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30.またもイザベスが

天空の魔女 リプルとペブル

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30.またもイザベスが

 林の中の空気は、木々の精気をたっぷりためこんでいるみたいで、かすかな苦みを含んだ綿菓子のような香りがする。

「ほら、ここにチェイン茸があるわよ」
 リプルがさっそくカシの木の根元に生えている輪っかが連なったような不思議な形の黄色いキノコを指さした。

「あら、私だってとっくに見つけてましたわよ」
 イザベスがそれをサッと横取りした。




「イザベス、ダメでしょ。先に見つけたのはリプルだよ。返しなよ」
 ペブルが、そう言ってリプルのカゴにチェイン茸を入れ直す。

「いい子ぶっちゃって。もう結構、わたくし、一人で探しますわ」
 ペブルに腹を立てたイザベスは、ペブルたちと離れて一人で、林の奥へと入っていく。

「あ~あ、行っちゃった。ほんとイザベスったらジコ中よね」
 ペブルが口をとがらすと、
「ちょっと、素直じゃないところがあるだけなの。長く付き合うと、優しいところもあるって分かると思うわ」
 マーサがそうイザベスの肩をもった。

「えーそうかなぁ。たとえば?」
 ペブルが首をひねる。

 マーサはしばらく考えていたが、ようやく
「えっと、古くてボロボロになって雑巾にしかならないようなお洋服を私にくれたりしたわ」
 と、にこにこしながら答えた。

「マーサ、いい子すぎるよ!」
 ペブルがマーサの手を取ろうとするのを「待って、ペブルの手はリギン草の手だから」と、リプルが冷静に止めた。

 その時、林の奥から鋭い悲鳴が聞こえてきた。
「あれは、イザベスの声」
 三人は、ハッとしてイザベスの去った方へ駆けだした。

 三人がイザベスの悲鳴が聞こえた場所へと駆けつけると、そこは背の高い木々に囲まれた小さな広場だった。

 イザベスの背後に高い崖がそびえている。
 崖は、重々しい緑のツタに覆われていたが、地面に接するところにぽっかりと穴が空いていた。
 そこから、何本もの黒いヒモのようなものが伸びて、イザベスに絡みつき、彼女を穴へと引きずりこもうとしている。
 イザベスは真っ青な顔をして、必死に引き込まれまいと足をふんばっている。

「大変、助けなきゃ!」
 リプルがすぐに魔法の杖を取り出した。

「マーサ、先生を呼んできて」
 ペブルも杖を取り出しながらそううながす。

 マーサは、言葉もなくうなずくとくるっときびすを返し、先生を呼ぶために駆けていった。
「土魔法で、土の塊をどんどん飛ばして、あいつの動きを止めよう」
 ペブルの言葉にリプルも頷く。

「ソイード、ボンガーファ」
 二人が声を合わせて呪文を唱えつつ、杖を振るとツタに覆われた崖から土の塊がゴロンゴロンと落ちてくる。

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