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第四章
八話 【開始のゴング!】
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深夜に金縛りに合う惣一郎。
目を覚ますと両脇から抱き付くふたりが寝息を立てていた…
やっぱり…
そっと抜け出し外の空気を吸う。
陽が落ちてから雲が出てきたのか、外は真っ暗だった。
一寸先も見えないとは、まさにこの事である。
何も見えない闇に不安を覚え、テントへ戻る惣一郎。
テントの中は乾電池式の小さな非常灯が、やさしく足元を照らしていた。
コーヒーを入れ、静かな時間をひとり過ごす惣一郎。
この世界に来てから経験した事を、思い出していた。
前の自分では想像も出来ない事ばかり…
奴隷の少女と出会い…
魔法も覚え…
仲間も増えた…
俺、楽しんでるよなぁ。
するとスワロも目を覚まし、黙って惣一郎の向かいに座る。
惣一郎も黙ってコーヒーを入れ、スワロに差し出す。
この心地よい沈黙を終わらせるスワロが、静かに語りだす…
「私は父を見習い強くなくてはならなかったのだ… だが父の様な剣の才能はなく、唯一覚えられたこの魔法だけが、私の全てだった。なのに冒険者になると私は、何者でもなかった… 惣一郎殿。貴方と出会い、私の魔法は自信と成った。心から礼を言わせてくれ」
凛とした態度のスワロは軽く頭を下げ、またコーヒーに口をつける。
照れたおっさんもまた、誤魔化すようにコーヒーを飲む。
夜が明け朝食を作っていると、匂いでベンゾウが起きてくる。
ハムエッグとトースト、それとサラダ。
食事を済ませるとテントを収納し、また先に進み始める。
どんよりとした怪しい空模様…
しばらく歩くも雲行きは変わらず、高く登ってるはずの陽を遮っていた。
いつ降り出しても良いように、スワロの雨具をネットスキルで購入しておく。
徐々に道脇の木々が増えていき、森が近い事を教えてくれる。
すると先に見える木の根元に、横たわる人影を見つける。
近づくと胸に引っ掻かれた様な傷があり、息をしていなかった。
周りを見渡す惣一郎。
林の中へと枝が折れたり、木々に血の跡が奥へと続いていた。
この遺体の相手だろうか…
草生茂る林の中に入って行くと、またひとり人が倒れており、こちらも酷い傷であったが、まだ息をしている。
「大丈夫か!」
今にも死にそうな男は最後の力を使う様に声を絞り出す。
「た…たのむ… …まが…さらわれ…た…」
その言葉を最後に男は動かなくなった…
何かを引きずった痕跡が林の奥へと続いている。
攫われたこの人の仲間がいる。
ベンゾウがクンクンと匂いを嗅ぎ、痕跡をたどる。
奥へ…
腰まで伸びた草を掻き分け、目的に追い付くと、前方に何かを担いだ三匹のオークがいた。
先頭のオークが傷を負った女性を肩に担ぎ、奥へと向かっている。
「ベンゾウ!」
大声を上げ、注意を引く惣一郎。
すでにベンゾウの姿は消えていた。
振り返る三匹のオークにスワロが炎槍を放つ!
手前オークが火柱を上げ、驚く二匹の隙間を縫う様に銀の疾風が走り抜ける!
一匹は胴と首が三つに崩れ落ちる。
女性を担いだオークが無い足で逃げようとしながら四つに崩れ、投げ出された女性をベンゾウが受け止める。
女性に駆け寄る惣一郎。
息があるのを確認したと同時に、奥で新たなオークが叫びを林に響かせる!
「グオオォォォ!」
その声に数十匹のオークの群れが、惣一郎達を囲む様に現れた!
木々の合間からオークの群れが叫び声を上げ、武器を振りかざし、惣一郎達に襲いかかる!
惣一郎は女性を担ぎ「引きながら応戦するぞ!」っと指示を飛ばす!
惣一郎が女性を抱えたまま、オークの攻撃を左腕で受けると、ベンゾウが首元を切りつけ、疾風となって次のオークの腕を落とす。
たまらず天を仰いで叫ぶオークに、スワロの炎槍が刺さり口から火柱を上げる。
応戦しながら林の中を下がり、開けた場所を探す惣一郎。
乱立する木々の中では、いちいち敵を見失うからだ。
ベンゾウはそんな中を進み、オークの数を減らして行く。
あちこちで火柱を上げるスワロは、すでに10回以上の魔法を放っている!
