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96.紫の太陽
天空の魔女 リプルとペブル
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96.紫の太陽
ペブルとロッドの会話に、こわばっていたみんなの表情も少しやわらいだ。
灯りがついた分、五人の周りは明るくなったが、その周囲を取り巻く闇は、いっそう濃くなったように見える。
リプルは、オオカミの耳をすませてみた。遠くの方でかすかに風が吹くような音が聞こえる。
「かすかに風が流れるような音がするの」
「風が吹いているということは、開けた土地ってことだな。リプル、そっちに案内してくれる?」
「わかった。ついてきて」
明かりを持ったリプルの後についてペブルたちは、ゆっくりと歩き出した。
小さなたいまつで足元を照らしながらの移動は、なかなか骨の折れる作業だった。
しかも、足元には、大きな石が転がっていたり、穴が開いていたりして歩きにくいことこの上ない。
それでも、しばらくすると、五人の目も闇に慣れてきたようで、足元に転がっている頭くらいの大きさの岩や枯れた草らしきものが見分けられるようになってきた。
「おかしいな。闇の大地は、紫色の太陽に照らされている、と聞いたことがあるけれど。ここはあまりにも暗い」
紫色の太陽と聞いて、リプルがハッとした。
「そうだわ。何かの本で私も読んだことがある。『闇より暗き洞穴を進みて、至るは光の空か、はたまた更なる常闇の大地か。ああ常闇よ、我を招け。ぬばたまの闇に包まれし境界の隧道をぬけ、紫の太陽が光る闇の世界へと』たしか、こんな詩が書かれていた」
「ということは、ここは、境界の隧道かもしれないな」
「隧道とやらをぬけるとどこに出るの?」
ペブルがのん気な声でたずねる。
「闇の大地に出るか、それとも地上に戻れるか、行ってみないとわからないね」
ジールの言葉に、ペブルは、
「闇の大地で食べる非常食クッキーか、それとも王都のレストランでの温かいディナーか、出た場所で、それが決まるわね」
と、うで組みをする。
「おまえ、ほんと食べ物のことしか頭にないな。大物かよ」
あきれたようなジールの声にペブルは照れ笑いをした。
「でへへ。誉められた」
「誉めてねーし」
「あ、あそこが出口じゃない?」
リプルの言う通り、遠くに闇が薄くなっている部分が見える。
五人の足は、自然と早まった。ダチョウもヒョコヒョコとついてくる。
最後に少し急な坂道を上がりきってしまうと、広い大地がひらけた。
しかし、空があるべきところは、厚い岩盤のようなものにおおわれていて、そしてその岩盤の少し下に紫色に光る球体が浮かんでいた。
「あれって、紫の太陽!」マーサが声をふるわせた。
「てことは、とうとう来てしまったってことだね。闇の大地に」ジールの声にも緊張がまじる。
「うわーっ。缶入りクッキーの方だったか。残念」ペブルはあいかわらずマイペースだった。
「ペブル、お前だけガッカリの方向性が違うんだよ」ロッドはそんなペブルへのツッコミがうまくなっている。
乾いた風がヒューッと吹抜けていくが、まるで大地は深い死の眠りについているよう。
木や草もなく、ただただ荒涼とした岩とあれた大地が広がっている。隧道の中とは違って、あたりの様子は見える。
しかし、まるで紫色のサングラスをかけて見ているような景色で、おせじにも居心地がいいとは言えない。
その時、ぐらぐらと地面がゆれた。
ペブルとロッドの会話に、こわばっていたみんなの表情も少しやわらいだ。
灯りがついた分、五人の周りは明るくなったが、その周囲を取り巻く闇は、いっそう濃くなったように見える。
リプルは、オオカミの耳をすませてみた。遠くの方でかすかに風が吹くような音が聞こえる。
「かすかに風が流れるような音がするの」
「風が吹いているということは、開けた土地ってことだな。リプル、そっちに案内してくれる?」
「わかった。ついてきて」
明かりを持ったリプルの後についてペブルたちは、ゆっくりと歩き出した。
小さなたいまつで足元を照らしながらの移動は、なかなか骨の折れる作業だった。
しかも、足元には、大きな石が転がっていたり、穴が開いていたりして歩きにくいことこの上ない。
それでも、しばらくすると、五人の目も闇に慣れてきたようで、足元に転がっている頭くらいの大きさの岩や枯れた草らしきものが見分けられるようになってきた。
「おかしいな。闇の大地は、紫色の太陽に照らされている、と聞いたことがあるけれど。ここはあまりにも暗い」
紫色の太陽と聞いて、リプルがハッとした。
「そうだわ。何かの本で私も読んだことがある。『闇より暗き洞穴を進みて、至るは光の空か、はたまた更なる常闇の大地か。ああ常闇よ、我を招け。ぬばたまの闇に包まれし境界の隧道をぬけ、紫の太陽が光る闇の世界へと』たしか、こんな詩が書かれていた」
「ということは、ここは、境界の隧道かもしれないな」
「隧道とやらをぬけるとどこに出るの?」
ペブルがのん気な声でたずねる。
「闇の大地に出るか、それとも地上に戻れるか、行ってみないとわからないね」
ジールの言葉に、ペブルは、
「闇の大地で食べる非常食クッキーか、それとも王都のレストランでの温かいディナーか、出た場所で、それが決まるわね」
と、うで組みをする。
「おまえ、ほんと食べ物のことしか頭にないな。大物かよ」
あきれたようなジールの声にペブルは照れ笑いをした。
「でへへ。誉められた」
「誉めてねーし」
「あ、あそこが出口じゃない?」
リプルの言う通り、遠くに闇が薄くなっている部分が見える。
五人の足は、自然と早まった。ダチョウもヒョコヒョコとついてくる。
最後に少し急な坂道を上がりきってしまうと、広い大地がひらけた。
しかし、空があるべきところは、厚い岩盤のようなものにおおわれていて、そしてその岩盤の少し下に紫色に光る球体が浮かんでいた。
「あれって、紫の太陽!」マーサが声をふるわせた。
「てことは、とうとう来てしまったってことだね。闇の大地に」ジールの声にも緊張がまじる。
「うわーっ。缶入りクッキーの方だったか。残念」ペブルはあいかわらずマイペースだった。
「ペブル、お前だけガッカリの方向性が違うんだよ」ロッドはそんなペブルへのツッコミがうまくなっている。
乾いた風がヒューッと吹抜けていくが、まるで大地は深い死の眠りについているよう。
木や草もなく、ただただ荒涼とした岩とあれた大地が広がっている。隧道の中とは違って、あたりの様子は見える。
しかし、まるで紫色のサングラスをかけて見ているような景色で、おせじにも居心地がいいとは言えない。
その時、ぐらぐらと地面がゆれた。
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