腐りきったこの世界で。

sIn

文字の大きさ
3 / 16
第1章 終わりの始まり

「異変」

しおりを挟む
 「はぁ……」

職員室前で俺は大きくため息を吐いた。

「たかが学校でゲームやるで反省文三枚とか、だっる……
ゲームも反省文書くまで没収だし最悪だ……」

俺はぶつくさと不平不満を垂れ流す。

「ねぇ、いい加減学習しよ?
この前も反省文書かされてたじゃない。
次やったら親呼び出しだよ?」

「こっちは学校行ってるせいでゲームやる時間が削れてんだし、休み時間くらいくらいやってもーー」

「ダメに決まってるでしょ!いい加減仕事増やさないでよね。」

呆れた顔で美結がこちらを見る。
今回は自分で仕事増やしたのに……
どうやらこれ以上屁理屈を言っても無駄なようだ
俺はゲームの恨みで美結の方を少し睨みつけた。

「……?な、何……?」

……こうやって改めて美結の顔を見ると、やっぱり綺麗だと感じる。
ショートボブの艶のある髪。
そして均整な顔立ち。
何より翡翠色の目がとても綺麗で、人形みたいだ。
小学校からずっと一緒のクラスで、陰キャの俺にとっては唯一まともに話せる女子だったのだが前はこんな可愛かったっけ?
いつの間にこんなに綺麗になったのか…

「……え、ちょっと、何?何なの?私の顔になんかついてる?」

美結の言葉が俺の思考を遮った。

「あ、いや、その目。綺麗だなって思ってさ。」

しまった。反射的に言ってしまった!
ドン引きされるかもしれない……

「ーーえっ?」

美結が少しの間フリーズした。
ほら、やっぱり引かれーー

「あ、あり、がと……?
翔生にそんなこと言われるとは……思わなかった……」

美結は頬を赤らめて口元を手に持っていたノートで隠した。

そのあとはっと我に返った様子で
「も、もう行くね!」
と視線を逸らしながらそそくさと教室へ戻ってしまった。
なんだあの反応は…可愛すぎないか?
もしかして美結ってチョロインか?チョロインなのか?
そんなくだらないことを考えながら、俺も教室に戻る。
その後、俺は業後に反省文を書いてゲームを返してもらい、やっと家に帰ることが出来た。

 ……帰宅後、家にて。

「ただいまー……って言っても意味ねぇか」

いつもの事だが、返事はない。

「まぁそりゃこんな早く帰ってくるわけないわな…」

俺は苦笑し、荷物を床に降ろしてリビングのソファーにもたれかかった。
俺の両親は共働きをしている。
父はアニメーターで、母は飲食店を経営していて共に夜遅くまで働いており、登校と同時に家を出て、帰宅はいつも夜の11時頃だ。
労働基準法とか詳しいことはよく分からないが、絶対違反していると俺は思う。
俺だったら絶対働きなくないねそんな職場。

いつものようになんとなくテレビをつけると、ニュースが報道されていた。どうやら県内で暴動が起きたらしい。

「ここ最近暴動事件…多いなぁ」

あくまでこの時二週間前の俺は、ニュースの中での知識しかなく、「世の中物騒だなぁ」程度にしか思っていなかった。
その程度の認識だった俺は、明日世界が終わることもしらずに特に気にもせず、いつも通りゲームをして帰宅の遅い親を待ち、翌朝学校へ登校したのだった……

 登校している途中、背後から声がした。

「お、翔生じゃん。おはよ~」

振り向くと、自転車をこぐ博の姿があった。
和尚呼びはさすがにやめて貰えたらしい。

「ん?ああ、おはよ。」

大きなあくびをしながら返事をした。

「お前その目のクマ……もしかしてまた徹夜?」

「あー、まぁ、ちょっとね。アイテム集めるために3時まで周回してた。」

「マジかよ…3日連続徹夜とかよく出来るなーーってことはもしかして、テスト対策とかやってない感じ?」

「…え?テスト?」

俺はきょとんとした顔で首を傾げた。
ーーーそういえば思い出した。今日は英語の単語テストがあるのだった。
その刹那、俺は悟った。
あー、オワッタ……と。
まぁやってても英語苦手だからどうせ不合格だし、詰んでるんだけれども。

「オレチョットハライタクナッテキタ。サキイッテテイイヨ。」

俺は咄嗟に方向転換をし、家の方に向かって歩こうとする。

「ちょっ、お前何サラッと帰ろうとしてんの。させねぇからな?」

精一杯帰ろうと試みたが、女子にでさえ筋力で勝てないのに博に力で叶うはずもなく、襟を捕まれて自転車に乗せられ、強引に学校まで連れていかれたのだった…

その時、またゲームが出来なくなるという憂鬱からか、俺は学校なんて潰れてしまえと冗談半分だが思ってしまっていた。
今思えば、神様がその願いを叶えてくれたのだろうか?
こんな憂鬱で、当たり前だと思っていたことが、この後本当の終わりを迎えようとは...…俺だけではない、誰もが想定することが出来ないのだろうーーー。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...