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92.イザベスとライオン
天空の魔女 リプルとペブル
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さて、イザベスとライオンを追っているリプルたちだけれど、幸い、ライオンたちは、王都への道をまっしぐらに走っているようだった。
「イザベス、大丈夫かな?」
気づかわし気なリプルに、ジールは背中から声をかける。
「このまままっすぐ走っていけば、そのうち追いつけるよ」
ジールのその言葉の通り、みんなは一時間ほど走り続けたとある湖の畔でライオンとシカ、そしてトッドを見つけることができた。
三頭は、湖に足をつけて、一緒に仲良く水を飲んでいた。
イザベスはライオンの背でグッタリとしている。
同じくらいグッタリしていたのは、ペブルだった。
ペブルは、最初のうちこそ、ダチョウの首につかまって「速い、速い」と、はしゃいでいたがそのうち、羽根が鼻の穴に入っては、クシュン、クシュンとくしゃみが止らなくなった。
もちろん、全速力で走っているダチョウの首から手を放すことなどできるはずもない。
湖について、ようやく鼻に入った羽根が取れるとホッとしたペブルだった。
「イザベス! 大丈夫?」
リプルがライオンの背でぐったりしているイザベスに声をかけた。
イザベスはその声にはっと目を覚ました。どうやら疲れて眠っていたらしい。
目を覚ましたイザベスは、レッドの背に乗っている二人を見た。
「ま! どうしてリプルがジールさまと一緒に」
イザベスの目が嫉妬に燃えあがった。
(そこは、私の座るべき場所なのに。ジール様と一緒でなければ、こんなライオンなんて動物になんか乗りませんわ)
怒りにふるえるイザベスは、思わずライオンのたてがみをバリッとむしり取ってしまった。
水を飲み、せっかく落ち着きかけていたライオンが、またガオーと声をあげる。
その声に驚いたシカとトッドが駆けだし、その後をライオンが追ってかけだす。
「せっかく追いついたのに、またかよ」
ロッドの声がひびいた。
「ここまで来れば王都はもうすぐだ。このまま走っていこう。またすぐに追いつけるさ」
そう楽観的に言ったジールだったが……。
一行は、山道に入ってきた。けっこう険しい山の中、一本道が、曲がりくねりながらずっと続いている。
しかし、いっこうにイザベスとライオンの姿は見えない。
「おーい。イザベス」
「いないね」
「おかしいわ、一本道のはずなのに」
みんなが徐々に不安を感じはじめた頃、
「あ、あそこにライオンが!」
さっきまでイザベスを乗せていたライオンが、大きな木のかげで横になっていた。
「イザベース!」
しかし、あたりにイザベスの姿は見えない。
「イザベス、どこ!? 返事をして!」
シマウマの背からおりたマーサが大きな声で呼びながら、ライオンに近づいた。
近くにいくと、ライオンは寝ているのではなく気を失っているようだった。
手足が、ぐでんと伸びている。時々しっぽや手足がピクッと動くので、死んでいるわけではないことがわかる。
しかし、まるで何かに眠り薬でも飲まされたような力の抜け方だった。
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