3 / 47
1st監禁
1st監禁ーその3-
しおりを挟む
いつもはちゃんとドアから入ってくるのに慌てた様子で壁から突き抜けて現れたアリアにただ事ではないと察したヴァンが上司に事の詳細を説明すると直ぐに上司は何処かへと向かい、王子の元へ救護が来るのを待つ間アリアは傍にいる事にした。
鍛錬場に行くと他の人間達はおらずアリアはホッとしたが、物陰で王子が倒れている事に仰天する。
〔嘘、大丈夫?! しっかりなさい!〕
まさか離れている間に何かあったのかと傍に寄るが先ほど離れる前との外的様子に変化は無い。
しっかりと息はある事に胸を撫で下ろした。
〔よかったわ、ただの気絶みたいね〕
こんなに幼い子供なのにとアリアはすり抜ける手で王子の頭を撫でる仕草をする。
しばらくそうしていると鍛錬場に近付く多数の気配を感じた。
物陰から姿を現すと後ろに数人の兵を引き連れた上司の姿があったので草で宙に矢印を作り物陰へと案内する。
「ご苦労、精霊。後はこちらで何とかするから今日はもうフォレストの所に戻って良いぞ」
〔分かった〕
直ぐにヴァンの元へ戻ったアリアはヴァンの背に抱き着き、ぐりぐりと頭を背に押し付けた。
「王子の様子はどうだった?アリア」
〔よくわからないけれど少なくとも気絶してしまう位悪いのは確かね〕
「気絶か……酷い事するな」
〔ええ、そうね……私何も出来なかったわ〕
少なくとももしも自分が光の精霊ならば治癒の力をふるいこの少年の傷を癒すこと位なら出来るのに、と自らの力不足を嘆くアリアの頭をヴァンは振り返りポンポンと軽く撫ぜる。
「何もじゃないだろう、少なくともアリアはこうして王子の為に助けを呼べたじゃないか」
〔でも、もっと上手くやれば怪我をさせない事もできたハズなのよ?〕
「でもこれで王子は兄達と接触する機会が無くなるかもしれないぞ?」
〔え?〕
首を傾げるアリアにヴァンはニヤリと笑う。
「今の時代宮廷精霊術師の数で国力が決まるって言われてんだぞ?
一人失うだけでも大きな国の損失だろう。
ましてや身内とは言え王族の暴力によって希少な霊眼持ちが死ぬ様な事になってみろ、民衆からの支持率の降下に繋がる上に敵意ある者からしてみれば恰好の攻撃材料だ。
殺した兄達も継承権の剥奪はもちろん最悪処刑沙汰にでもなりかねない。
普通に考えても間違ってもそんな事にはならない様に何らかの処置が盗られると思うぞ。
例えば兄弟の接触を禁止する、とかな?」
〔じゃあ、もう酷い暴力をふるわれなくなるのね!〕
「多分な」
その言葉に安心した表情のアリアの頭をもう一度撫ぜるとヴァンは机に向き直り仕事を再開する。
アリアは邪魔しない様にとヴァンから離れ、その仕事姿をニコニコと見つめるのだった。
「おっさきーっす」
「おー、帰れ帰れ」
「お疲れ様でした」
机の上を整理しながらラノンを見送った上司はヴァンへと視線を向ける。
「フォレストは帰らないのか?」
「いえ、後少し片付けたら帰ります」
「そうか、では私は先に帰るとしよう」
「お疲れ様でした」
上司を見送り、アリアと二人きりになった部屋でヴァンはアリアへと手招きをする。
〔なーに?〕
ヴァンは首を傾げて近寄ったアリアの顎を掴むとその唇を奪った。
驚いたアリアのポカンと開いた唇の隙間から舌を侵入させアリアの舌を探り当てるとそのまま絡ませる。
その舌の熱さに思わず身を引こうとしたアリアだったがいつの間にか腰に回されていた腕により阻止され、それどころか更に引き寄せられるとより一層深く舌を絡ませられてゾクゾクとした感覚がアリアの腰を這い上がる。
暫く口内を蹂躙され、漸く解放されたアリアは荒い息でへたりと床に座り込んだ。
その様子にヴァンは首を傾げ言った。
「どうだ?」
〔ど、どうだって、なななにが!?〕
「制限を緩めたんだが特に変化はないのか?」
〔……へ?〕
そう言われてみればと自分の体を意識するといつもより力が溢れてくる様な気がするアリア。
試しにどれだけ緩められたのかと部屋の隅にあった花瓶に意識を向けると難なく浮かばせる事に成功した。
「取り敢えず子供1人なら余裕で浮かばせる位までは緩めたがあくまでも王子を守る為だから悪用はするなよ?
