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第六章

二十一話 【ロウガの恩返し】

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ギルド内が騒がしく、ざわつき始める。

ジビカガイライの事は受付の子も、噂は聞いていた。

そこに騒ぎを聞き、ハゲ頭で片目の屈強そうな男が現れる。

「何の騒ぎだ!」

眼帯の男に縋る様に、固まっていた受付の子が「マスター!」っと説明を始める。

左側の胸から首、顔、左目と大きな1本の古傷のある怖そうな坊主の男が、ここダンジョンの街のギルドを仕切る、ギルドマスターだった。

ギルマスは話の途中で状況を理解したのか「惣一郎殿ですね?」っと、こちらに話しかけて来た。

「私はこのギルド、ガーデイル支部の責任者で[トルト]と申します。惣一郎殿の事はエリリンテ教国、カーマの町のギルドマスターであるロウガから、話は色々と聞いております。詳しくは部屋の方で……」

誰だっけ?

トルトが2階の部屋へと案内してくれる。

ギルド内は静まり返っていた。

部屋に入ると、豪華なソファーとテーブルが並び「どうぞお座り下さい」とギルマスも腰を下ろす。

「惣一郎殿はコールと言う魔法をご存知ですかな?」

「ええ、離れた相手と話せる生活魔法ですね」

「そうです、だが離れた相手と言っても2~30m程度しか届かない使い所が限られる魔法です。ですが、ある程度強力な魔石を割りその片方づつ魔石のかけらを持つと、驚くほど遠くの相手と話せるのです。ご存じでしたか?」

そんな裏技があるのか!

なるほど元は同じ魔石同士…… 共鳴と指向性を持つ魔石ならではの話だな。

ギルマスは、アルミの様な金属に覆われた赤い石の付いたペンダントを外し、テーブルに置く。

「これは、私のかつての仲間と4つに分けあった魔石でしてね。その一つを惣一郎殿がお救い下さった、エリリンテのカーマの町に住むギルドマスターのロウガが持っておるのです」

「あっ、ツギートの街のギルマスだったロウガさんか! 思い出した思い出した」

「がっははは~! そうですそのロウガです。ロウガ殿はあなたとの約束を破ってまで、各地の仲間に惣一郎殿の助けになる様、伝えて来たんですよ。勿論内緒で。大変感謝してましたよ」

「そうだったんですね……」

ロウガさんグッジョブ!

「ジビカガイライのお強さも聞いております…… 惣一郎殿なら問題は無いでしょうが、ダンジョンは未だよくわかっていない謎の多い魔物です。決して無理だけはしないとお約束頂けるのでしたら、3人で潜る事を許可する様、手を打ちましょう」

「ええ、助かります」

「いえ、私も見てみたいのです。ロウガが言う貴方が、このガーデイルのダンジョンを踏破する所をね」

「ありがとうございます。でも期待はしないで下さい、飽きたらやめるので」

その後、申請許可に3日かかる事など、雑談に花を咲かせ、部屋を出る。

一階に戻ると、恒例のヒソヒソ話が聞こえてくる。

「ヒソヒソ……戻って来たぞ、鉄壁の魔導士が……あのギルマスの優しい喋り方聞いたかよ! よっぽど恐ろしいんだなジビカガイライは……閃光の乙女って、ありゃゴーグルか? 変なの!」

「フゥッーー!!」

ベンゾウを取り押さえてギルドを出る……

ま、これで問題は解決したな! いよいよダンジョンだ。





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