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第四章
二十六話 【嘘は言ってない!】
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このまま素直にアロウの街で裁判を受けるしか方法はないのだろうか…
取り敢えず、怪我をしたという警備隊の様子を確認する事にする惣一郎。
警備責任者に怪我人に謝罪がしたいと面会を希望すると、そのまま医務室へと案内される。
ベッドには傷や打撲で唸る怪我人が8人も寝ていた。
斬られた人がいなくてホッとする…
それぞれに謝罪し、お見舞いとして栄養ドリンクを配り、惣一郎の国のよく効く薬だとスワロに渡し、スワロが怪我人の手当てと傷薬を塗り、打撲には湿布を貼らせ、惣一郎が痛みの強いものには痛み止めの錠剤を飲ませる。
この程度の怪我で済んで良かった…
別れてから数日、惣一郎の食事を摂取していなかったのも吉と出たのだろうか?
ベンゾウも関係無い人を斬るほど馬鹿じゃない…
警備責任者にベンゾウへの面会を再度お願いし、ベンゾウにまた会いに行く。
「ベンゾウ、必ず助けるからな! もう少し我慢だ!」
「ご主人様…」
惣一郎はベンゾウを励まし、痛み止めを飲ませるだけで傷の治療はせずに牢を出る。
スワロとクロを連れ、エリリンテ側の町に宿を取り今後を考える事にする。
宿屋ではクロもいると言う事で部屋は流石に遠慮してほしいと断られた。
だが諦めて帰ろうとしたら、裏の納屋なら使っていいと、惣一郎にもその方が都合もいいので契約する。
納屋でテントを出し入ると、惣一郎の緊張の糸が切れ倒れる。
スワロが慌ててベッドに寝かし看病する。
翌日、多少回復した惣一郎が宿舎を訪れると、4人の騎士と貴族らしい高そうな服の白髪の老人がいた。
「このノイデン共和国の国境で暴れた者を、ここに連れて参れ!」
裁判を行う為、ベンゾウを連行しようと来ていた貴族と騎士だった。
遅れて警備責任者が、ベンゾウを貴族の前に連れてくる。
貴族はそれを見て眉をひそめる…
「この少女が?」
「はい… 8人も怪我人を出しまして…」
傷だらけの少女は痛々しい格好だった。
「その怪我人は何処に?」
「それが…」
現れた被害者8人。
何故か被害者は怪我ひとつしておらず、全員がまだ不思議そうに自分の体を確認していた。
「余を謀ってるのか?」
「いえ決してそのような… そちらの方の薬が… 凄い効き目でして」
助けを求めるように惣一郎を見る警備責任者。
「いえ、いくらなんでも私の薬にそこまでの効果は…」
とぼける惣一郎。
「アロウでは裁判の準備をしているのだぞ?」
警備責任者は慌てて弁解を始める。
「ではノイデン共和国が誇る、屈強な国境警備隊8人が、この少女1人にやられたと、そう言うのだな?」
「い、いえ、いや、しかし…」
もう一押しか?
追い討ちするか…
「私が奴隷に預けた家宝の短剣は、今どちらに?」
「いや… 武器は我々が預かっているが…」
「すぐに持って参れ!」
すぐさま警備隊のひとりが、ベンゾウが所持していた2本の小刀を持って来る。
「なるほど… これは見事! こんな美しい剣は見たことがない」
「よかった… 以前、無理やり奪われそうになった事があったもので。最後まで守ってくれたんだな、ベンゾウ…」
惣一郎も迫真の演技を魅せる。
「ふむ、こちらはお返ししよう… おい! 何をしておる! 今すぐその少女を主人の元へ帰すのだ!」
「ご主人様ぁ!」
泣きながら抱きつくベンゾウを優しく抱き返し、すまなかったと惣一郎もまた涙する…
「奴隷とはいえ、いい関係を築いた様だな… あっぱれ!」
貴族の老人は抱き合うふたりに薄っすら涙を浮かべ語りかける。
「此度の件、誠にすまなかった少女よ。わしからもよく言っておくので、どうか水に流してほしい」
ベンゾウを抱きしめる惣一郎が答える。
「いえ、誤解があったとはいえ今回改めて、ノイデン共和国の国境の厚さを痛感しました。国を守る為、些細な事にも全力で取り組む警備隊のおかげで、ノイデンが平和な国なのだと知ることが出来ました。皆様にも是非恩赦を! では私どもはこれで…」
惣一郎はそのままベンゾウを連れ、エリリンテ側の宿屋へと向かう。
警備責任者は…
何が起こっているのか理解できなかった…
取り敢えず、怪我をしたという警備隊の様子を確認する事にする惣一郎。
警備責任者に怪我人に謝罪がしたいと面会を希望すると、そのまま医務室へと案内される。
ベッドには傷や打撲で唸る怪我人が8人も寝ていた。
斬られた人がいなくてホッとする…
それぞれに謝罪し、お見舞いとして栄養ドリンクを配り、惣一郎の国のよく効く薬だとスワロに渡し、スワロが怪我人の手当てと傷薬を塗り、打撲には湿布を貼らせ、惣一郎が痛みの強いものには痛み止めの錠剤を飲ませる。
この程度の怪我で済んで良かった…
別れてから数日、惣一郎の食事を摂取していなかったのも吉と出たのだろうか?
