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93.ふたたび洞窟へ

天空の魔女 リプルとペブル

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93.ふたたび洞窟へ

 みんながライオンのおかしな様子に気を取られているそばで、あたりをきょろきょろ見回していたペブルは、少しはなれた崖の下でトッドとシカがおびえたように体を寄せ合っているのを見つけた。
 トッドたちのそばにかけよったペブルは「どうどう」と言いながら大きな背をなでる。
 トッドは何かを訴えるように「ひんひん」とかぼそい声で鳴くと、ペブルの魔女服の袖をくわえた。

「わわ、私なんか食べてもおいしくないよ!? 私より背の高いロッドのほうが食べがいが……」
「おい、俺を身代わりにするな!」
 振り向くとペブルの背後にうでぐみをしたロッドが立っていた。

「い、イケメンって、煮ても焼いてもおいしいんじゃないかなぁ~って思って」
「ごまかしてもムダだ!」
 ロッドがペブルの鼻をつまむ。 
 
 ペブルはあせって「ふが、ふが」と、大木の後ろのガケを指さした。
「だから、ごまかしてもムダだと言っている」
「ふが、あな、ふが、ある」
 あまりにも必死で訴えるペブルのそばで、トッドが「ひひーん」といななきながら、ロッドのマントをくわえた。

「な、なんだよ。トッドまで」
 その拍子にロッドの指が、ペブルの鼻からはなれ、ペブルはさけんだ。

「そこ、ヘンな穴がある!」
 ペブルの指さす先、大木の陰になって隠れていたが、ぽっかりと不気味な穴が空いていた。
 しかも、その穴の前には赤いハイヒールが片方だけ落ちている。

 そのころには、リプルやジールたちもペブルたちの近くに寄ってきていた。 
 マーサが叫び声をあげ、赤いハイヒールにかけよる。
「イザベスの靴!」
 
 みんなの中に緊張がはしる。
 
 高い崖の下にぽっかりと口をあけた洞窟は、大人が立って歩けるほどの大きさだ。
 しかも、ほんのさっきこじ開けられたみたいに、周辺にはばらばらと小石が落ちている。

「見て、これイザベスの髪では?」
 洞窟の入り口を確かめていたリプルが金髪をひろいあげた。

「もしや、イザベスはこの中に?」
 ペブルが穴の中に首を突っ込むと、中は生あたたかくしめっていた。

「せっかく私たち洞窟からぬけてきたところなのに、また洞窟だなんて」
「イザベスを探さなきゃいけないから仕方ないよ」
「でも、私たちが乗ってきた動物はどうする?」
「このあたりにいてもらおう」
「ごめんね。しばらく待っていてね」

 リプルたちが乗ってきたレッドは、わかりましたというように大きくいなないた。
 ロッドが乗ってきたクロヒョウは、言葉が分かったかのようにしずかに木蔭に伏せた。
 マーサが乗ってきたシマウマは、地面に生えている草をむしゃむしゃと食べはじめた。

 ペブルがダチョウに言い聞かせる。
「あのね、これから怖いところに行くから、ここで留守番しててね」
 ダチョウは、わかったよというふうにコクンコクンと首を上下にふった。

「ダ・チョウってば、わかってる、すごい。心が通じたんだ」
 ペブルは、大喜びでジャンプした。ダチョウもペブルに合わせてジャンプしている。
「なんであいつら心が通じてるんだ?」
 ロッドが首をかしげている。 

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