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29.取り扱い注意のリギン草
天空の魔女 リプルとペブル
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29.取り扱い注意のリギン草
ホキントン先生と生徒たちは、学校の東側に広がる湖のほとりへ続く小道を歩いて行く。
小道は草原を横切り、小川を越え、林の中へと続いている。
手に藤のつるで編んだカゴを下げたり、手に分厚い薬草辞典を持ちながら列になって歩く生徒たちは、ハイキングにでも行くような足取りだった。
「はい、ストップ。このツル草を見て」
林の中に入ってしばらく進むと、先生が振り返り、太いカシの木に巻き付いたツル草の葉を指さした。
生徒たちは、わらわらと先生のまわりに集まる。
先生が指さしたのは、ツル草の葉。濃い緑で所々に銀色の斑点がついていた。
「このツル草は、リギン草といいます。葉っぱから、銀に似た色素を抽出することができるので、古くは錬金術にも用いられていました」
先生、と、リプルが手をあげた。
「このリギン草と相性のいい素材は何ですか?」
「リプル、いい質問ね。この葉と相性がいいのは、コルット石、それから…」
と、言いかけて先生は、あわてて注意をうながした。
「ちなみに、この葉は決して素手で触ってはいけませんよ! 一日中、フルーツの腐ったような香りが手について取れなくなります」
「先生……もう遅いです」
先生と生徒たちがいっせいに声のした方を振り向くと、そこには、リギン草の葉っぱを手にしたペブルの姿があった。
イザベスが、葉っぱをにぎりしめたペブルの右手をとって匂いをかぎ、すぐに激しく顔をしかめて、鼻をつまみ、手を左右に振った。
「まあ、何なの、これ……ひどい匂い」
ペブルも左手で自分の鼻をつまんだ。
「ぜんぜい、にぼいがとれるまぼうはありまぜんか?」
ペブルが聞いたが、先生は苦笑いしながら首を左右に振った。
気がつくと、まわりから生徒たちが少し遠ざかっていて、ペブルのところだけぽっかり空間ができていた。
お昼になり、生徒たちは、湖のほとりで、めいめいお弁当を広げることになった。イザベスが、肩に乗っているコウモリのシッコクに向けてうっとりと話しかけている。
「まるで私の瞳のように澄んだ湖面だこと。そして、どうかしら、遠くには青い山々が見えて。これ以上ないランチのシチュエーションですこと。足元には、色取り取りの花が咲いて、その香りが……香りが、ごほン、ちょっと、ペブル! 近くに寄らないでくださる? せっかくのランチがあなたの手についたリギン草の香りのせいでだいなしですの」
演劇調ではじまったイザベスのひとり言は、最後にはペブルへのクレームで終わった。
「私だって、困ってるんだから。イザベス、ペアなんだから助けてよ」
「まっぴらごめんですわ。ペアなんてこの授業の間だけのことなんですし」
イザベスは、木で鼻をくくったような返事だ。
「ねえ、ペブル。匂いはとれた?」
そこにリプルとマーサがやってきた。
「全然とれないよ。ほら」
ペブルが、匂う手をリプルたちのまえに差し出す。リプルも思わず顔をしかめた。
「ところで、ペブルたちは、薬草を何種類集めた? 私たちは七種類集めたよ」
リプルが言うと、
「リプルって薬草にも詳しいのね。いろいろ教えてもらっちゃった」
と、マーサが続けた。
「え、私たち、まだこれだけ」
そう言って、ペブルが差し出したカゴの中には、リギン草だけが入っていた。
「まあ、何てことでしょう。このわたくしが他人に遅れを取ることなんてあってはなりませんわ」
いつも人より優れていたいイザベスの闘争心に火がついた。
「ペブル、行きますわよ」
そう言うと、イザベスは、ペブルの臭くない方の手をつかんで、林の中へと分け入っていった。
「リプルたちも一緒においでよ~」
イザベスに引きずられながら、ペブルが手招きをした。