ベンゾウも関係無い人を斬るほど馬鹿じゃない…
警備責任者にベンゾウへの面会を再度お願いし、ベンゾウにまた会いに行く。
「ベンゾウ、必ず助けるからな! もう少し我慢だ!」
「ご主人様…」
惣一郎はベンゾウを励まし、痛み止めを飲ませるだけで傷の治療はせずに牢を出る。
スワロとクロを連れ、エリリンテ側の町に宿を取り今後を考える事にする。
宿屋ではクロもいると言う事で部屋は流石に遠慮してほしいと断られた。
だが諦めて帰ろうとしたら、裏の納屋なら使っていいと、惣一郎にもその方が都合もいいので契約する。
納屋でテントを出し入ると、惣一郎の緊張の糸が切れ倒れる。
スワロが慌ててベッドに寝かし看病する。
翌日、多少回復した惣一郎が宿舎を訪れると、4人の騎士と貴族らしい高そうな服の白髪の老人がいた。
「このノイデン共和国の国境で暴れた者を、ここに連れて参れ!」
裁判を行う為、ベンゾウを連行しようと来ていた貴族と騎士だった。
遅れて警備責任者が、ベンゾウを貴族の前に連れてくる。
貴族はそれを見て眉をひそめる…
「この少女が?」
「はい… 8人も怪我人を出しまして…」
傷だらけの少女は痛々しい格好だった。
「その怪我人は何処に?」
「それが…」
現れた被害者8人。
何故か被害者は怪我ひとつしておらず、全員がまだ不思議そうに自分の体を確認していた。
「余を謀ってるのか?」
「いえ決してそのような… そちらの方の薬が… 凄い効き目でして」
助けを求めるように惣一郎を見る警備責任者。
「いえ、いくらなんでも私の薬にそこまでの効果は…」
とぼける惣一郎。
「アロウでは裁判の準備をしているのだぞ?」
警備責任者は慌てて弁解を始める。
「ではノイデン共和国が誇る、屈強な国境警備隊8人が、この少女1人にやられたと、そう言うのだな?」
「い、いえ、いや、しかし…」
もう一押しか?
追い討ちするか…
「私が奴隷に預けた家宝の短剣は、今どちらに?」
「いや… 武器は我々が預かっているが…」
「すぐに持って参れ!」
すぐさま警備隊のひとりが、ベンゾウが所持していた2本の小刀を持って来る。
「なるほど… これは見事! こんな美しい剣は見たことがない」
「よかった… 以前、無理やり奪われそうになった事があったもので。最後まで守ってくれたんだな、ベンゾウ…」
惣一郎も迫真の演技を魅せる。
「ふむ、こちらはお返ししよう… おい! 何をしておる! 今すぐその少女を主人の元へ帰すのだ!」
「ご主人様ぁ!」
泣きながら抱きつくベンゾウを優しく抱き返し、すまなかったと惣一郎もまた涙する…
「奴隷とはいえ、いい関係を築いた様だな… あっぱれ!」
貴族の老人は抱き合うふたりに薄っすら涙を浮かべ語りかける。
「此度の件、誠にすまなかった少女よ。わしからもよく言っておくので、どうか水に流してほしい」
ベンゾウを抱きしめる惣一郎が答える。
「いえ、誤解があったとはいえ今回改めて、ノイデン共和国の国境の厚さを痛感しました。国を守る為、些細な事にも全力で取り組む警備隊のおかげで、ノイデンが平和な国なのだと知ることが出来ました。皆様にも是非恩赦を! では私どもはこれで…」
惣一郎はそのままベンゾウを連れ、エリリンテ側の宿屋へと向かう。
警備責任者は…
何が起こっているのか理解できなかった…
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