天空の魔女 リプルとペブル

やすいやくし

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22.あきらめない二人

天空の魔女 リプルとペブル

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22.あきらめないふたり

「頼んだよ!しずく」
 そう胸ポケットに声をかけて、大きく走り出すと、ポケットの中から「グー!」と聞こえたような気がした。

 ペブルは、トンと自分の胸をたたいて自分に気合いを入れ、ほうきにまたがると、足元にしげる青草あおくさを足で踏みしめながら、坂道をかけ下る。
 飛べる、私、飛べる…はず。
 崖がせまってくる。

 飛ぶ、飛べる、飛べて…こ、怖い。
 崖のギリギリ一歩手前で、ペブルは急ブレーキをかけて、止まった。
 と、思ったら、勢いがつきすぎて止まれず、そのまま崖の下へ落下。
「わ、わわわ」と、いう声だけ残しながら落ちていった。

 もっとも、崖の下に打ち付けられる前に、先生が地面の下に魔法でクッションを用意してくれたので、ケガはなかった。

 クッションから立ち上がりながら、ペブルが「痛たた」とつぶやいていると、胸ポケットからしずくが顔を出して、
「ね、何があったの?せっかく気持ちよく寝てたのに」と、言う。

「寝てた?」
 ペブルが聞き返す。うん、とシズクがうなずく。
「じゃあ、さっき私が、『頼んだよ!しずく』って言った時、『グー』って返事したのは?」
「うーん、いびき??」

 ペブルは思わず、しずくの首根っこをつかむと、
「さっき、飛ぶ練習するの手伝ってくれるって言ってたよね」
 と、しずくの顔をにらみつける。
 しずくは、ハッと身を固めた。

 そこに崖の上からホキントン先生が声をかけた。
「ペブル、もう少し低いところからはじめましょうか。それにしても、いい落ちっぷりだったわ」
 先生の楽しそうな笑顔にペブルの怒りが、へなへなとしぼんでいった。

 先生は、楽しそうに笑っている。
 だけどペブルのことをバカにしているわけではないことが分かった。
 
 やがて時間が経つにつれて、最初は10名ほどいた飛べないグループの生徒も、ほとんどが飛べるようになり、残っているのは、ペブルとマーサだけになってしまった。

 高低差50センチほどの段差に移動したペブルとマーサ。
 ペブルは、50センチ程度の段差から毎回のように転げ落ちては細かい傷や打ち身をつくっていたが、マーサは、なかなか段差から飛び出せずにいる。
 それでも、二人とも練習をやめようとはしなかった。

(マーサったらあきらめないね、やるじゃん)
 ペブルは自分のことを棚に上げてそんなことを思った。

 やがて、午後に入り、今日の授業時間が終わってしまった。
 他の生徒たちは、みんな学校へと帰っていったが、ペブルとマーサは、どちらも練習を止めるとは言い出さなかった。
 ホキントン先生は、相変わらずニコニコしながら二人の練習に付き合ってくれている。
 一度、学校に帰ったリプルもペブルのことが心配になったのか、戻ってきていた。

 リプルの顔を見たとたん、ペブルの気持ちがボロッと崩れた。
「リプル~、飛べないよぉ」と、半べそをかきながら、リプルにかけ寄った。

 リプルは、ペブルの頭をなでながら、
「大丈夫!ペブルならやれるって」と、はげます。
 そんな二人の様子をマーサが崖の上からじっと見つめていた。

 ブ、ブォーロー…その時、学校から大きな角笛つのぶえの音が聞こえてきた。ホキントン先生がはっと顔をあげる。
「何かあったみたい」
 ほぼ同じタイミングで、崖の上の方から、ドドド、ドドと重々しい音が響いてきた。

 見ると、土煙をあげながら、家畜のガガイルたちが、数十頭、群れをなして草原を駆け下りてくるのが見える。
 ガガイルは、牛に似た動物で、学校の農地で飼われている。

 家畜小屋にいる時は、おとなしいのだが、何かに驚くと所かまわず走りまわるくせがある。
 そのガガイルたちが、学校の家畜小屋を抜け出してきたのか、何十頭と群れになって、この草原へと下ってきている。
 植木をなぎ倒し、石を蹴散けちらしてせまってくるガガイルたちは、まるで真っ黒な雪崩なだれのようである。



「何?アレ」ペブルがぽかんとしていると、
「危ない、こっちに来る。飛んで。リプル、ペブルをお願い」
 ホキントン先生は、そう言いながら、自分もほうきで空に飛び上がり、マーサを助けに向かった。

 リプルは、自分もほうきにまたがると、ペブルに手を伸ばす。
 ペブルは、ブルブルと頭を振った。
「ペブル、飛べる。一緒に」

 リプルは、もう一度手を伸ばして、無理やりペブルの手をとった。
「行くよ!」
 その声に励まされたペブルは、ほうきにまたがると、地面を思い切り蹴った。

 しかし、ほうきは、一ミリも動かない。
 ペブルは頭を振りながら
「リプルだけ逃げて」と、リプルの手を振りほどこうとした。

 その間にも、ガガイルたちは、どんどんペブルたちの方へと迫ってくる。
「ううん、絶対に離さない!」リプルは、よりいっそう強くペブルの手を握りしめた。
「リプル……」ペブルの目にじわっと涙が浮いてきた。
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