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第十一章

二十話 【夜ふかし】

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汚れたテーブルの上をどかし、座る様に椅子を差し出してくるリーレン。

椅子の数が足らず、惣一郎とリーレンだけが座る。

「で、何の用じゃい」

「実は、こちらの惣一郎様が陣唱紙について話を聞きたく、ワーテイズからわざわざ来たのだが」

「なら、ワシじゃなく、ナリの所に行けばいいじゃろ!」

「ああ、それがナリの消息がわからないんだ」

「フン、奴めまた戦場にでもコソコソと、血を集めに行ってるのじゃろ!」

「血を集めに?」

「何じゃい、お前さん陣唱紙の事を聞きに来たんじゃ無いのかい?」

「ええ、そうですが……」

「フン、何も知らんのか」

惣一郎はベリルの事、陣唱紙で左腕を失くした事を、リーレン達に説明する。

「驚きました…… そんな数の陣唱紙を」

「……お前さん、陣唱紙を作るのに何が必要か知っちょるか?」

「いえ、事前に魔力を込めるので、いつでも誰でも使えるとしか」

「そうじゃ、その魔力を紙に留めておくのに大量の血を必要とするんじゃ、それもエルフのな!」

なるほど、それが廃れた理由か……

「道理で便利な割に誰も使わない訳だ」

「ああ、今じゃ陣唱紙を知ってる者も少ないじゃろう! まして作れるのは奴だけじゃ」

「そのナリって人は、なぜ陣唱紙を?」

「変わっちょるからの~ 奴は失われた古代魔法を研究しとる内に、血を使わず陣唱紙を作れないかと、ずっと研究に籠っておったわい」

「成功したんですか?」

「いや、成功しちょったら大騒ぎしちょるわい。奴は結局血を使わないんじゃなく、威力を上げる方にのめり込んじょった。学者の中でも爪弾きにされ、誰も相手にしなくなったのじゃ」

「なるほど…… まぁ実の所、その人に興味は無く、陣唱紙の効果を打ち消す事が出来ないか位の興味しか無いんですがね」

ナリが生きていれば、ベリルと行動を共にしているだろう。

もしくは利用され、すでに……

「陣唱紙その物についてはサッパリじゃ! 知りたいとも思わん!」

「そうですか、夜分に突然申し訳ない。コレはお礼です」

惣一郎は、ウイスキーのボトルを数本リーレンに渡し家を出る。

遥々ここまで来たが、手がかり無しか……

「お役に立てなかった様で、申し訳ありません。後日、ナリの消息だけでも調べてみますので」

落ち込む惣一郎に、気を使うワークがナリについては調べてくれるそうで、

「ありがとう、助かるよ!」

っと、お礼を言ってテントへ戻る。


テントに戻ると、遅い時間にも関わらずテントの前に人影が見える。

留守番のクロは何を……

爆睡中。

人影は、クオンとエレノイだった。

「どうしたんだ、忘れ物か?」

惣一郎に気付くと、クオンが真面目な顔で!

「惣一郎殿、お願いがあります」

何かを決意した様な、真剣な目だった。

テントに入り、お茶を出す。

正直早く寝たいんだが……

「惣一郎殿、短い間でしたが共に旅ができ、私には大きな衝撃を受ける事ばかりの毎日でした。その経験から人生を見つめ直し、大きな転機として自分が本当にやりたかった事をしてみようと、先程ギルドに連絡を入れ、ギルドマスターを辞める事にしました」

「えっ辞めたの! また急な…… で、そのやりたかった事って何か聞いても?」

「ええ、先程エレノイとも話し合い、一緒に商会を立ち上げようと決意しまして」

「商人か! そりゃまた……」

「そこで、どうしても惣一郎殿にご協力頂きたくて……」

「ああ、そりゃ短い間だが、共に旅した仲間だ! 俺に出来る事なら協力はするが」

「ああ~ ありがとうございます! 良かった~夢が叶います!」

「で、何を協力すれば良いんだ?」

「下着を……」

「断る!」



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