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95.落ちる!

天空の魔女 リプルとペブル

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95.落ちる!

 先頭を歩いていたジール、リプル、マーサ、ペブル、ロッド。
 みんな、次々に地面に空いていた暗くて深い亀裂に飲み込まれてく。

「う、うわーっ」
「何が起こったの?」
「こ、こわい」
「しまった」
「今、私、宙に浮かんでる? それとも地に落ちてる途中?」

 落ちてる時間は、一瞬にも永遠にも思えた。
 その間、リプルは、悔やんでいた。もうちょっと慎重になるべきだった。
 闇の世界は、自分たちの世界ではない。それなのに、たいまつを持っていることに安心して、油断していた。
 そのたいまつも落ちたときの驚きで手ばなしてしまい、まったく何も見えない状態だ。
 もしや、自分たちはもう死んでいるのでは?
 と、疑いたくなるほどに落ち続けて……。

「バサッ、ギイ」
 最初に、バサッと音がして何かが地面に落ちた。続いて、
「ふごっ」
「むぎゅ」
「わーっ」
「……まじか」
「やだーっ」
 みんながバサッと音をして落下したものの上に次々に落ちてきた。

「ん? 生きてる」
「ほんとだ。死んでない」
「痛いし、重い、どいてくれ」
 と、いつものように下敷きになっているのは、ロッドで、その上に折り重なるようにして倒れていたペブルは
「あら、これは失礼」
 と、気取ってロッドの上から降りる。

「大丈夫かい?」
 何か柔らかいものに受け止められたと思ったリプル。
 すぐ耳もとでジールの声がしたことにドギマギした。
 どうやらリプルが落ちたのは、ジールの胸の上だったらしい。

「ご、ごめんなさい。ジール、ケガは?」
「ボクは大丈夫。リプルこそ、大丈夫か?」
 そういうとジールはサッと立ち上がり、暗やみの中、リプルの手を取って彼女を立たせる。
「ありがとう」
 と、お礼を言いながらリプルは、顔が上気するのを感じていた。
(暗やみでよかった。こんな顔をみんなに見られなくて本当によかった)

「マーサも大丈夫?」
「ええ。なんだか落ちたところがふわふわで助かったの」
「そうなんだよね。ただちょっとくしゃみが出るけど。地面がまるでさっき私が乗ってきたダ・チョウの背中の上みたい」
 ペブルがそう言ったとたん、鋭い叫びが洞窟に響き渡った。

「ギャー」
「えっ?」
「その声は?」
「闇の天魔かっ!」

「違う、違う。きっとダ・チョウだよ。ね、そうだよね。ダ・チョウ」
 ペブルの声にこたえるようにダチョウが
「ギャア」
 と、鳴いた。

「えっと、ついてきちゃったのね。でも、私たちダ・チョウの上に落ちたから助かったのね」
 リプルはそう言いながら、何か燃料になるものが落ちていないかと、手探りで地面を探した。
 すると指先がふわっとやわらかい物にふれた。

 火をつけてみると、落ちていたのは大きな羽根、あきらかにダチョウの羽根だった。
 羽根のたいまつがあたりを照らす。
 温かな光の中でダチョウが
「ギャギャギャ」
 と、嬉しそうにジャンプしながら、ペブルの肩をつついた。

「ん? さっき肩つついてたのロッドじゃなくて、ダ・チョウだったの」
 ダチョウは、ペブルの言葉にうなずくように首を上下させた。
「だから、俺じゃねーって言ってただろ」

「えっと、ここはどこなんだろうね」
 ペブルはあわてて話題を変えた。

 ジールが重々しい声で切り出した。
「さっきからずっと考えていたんだけど、僕らかなり長い間、落ちていたよね。最悪のことも覚悟しないといけないと思うんだ」
 リプルがすぐに反応する。
「つまり、ここが闇の大地かもしれないってこと?」
「ああ、そうだ」
 ジールの言葉に、みんな息を飲んだ。

「えっと、闇の大地では、どんな物が食べられるのかな?」
「ちょ、お前、緊張感なさすぎ」
 ペブルには、ロッドが高速でツッコミを入れた。

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