異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む！

第二章

六話 【銀色の閃光、現る！】

思い立ったが吉日！

っと言いながら、道具屋で回復薬などを購入し［明日］キネスに向かうことにした惣一郎。

ベンゾウの武器も買わねばと武器屋を覗きに来たが、ナイフ類は補助武器要素が大きいのか在庫も少なく、素人目に見ても良いものがなかった。

これなら、ネットショップで包丁でも買った方がマシだな。

そう思い、買わずに店を出る。

「武器、なくても守る！」

その覚悟は嬉しいが、そうじゃないよベンゾウさん！




さっそく宿でスキルを発動！

ベンゾウに好みの大きさなどを聞き、カバー付きだったので101層ダマスカス三徳包丁17万円を２本購入し、ベンゾウに渡す。

包丁としては躊躇する額だが、武器としてなら出せる額！

大金を持つと破滅するタイプの様だ…

届いた箱を開けると、波紋の美しさが素晴らしい！っと大興奮するベンゾウ。

武器屋のナイフより相当優れているだろう…　高級品だし！

興奮し包丁を振り回すベンゾウを、明日があるからと説得するのに、結局深夜までかかった…





翌朝目覚めると、抱きついてヨダレを垂らし寝ているベンゾウを起こす。

子供だし、まだ一人で寝るのが怖いのかな？

女将にキネスに向かう旨を伝えながら「また会いに来ます」っと許可なく手を握る。

引き攣った笑顔の女将が、惣一郎の初めての旅を見送ってくれた。




町の出口でカードが必要かと準備するも、出る時は何もなく、すんなりと町から出れた惣一郎達。

ベンゾウはまだ興奮状態で、早く包丁を試したいと前を走り回っている。

だがベンゾウの期待虚しく、ススの森まで何事も無く、旅は順調であった。

森の手前で一晩野営をし、嫌な思い出の残るススの森に入る。

ニールさんも言ってたじゃないか、めったに出ないと…

あれ、フラグ立ってた？

ベンゾウの顔が冒険者になっていた。

耳をピクピク動かし、クンクン匂いを嗅いでいる。

惣一郎にも緊張が走る。

横の林から木に石で出来た鈍器を持った緑の巨体が、威嚇しながら現れた！

あの鈍器…　最初に見たオークだ！

二匹いたんだ！

「ベンゾウ！　にげ…る……ぞ？」

惣一郎の声を置き去りに、銀色の閃光と化したベンゾウは、オークとの距離を一瞬で詰め、自身の倍以上はあるオークの巨体を飛び越えて宙を舞う！

「ご主人様、このナイフ凄い！　切った感じがしない！」

笑顔のベンゾウに遅れてオークの首が地面に落ちる…

へっ？

相手オークですよ？　

騎士5人で遅れを取った、あのオークですよ…

ベンゾウが強いのか包丁が凄いのか、惣一郎はしばらく固まっていた。

「ご主人様、討伐証明持ってけば、お金になります！」

う、うん…　そだね......

「オネガイシマス」

凄腕の冒険者…

ベンゾウの見た目から、女の子の中ではと勝手なイメージをしていた惣一郎。

こりゃTUEEEE～！

自分の倍以上あるオークの耳を切り落とす、分厚いメガネの少女は、このまま死体をここに置くと街道に魔物が集まると森に運ぼうとしているが、運ぶ力はない様だ。

少しホッとし、収納スキルでオークを回収して森の中に捨てる惣一郎。

「ご主人様、凄い！　さすがご主人様です！」

っと、ベンゾウが大騒ぎ！

ちょっと嬉しかった…




街道に戻り、旅を続ける惣一郎とベンゾウのふたり。

久々の戦闘が嬉しいのか、惣一郎の役に立てた事が嬉しいのか、ベンゾウは上機嫌であった。

その後も狼の魔獣やイノシシに似た魔獣が出たが、出ただけだった。

魔獣はどれも簡単に、ダマスカス三徳包丁の餌食となる。

オークと違って魔獣は売れるとの事で、マジックバッグに入れ持ち帰る。

こりゃ冒険者でも食っていけるな…

ベンゾウの強さは惣一郎の足手纏いっぷりを差し引いても、そう思わせるものだったのだ。

お礼にお菓子でもやるか…