった。
「紅嬰宮とは⋯全く何を言い出すのやら!下級女官が利用していい場所じゃありませんよ!?」
「勿体無いじゃん」
「勿体無かったら皇帝の使用していない寝所も使うのですか?」
「うん」
小蘭の言葉にため息を吐く高青。
「そんな事より、父上はどのくらい怒ってる?私、ボコられる?」
「そんな事って⋯まぁボコられますね。ですが葉雲も一緒だったのでまだ救いがあります」
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「あれ誰よ!大長秋様が下級女官を連れているなんて⋯何者よ!」
「馴れ馴れしいな!あんなに距離が近いなんて、それを高青様が許しているぞ!?」
この異様な光景は皇宮中で大騒ぎなった。なので後宮の妃達もその噂を耳にする事になりそれが騒動へとつながっていく事になる。
皇宮のとある広間の前までやって来た小蘭と高青。
「失礼致します。例の方を連れて来ました」
「⋯⋯入れ」
高青は広間の扉をゆっくりと開けていく。小蘭は高青の背後に隠れながら歩いて行き奥にいる人物の機嫌を伺う。
「お前という奴は!」
紅州王こと紅司炎は下級女官の服を着た愛娘を見てまた頭を抱えた。
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「これが元気そうに見えるか?」
紅親子の会話を聞いて肩を震わす高青と葉雲。
「今すぐに帰るぞ!」
「嫌です!」
「何故に女官なんだ!皇后になりたいなら私に言え!すぐにでも手続きをしてやる!」
「何で皇后なんですか!あんなくそ親父の妻になんてなりたくありません!」
失礼な紅親子の会話にハラハラする高青と葉雲。
「ものの例えだ!何故女官なんだ!一体誰に惚れたんだ?」
「内緒です!言ったらすぐに婚姻の手続きをしますよね!?あの方には家柄ではなく私自身を見て欲しいんです!」
うっとりとしながら語る娘を見て司炎は溜め息を吐く。
「身分が高い奴なのか?」
「秘密です!とにかく紅嬰宮をもらいます!」
「⋯紅嬰宮?急に何を言ってるんだこの馬鹿娘は?」
意味不明な娘を無視して高青に説明を求める。
「葉雲、葉雲は反対?」
「ホホ!面白そうなので反対はしません。ですがある意味で心配です」
「何?」
「お嬢様のいるところで騒動ありですからのう」
「⋯⋯言い返せないわ」
葉雲と仲良く話す小蘭だが、高青から全ての事情を聞いた司炎が難しい顔をしながら近くまでやって来た。
「下級女官の一時的な仮住まいに紅嬰宮を使いたいと?」
「あ、はい」
「そんな事したら上級女官達が騒ぐだろうな。妬みから下級女官を虐める可能性もあるから賛成できない」
「ああ、妬みかぁ⋯面倒くさいですね」
「使っていない建物がありますのでそこに移ってもらいます。元々は上級女官達が住んでいたのですが、“人為削減”で使わなくなったんです」
「ああ、何か悪さをしたんだ?こちらとしては助かったけど!」
高青の提案を受け入れる小蘭だが、司炎はまだ納得していない。
「父上、私は大丈夫ですから馬車馬のように仕事をして出世しまくって下さい」
「お前⋯そこはお体に気をつけてとかだろ!」
「私はあの方をものにしてみせます!」
「人の話を聞け!あの方って誰だ?ろくでもない奴だったらどうするんだ!?」
「あの方に限ってそれは無いです。とにかく一ヶ月!その間に問題を起こしたら帰る!それで手を打ちませんか?」
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