……これで力不足では無いだろう」
〔ええ!ありがとう、ヴァン〕
これで少しは役に立てると喜び勇んでヴァンに抱き着いたアリアだったがハタリと気が付いた。
〔でもだからってあんな、あんな、その……口付け、する必要性なかったんじゃないの?〕
「能力制限の制約の変更には時間がかかるし粘膜同士の接触が一番効率良いじゃないか、粘膜接触率が高い方が時短にもなるしな」
〔それは、うん、そうかも知れないけど……ううう〕
平然とそう言い放ったヴァン。
ただの抱擁や頬への口付けではあれだけ照れるのに何故効率を考えるとこういった口付けは平気になるのかと遣る瀬無い気持ちを抱きながら、あの情熱的な口付けに深い意味が無かった事を知り打ちひしがれるアリアにヴァンは不思議そうな目を向けるのであった。
鍛錬場に行くと他の人間達はおらずアリアはホッとしたが、物陰で王子が倒れている事に仰天する。
〔嘘、大丈夫?! しっかりなさい!〕
まさか離れている間に何かあったのかと傍に寄るが先ほど離れる前との外的様子に変化は無い。
しっかりと息はある事に胸を撫で下ろした。
〔よかったわ、ただの気絶みたいね〕
こんなに幼い子供なのにとアリアはすり抜ける手で王子の頭を撫でる仕草をする。
しばらくそうしていると鍛錬場に近付く多数の気配を感じた。
物陰から姿を現すと後ろに数人の兵を引き連れた上司の姿があったので草で宙に矢印を作り物陰へと案内する。
「ご苦労、精霊。後はこちらで何とかするから今日はもうフォレストの所に戻って良いぞ」
〔分かった〕
直ぐにヴァンの元へ戻ったアリアはヴァンの背に抱き着き、ぐりぐりと頭を背に押し付けた。
「王子の様子はどうだった?アリア」
〔よくわからないけれど少なくとも気絶してしまう位悪いのは確かね〕
「気絶か……酷い事するな」
〔ええ、そうね……私何も出来なかったわ〕
少なくとももしも自分が光の精霊ならば治癒の力をふるいこの少年の傷を癒すこと位なら出来るのに、と自らの力不足を嘆くアリアの頭をヴァンは振り返りポンポンと軽く撫ぜる。
「何もじゃないだろう、少なくともアリアはこうして王子の為に助けを呼べたじゃないか」
〔でも、もっと上手くやれば怪我をさせない事もできたハズなのよ?〕
「でもこれで王子は兄達と接触する機会が無くなるかもしれないぞ?」
〔え?〕
首を傾げるアリアにヴァンはニヤリと笑う。
「今の時代宮廷精霊術師の数で国力が決まるって言われてんだぞ?
一人失うだけでも大きな国の損失だろう。
ましてや身内とは言え王族の暴力によって希少な霊眼持ちが死ぬ様な事になってみろ、民衆からの支持率の降下に繋がる上に敵意ある者からしてみれば恰好の攻撃材料だ。
殺した兄達も継承権の剥奪はもちろん最悪処刑沙汰にでもなりかねない。
普通に考えても間違ってもそんな事にはならない様に何らかの処置が盗られると思うぞ。
例えば兄弟の接触を禁止する、とかな?」
〔じゃあ、もう酷い暴力をふるわれなくなるのね!〕
「多分な」
その言葉に安心した表情のアリアの頭をもう一度撫ぜるとヴァンは机に向き直り仕事を再開する。
アリアは邪魔しない様にとヴァンから離れ、その仕事姿をニコニコと見つめるのだった。
「おっさきーっす」
「おー、帰れ帰れ」
「お疲れ様でした」
机の上を整理しながらラノンを見送った上司はヴァンへと視線を向ける。
「フォレストは帰らないのか?」
「いえ、後少し片付けたら帰ります」
「そうか、では私は先に帰るとしよう」
「お疲れ様でした」
上司を見送り、アリアと二人きりになった部屋でヴァンはアリアへと手招きをする。
〔なーに?〕
ヴァンは首を傾げて近寄ったアリアの顎を掴むとその唇を奪った。
驚いたアリアのポカンと開いた唇の隙間から舌を侵入させアリアの舌を探り当てるとそのまま絡ませる。
その舌の熱さに思わず身を引こうとしたアリアだったがいつの間にか腰に回されていた腕により阻止され、それどころか更に引き寄せられるとより一層深く舌を絡ませられてゾクゾクとした感覚がアリアの腰を這い上がる。
暫く口内を蹂躙され、漸く解放されたアリアは荒い息でへたりと床に座り込んだ。
その様子にヴァンは首を傾げ言った。
「どうだ?」
〔ど、どうだって、なななにが!?〕
「制限を緩めたんだが特に変化はないのか?」
〔……へ?〕
そう言われてみればと自分の体を意識するといつもより力が溢れてくる様な気がするアリア。
試しにどれだけ緩められたのかと部屋の隅にあった花瓶に意識を向けると難なく浮かばせる事に成功した。
「取り敢えず子供1人なら余裕で浮かばせる位までは緩めたがあくまでも王子を守る為だから悪用はするなよ?
……これで力不足では無いだろう」
〔ええ!ありがとう、ヴァン〕
これで少しは役に立てると喜び勇んでヴァンに抱き着いたアリアだったがハタリと気が付いた。
〔でもだからってあんな、あんな、その……口付け、する必要性なかったんじゃないの?〕
「能力制限の制約の変更には時間がかかるし粘膜同士の接触が一番効率良いじゃないか、粘膜接触率が高い方が時短にもなるしな」
〔それは、うん、そうかも知れないけど……ううう〕
平然とそう言い放ったヴァン。
ただの抱擁や頬への口付けではあれだけ照れるのに何故効率を考えるとこういった口付けは平気になるのかと遣る瀬無い気持ちを抱きながら、あの情熱的な口付けに深い意味が無かった事を知り打ちひしがれるアリアにヴァンは不思議そうな目を向けるのであった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが
カレイ
恋愛
天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。
両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。
でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。
「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」
そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる