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56.伝説の武器

天空の魔女 リプルとペブル

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56.伝説の武器

 リプルたちが、校長室へ入ると、校長先生はドアにしっかりと内側から鍵をかけた。
 そして、立ち上がって、部屋の隅に飾られている古びた鏡の前で、パチンと指を鳴らした。

 すると、鏡の中から大きな木の宝箱を持った先生の使い魔であるドラゴンが現れた。



 ドラゴンは宝箱を校長先生の前に置くと、また鏡の中へと戻っていった。
 ドラゴンが持っているとさほど大きくは見えなかったけれど、こうして目の前に置かれてみると、宝箱は軽く人が横たわれるくらいの大きさで、頑丈に作られていた。
 細部には古い聖なる言葉らしきものが彫刻されている。

 リプルの目が輝いた。まさか伝説の武器を目にする機会があるなんて。
 
 校長先生が、宝箱の上のほこりをサッと手で払いながら説明する。
「これが、聖なる力の宿った武器です。地上で戦う時には、私たちの魔法でも充分、闇の天魔たちと戦える。しかし、闇の大地では私たちの魔法だけでは、闇の天魔たちにたちうちできないのです。こうした聖なる武器を使わないと、闇の天魔たちと互角に戦うことはできません。この武器は、前回の厄災でも使われたもので、数百年、人里離れたこの地で私たちの先祖が代々守りぬいてきたものです。まさか私の代で、この武器を再び日の光に当てることになるとは」

 校長先生は、よっこらしょと重々しい箱の扉を持ち上げた。
 リプルたちがのぞき込むと、持ち手に細かく龍が細工された銀の剣。
 両端が研ぎ澄まされた歯になっている鋼の斧。
 金の糸が張られた弓に銀色の羽根がついた矢など、いかにも魔力を秘めていそうな武器が入っている。

 ちらりと見えただけだけれど、リプルの好奇心を刺激するのに充分だった。(王都についたら図書館で、伝説の武器について調べなきゃ)新しい目的が加わってリプルは、早く王都に行きたいと心から願った。

 校長先生を囲んで、リプルたちがお茶を飲んでいると、ホキントン先生が入ってきた。
 手には、分厚い紙の束をもっている。
「リプル、ペブル、よかったわ。間に合って。うっかり忘れるところだったの。あなたたちがいない間の魔法の勉強の資料と、宿題プリント」
 と、厚い紙の束をリプルに渡す。

「それから、こっちの束は、王都で使われている魔法についてのリポートを書いて欲しいの。これは、宿題というよりは、研究の参考資料にしたいから私からのお願いよ。では、気をつけて行ってきて。そして、楽しんできてね。ジール様、リプ・ペブをよろしくお願いします」
 ホキントン先生は、にこやかにそう言うと、あっけにとられた表情の二人を残して部屋を出て行った。

「すごい量の宿題だね……」
 ジールが放心状態のペブルを気の毒そうに見やった。

「ジール、クッキー缶1個あげるから、この宿題10枚やってくれない、どう?」
 ジールにせまるペブルの頭をロッドがポカッと叩いた。

 リプルたちは、みんなで聖なる武器の入った宝箱を馬車の荷台へと運び積み込んだ。

 
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