PURE

なずな

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第1話

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「んでさぁ、あいつがさぁ……」
「うんうん。」
「マジで泣けてくるわ。な、お前もひどいと思わねぇ?」
「うんうん。」
「だろ?ここまで俺、純粋にあいつ一筋思ってきたんだぜ?」
「うんうん。」
「なのに、なのに……くっそー!」
「うんうん。」

隣でうじうじしている男をチラリと見て、私はまたグラスを口許に持っていく。
二十歳になりたての私にとって、初めての人との飲みがまさかの失恋慰め会になるなんて、思ってもなかった。

「聞いてんのかよ。俺はさぁ……」
「うんうん。一途だったんでしょ。」
「そう!!俺、本当にあいつに……」

もう一度言おう。
初めての人との飲みがまさかの失恋慰め会になるなんて、思ってもなかった。
私の初めての、恋の相手との、初めての飲みが、失恋慰め会。
私の失恋、相手の失恋。
両方とも兼ねてるなんて、思ってもないんだろうなとじっくりと男を見つめる。
大学のサークルの先輩。
気さくで明るくて、笑うとできるえくぼが好きだった。
一目惚れとか、気づいたらとかじゃなくて、じっくりと一年かけて好きになった人。
高校時代も中学も友達みたいに好きな人が、できなかった私の初めての人。
飲みに誘われて、嬉しかった。
失恋慰め会じゃなければね!!!!!
大体、さっきから俺が俺がって、自分の良いところばっかり並べやがって。
別れたのが彼女のせいならせいって言ってしまえよ。無駄にかばったり、無駄に言い訳したりめんどくせぇよ。
そんなんじゃ、百年の恋も覚めるし彼女だって別れたくなってもおかしくねぇーよ。

「はぁ。俺、もうダメかもしんないわ。」
「そんなことないんじゃない?あ、もう一杯ください。」

すごくめんどくさい。
なにこれ。なにこいつ。
私はこいつの何を一年間見てきた?
あーあ、私も人を見る目がないなー。

「最近さ……彼女もいなくて寂しいんだよね。」
「そーなんですか。」
「だからさ…………慰めてよ。」
「は?」

私の腕をつかむと男は、店を出ようとする。
慰める?寂しい?は?
頭のなかが?だらけの私をよそに男は会計を済ますと颯爽と店を出ようとする。
引きずられるままに、私も出ようとするとぐいっと後ろに引かれた。

「え?」
「なーにやってんの?」
「は?あんた、誰?」
「この子の兄ですけど?お前こそ誰?つーか、人の妹どこにつれてこうとしたのかな?」
「は?私に兄なんて……。」
「まぁ、どうでもいいけど、もうこんな時間だし妹は連れ帰るから。じゃあね。」
「は?」

見知らぬ男は、私の兄を名乗り私を先輩から連れ去った。
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