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64.カルキ―たちの反撃
天空の魔女 リプルとペブル
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次の日の朝。
「う、体が痛い。板の上で寝たからかも」
リプルが目を覚まして独り言をいう。
昨日の夜は、遅くまでみんなと、くだらない話をして……いつの間にか馬車の荷台の上で寝たのだった。
周りを見回すと、となりにはペブルがだらしなく口を開けて、すーぴー、すーぴーと気持ちよさそうな寝息を立てている。ジールとロッドの姿は見えない。
「おはよう」
リプルが上半身を起こしたのを見て、マーサが声をかけた。
「おはよう、あれ? イザベスは?」
リプルは、あたりを見回してマーサにたずねた。
「『朝、顔を洗わないなんて、レディにはあり得ませんわ』って、洞窟の外に水を探しに行ったわ」
というマーサの言葉が終わるか終わらないかのうちに、洞窟の入り口の方から騒がしい声が聞こえてきた。
「早く! イザベス。走れ」
ロッドの声だ。
リプルは慌てて、馬車の荷台から駆け下り、入口の方へ向かう。
するとジールが、洞窟の入口に立って、空に向かって雷魔法を唱えていた。
「どうしたの?」
ジールは、呪文をとなえつつ空をゆびさした。
空の色が変だ。
まるで嵐の前のような不気味な茶色い雲に空が覆われている。
雲ではなかった。
空を茶色に染めんばかりの数多くのカルキーが集まってきていたのだ。
ロッドは、洞窟の外にいて、風魔法で上空の気流を乱すことで、カルキーの攻撃を邪魔している。
その下を魔女服の裾をたくし上げつつ、転びそうになりながら駆けてくるイザベスの顔は蒼白だった。
リプルは、とっさにイザベスの走る速度を速くする魔法をかけた。
イザベスは、
「んま、あららららー」
と、声を上げながら、あり得ない早さでこちらを目指して走ってくる。
時々、ジールの雷が、ビリビリと空を引き裂く。
そのたびにカルキーたちは、驚いたように身を引くので、空に穴が空いたようになるのだが、またすぐに穴はふさがってしまう。
イザベスが洞窟に倒れ込むように入りこんだ。
水を入れてきたとおぼしきバケツには、走っているうちにこぼれてしまったらしく、水は、ほとんど残っていなかった。
しかも身だしなみを整えるどころか髪はボサボサだ。
「はあ、はあ。何ですの? このカルキーとやらの大群は!?」
イザベスが息を切らせながら憤慨している。
「お、はよ。ふあああ」
その時、のんきにあくびをしながらペブルが、ようやく起きてきた。
まだ寝ぼけているようで半目の状態だ。
すると、それを見たロッドが
「おう、ペブル。すっきり目覚めたいか?」
と、ペブルの手を引き、洞窟の入口へと連れていく。
「ふえ?」
ペブルは頭をぐらぐらさせて、まだ半分寝ぼけたまま。
ロッドは、入口をふさいでいる岩の中から小さな岩を一つどけると、そこからペブルの頭を外へとつき出した。
洞窟から顔を出したペブルに、外のカルキーたちは、いっせいにギャーギャーと騒ぎ立てた。
その様子に目を皿のように見開いたペブルは、慌てて頭を引っ込めた。
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