「マーサ、あの二人の掛け合い見るのも面白そうね」
「そうね、ついて行きましょう」
リプルとマーサも二人の後を追った。
ホキントン先生と生徒たちは、学校の東側に広がる湖のほとりへ続く小道を歩いて行く。
小道は草原を横切り、小川を越え、林の中へと続いている。
手に藤のつるで編んだカゴを下げたり、手に分厚い薬草辞典を持ちながら列になって歩く生徒たちは、ハイキングにでも行くような足取りだった。
「はい、ストップ。このツル草を見て」
林の中に入ってしばらく進むと、先生が振り返り、太いカシの木に巻き付いたツル草の葉を指さした。
生徒たちは、わらわらと先生のまわりに集まる。
先生が指さしたのは、ツル草の葉。濃い緑で所々に銀色の斑点がついていた。
「このツル草は、リギン草といいます。葉っぱから、銀に似た色素を抽出することができるので、古くは錬金術にも用いられていました」
先生、と、リプルが手をあげた。
「このリギン草と相性のいい素材は何ですか?」
「リプル、いい質問ね。この葉と相性がいいのは、コルット石、それから…」
と、言いかけて先生は、あわてて注意をうながした。
「ちなみに、この葉は決して素手で触ってはいけませんよ! 一日中、フルーツの腐ったような香りが手について取れなくなります」
「先生……もう遅いです」
先生と生徒たちがいっせいに声のした方を振り向くと、そこには、リギン草の葉っぱを手にしたペブルの姿があった。
イザベスが、葉っぱをにぎりしめたペブルの右手をとって匂いをかぎ、すぐに激しく顔をしかめて、鼻をつまみ、手を左右に振った。
「まあ、何なの、これ……ひどい匂い」
ペブルも左手で自分の鼻をつまんだ。
「ぜんぜい、にぼいがとれるまぼうはありまぜんか?」
ペブルが聞いたが、先生は苦笑いしながら首を左右に振った。
気がつくと、まわりから生徒たちが少し遠ざかっていて、ペブルのところだけぽっかり空間ができていた。
お昼になり、生徒たちは、湖のほとりで、めいめいお弁当を広げることになった。イザベスが、肩に乗っているコウモリのシッコクに向けてうっとりと話しかけている。
「まるで私の瞳のように澄んだ湖面だこと。そして、どうかしら、遠くには青い山々が見えて。これ以上ないランチのシチュエーションですこと。足元には、色取り取りの花が咲いて、その香りが……香りが、ごほン、ちょっと、ペブル! 近くに寄らないでくださる? せっかくのランチがあなたの手についたリギン草の香りのせいでだいなしですの」
演劇調ではじまったイザベスのひとり言は、最後にはペブルへのクレームで終わった。
「私だって、困ってるんだから。イザベス、ペアなんだから助けてよ」
「まっぴらごめんですわ。ペアなんてこの授業の間だけのことなんですし」
イザベスは、木で鼻をくくったような返事だ。
「ねえ、ペブル。匂いはとれた?」
そこにリプルとマーサがやってきた。
「全然とれないよ。ほら」
ペブルが、匂う手をリプルたちのまえに差し出す。リプルも思わず顔をしかめた。
「ところで、ペブルたちは、薬草を何種類集めた? 私たちは七種類集めたよ」
リプルが言うと、
「リプルって薬草にも詳しいのね。いろいろ教えてもらっちゃった」
と、マーサが続けた。
「え、私たち、まだこれだけ」
そう言って、ペブルが差し出したカゴの中には、リギン草だけが入っていた。
「まあ、何てことでしょう。このわたくしが他人に遅れを取ることなんてあってはなりませんわ」
いつも人より優れていたいイザベスの闘争心に火がついた。
「ペブル、行きますわよ」
そう言うと、イザベスは、ペブルの臭くない方の手をつかんで、林の中へと分け入っていった。
「リプルたちも一緒においでよ~」
イザベスに引きずられながら、ペブルが手招きをした。
「マーサ、あの二人の掛け合い見るのも面白そうね」
「そうね、ついて行きましょう」
リプルとマーサも二人の後を追った。
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