ポツポツと降り出した雨は次第に強くなり、足音を掻き消す…
女性を担ぐ惣一郎も息を切らしながら飛んでくる矢や斧を、全て左腕で受けていたが、足がもつれ膝を突くと立つ事が出来ず、女性を下ろす。
スワロも走り回りながら炎槍を16発撃った所で発動しなくなり、大きく口を開け肩を揺らす。
残ったオークは二匹となっていたが、その一匹が明らかに他とは違っていた…
ベンゾウがそのうちの一匹を胸を國千代で貫き、國家を最後のラスボスへ向け構えている。
ベンゾウも息が上がっていた…
残った最後の一匹…
他のオークより大きく、胸と腰に髑髏の飾りをつけ、過去の傷を勲章の様に刻む緑の巨人は、両手に剣を握り、仲間全てを殺された怒りが今にも爆発しそうな表情で惣一郎を睨む。
3人と一匹は動かず、いつ開始のゴングが鳴るのかを待っていた…
目を覚ますと両脇から抱き付くふたりが寝息を立てていた…
やっぱり…
そっと抜け出し外の空気を吸う。
陽が落ちてから雲が出てきたのか、外は真っ暗だった。
一寸先も見えないとは、まさにこの事である。
何も見えない闇に不安を覚え、テントへ戻る惣一郎。
テントの中は乾電池式の小さな非常灯が、やさしく足元を照らしていた。
コーヒーを入れ、静かな時間をひとり過ごす惣一郎。
この世界に来てから経験した事を、思い出していた。
前の自分では想像も出来ない事ばかり…
奴隷の少女と出会い…
魔法も覚え…
仲間も増えた…
俺、楽しんでるよなぁ。
するとスワロも目を覚まし、黙って惣一郎の向かいに座る。
惣一郎も黙ってコーヒーを入れ、スワロに差し出す。
この心地よい沈黙を終わらせるスワロが、静かに語りだす…
「私は父を見習い強くなくてはならなかったのだ… だが父の様な剣の才能はなく、唯一覚えられたこの魔法だけが、私の全てだった。なのに冒険者になると私は、何者でもなかった… 惣一郎殿。貴方と出会い、私の魔法は自信と成った。心から礼を言わせてくれ」
凛とした態度のスワロは軽く頭を下げ、またコーヒーに口をつける。
照れたおっさんもまた、誤魔化すようにコーヒーを飲む。
夜が明け朝食を作っていると、匂いでベンゾウが起きてくる。
ハムエッグとトースト、それとサラダ。
食事を済ませるとテントを収納し、また先に進み始める。
どんよりとした怪しい空模様…
しばらく歩くも雲行きは変わらず、高く登ってるはずの陽を遮っていた。
いつ降り出しても良いように、スワロの雨具をネットスキルで購入しておく。
徐々に道脇の木々が増えていき、森が近い事を教えてくれる。
すると先に見える木の根元に、横たわる人影を見つける。
近づくと胸に引っ掻かれた様な傷があり、息をしていなかった。
周りを見渡す惣一郎。
林の中へと枝が折れたり、木々に血の跡が奥へと続いていた。
この遺体の相手だろうか…
草生茂る林の中に入って行くと、またひとり人が倒れており、こちらも酷い傷であったが、まだ息をしている。
「大丈夫か!」
今にも死にそうな男は最後の力を使う様に声を絞り出す。
「た…たのむ… …まが…さらわれ…た…」
その言葉を最後に男は動かなくなった…
何かを引きずった痕跡が林の奥へと続いている。
攫われたこの人の仲間がいる。
ベンゾウがクンクンと匂いを嗅ぎ、痕跡をたどる。
奥へ…
腰まで伸びた草を掻き分け、目的に追い付くと、前方に何かを担いだ三匹のオークがいた。
先頭のオークが傷を負った女性を肩に担ぎ、奥へと向かっている。
「ベンゾウ!」
大声を上げ、注意を引く惣一郎。
すでにベンゾウの姿は消えていた。
振り返る三匹のオークにスワロが炎槍を放つ!
手前オークが火柱を上げ、驚く二匹の隙間を縫う様に銀の疾風が走り抜ける!
一匹は胴と首が三つに崩れ落ちる。
女性を担いだオークが無い足で逃げようとしながら四つに崩れ、投げ出された女性をベンゾウが受け止める。
女性に駆け寄る惣一郎。
息があるのを確認したと同時に、奥で新たなオークが叫びを林に響かせる!
「グオオォォォ!」
その声に数十匹のオークの群れが、惣一郎達を囲む様に現れた!
木々の合間からオークの群れが叫び声を上げ、武器を振りかざし、惣一郎達に襲いかかる!
惣一郎は女性を担ぎ「引きながら応戦するぞ!」っと指示を飛ばす!
惣一郎が女性を抱えたまま、オークの攻撃を左腕で受けると、ベンゾウが首元を切りつけ、疾風となって次のオークの腕を落とす。
たまらず天を仰いで叫ぶオークに、スワロの炎槍が刺さり口から火柱を上げる。
応戦しながら林の中を下がり、開けた場所を探す惣一郎。
乱立する木々の中では、いちいち敵を見失うからだ。
ベンゾウはそんな中を進み、オークの数を減らして行く。
あちこちで火柱を上げるスワロは、すでに10回以上の魔法を放っている!
ポツポツと降り出した雨は次第に強くなり、足音を掻き消す…
女性を担ぐ惣一郎も息を切らしながら飛んでくる矢や斧を、全て左腕で受けていたが、足がもつれ膝を突くと立つ事が出来ず、女性を下ろす。
スワロも走り回りながら炎槍を16発撃った所で発動しなくなり、大きく口を開け肩を揺らす。
残ったオークは二匹となっていたが、その一匹が明らかに他とは違っていた…
ベンゾウがそのうちの一匹を胸を國千代で貫き、國家を最後のラスボスへ向け構えている。
ベンゾウも息が上がっていた…
残った最後の一匹…
他のオークより大きく、胸と腰に髑髏の飾りをつけ、過去の傷を勲章の様に刻む緑の巨人は、両手に剣を握り、仲間全てを殺された怒りが今にも爆発しそうな表情で惣一郎を睨む。
3人と一匹は動かず、いつ開始のゴングが鳴るのかを待っていた…
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