異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

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第六章

六話 【日常の風景】

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「ベンゾウさん、これどう見ても北に向かってるよね?」

惚けるベンゾウに、太陽が後ろにある事実を突き付ける惣一郎。

この時間東に向かってるなら、太陽は右になくてはいけない。

「クロが… 方向音痴?」

驚き振り返るクロ!

「まぁ、もういいけど… わざわざ危険かも知れない方を選ぶなよ」

惣一郎も正直どっちでも良かったのだが、せめて一言欲しかったのだ。

ぶつぶつ言っていると、誤魔化そうと抱きつき甘えて来るベンゾウさん。

草原の中をのんびり進む荷車に揺られ、北のエルサムロの街を目指す。

ギルドで買った地図ではこの先の林に、湖がある様だ。

距離的にも今日はそこまで進むとクロに伝え、荷台で横になる。



横になりながら惣一郎は苦無を見ていた。

ブロ討伐の時に使った物だ。

苦無と言っても投擲用の、先の尖った金属の棒だ。

忍者が使う苦無の様な、丸いリングも無い。

熱に強いタングステンで探していて、偶然見つけた物であったが、凄く使い勝手が良い。

ククリ刀の円盤で切り裂き、鉄球で殴打し、苦無で刺すと使い分けが出来る。

そこに現れた運の悪い魔獣ギュノ。

猪の魔獣ギュノはクロの行手を阻む様に現れ、クロも立ち止まり牙を剥き唸る。

ベンゾウも立ち上がろうとするが「俺がやるよ!」っと惣一郎が呪羅流眠を握る。

空中で回り出す苦無は、回転をあげ熱を帯びオレンジ色になると、シュッ!とギュノの頭部に刺さり後ろまで貫通する。

やはり使える!

だが、冷めるのを待たなければ行けないのが、欠点でもあった。

ギュノを収納し、また進み始める。



木々が増える頃、空模様が怪しくなっていく。

薄暗くなり遠く雷も聴こえ始める。

こりゃ、この辺りでテントに逃げ込むのが良さそうだと判断し、林の中に急ぎテントを出す。



クロに水をあげていると、テントを叩く様な激しい雨が降り出し始める。

前が見えなくなるほどの豪雨。

テントの中で会話もままならない豪雨に、ちょっとワクワクする惣一郎であった。

すぐ止むと思っていた豪雨は止む気配を見せず、湖まではまだあるが、今日はここで一夜を明かす事にする。

早めの夕飯は、作り置きの野菜たっぷりの中華餡をご飯にかけた中華丼に、お酢をたっぷりかけて食べる。

腹が膨れると、のんびりと自由な時間を過ごす。

クロは仰向けに腹を出し寝ている。

ベンゾウは2本の小刀を前に並べ姿勢良く座りイメージトレーニングでもしている様だった。

惣一郎はネットで買った、役立ちそうな本を読んでいる。

ジュラルミンやタングステンの知識も本による物であった。

雨は深夜まで降り続く。






翌朝、雨はすっかり上がっていたのだが、周りは泥濘んでいた。

軽めに朝食を済まし片付けて旅に戻る惣一郎は、流石にこの泥で荷車は無理と歩いて行く事にする。



少し進むと、道は茶色い湖になっていた。

茶色い湖から木が生えており、先まで続く不思議な光景。

「ありゃ、どうしよう?」

言葉とは裏腹に惣一郎は、この状況も少し楽しんでいる様な表情だった。

周りの木から腰位の深さな気もするが、濁った水で水深は確かではなく考えた末、ネットでゴムボートを購入する!

オール付きのゴムボートに、空気入れも購入して膨らまし始める。

結構な重労働にベンゾウに代わってもらい、ボートに乗り込むと惣一郎が漕ぎ出す。

木々の間を進むゴムボート。

木にぶつからない様にベンゾウが先頭で木の長い棒で舵を取る。

クロは水の上に興奮し、左右を交互に行き来する。

暴れない様に…

濡れながらみんな楽しそうに、逆境の中を進む。





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