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十二章

十六話【未知との遭遇】

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街が見えなくなるまで歩いた惣一郎は「疲れた~」っと銀の舟を出す。

クロ、ベンゾウ、惣一郎、弁慶の順で乗り込み、右手で理喪棍を握ると、砂の上を浮き出し滑る様に進み出す。

理喪棍にまたがった時とは違い、弁慶に寄りかかる様な姿勢は楽だった。

ベンゾウも惣一郎に寄りかかり、グラビティーに集中している。

クロも理喪棍に触れている為、重さを感じない。

速度も十分出ているが、杖の方が何故かスピードは早かった。

「どうだ弁慶、舟の方が怖くないだろ?」

「アタイの為か!」

後ろから抱きつく弁慶は、目を閉じていた。

クロも、大丈夫そうだ。

南東のオアシスに向け、砂漠を飛ぶ。

迷彩効果か、途中すれ違ったゲーゲートも気付かずやり過ごせていた。

しばらく進むと、魔力に余裕があるうちに、休憩しようと舟を止める。

冷たい風が容赦なく体力を奪う為だ。

舟で正解だな……



砂漠の真ん中にテントを出す。

「コレ、丸見えだよな~」

少し不安な惣一郎だった。

砂漠用も作って置けばよかったかも。

だが、寒さが限界の惣一郎達は、構わずテントに入り、風呂に飛び込む!

「はぁ~ 生き返るな~」

「あったか~い!」

「はぁ~ 気持ち良い!」

湯船で癒される3人だった。

温まった惣一郎は風呂を出て、薪ストーブに火を着け、食事の準備を始める。

キムチ鍋にしよう!

市販のスープに野菜や豆腐、豚肉を大量に投入して一煮立ち!

ハフハフ言いながら、熱々の鍋で温まる。

クロには牛肉を焼き、缶詰のドッグフードをあげる。

寒い砂漠の夜は、風の音しか聞こえなかった。




翌朝、寒さからくっついて寝る3人が起きる。

惣一郎が布団を引っ張り、消えた薪ストーブに火を着けに向かうと、布団を剥がされたふたりが、悲鳴をあげて惣一郎の布団を奪い返そうとする。

布団を奪われた惣一郎は、肌着のまま風呂へ飛び込む。

「ふぁ~ 朝風呂最高~」

熱石のお陰で常に適温の風呂に、改めて感動する惣一郎だった。

次に布団の奪い合いに負けた弁慶が、下着のまま飛び込む。

「ふぁ~ 幸せ~」

するとベンゾウも勝ち取った布団に包まりながら風呂に入ろうとするが、

「それはマジ、やめておけ!」

っと、惣一郎に怒られる。

ベッドに布団を戻し、湯船に浸かると、

「ごめんね、ご主人様」

っと、素直に謝りくっついて来る。

許そう!



あったまった惣一郎がクリーンをかけ、着替えると、朝食の準備を始める。

すると突然、クロが外に向かって吠える。

湯船のふたりも出ようとするが、

「いいよ、俺が見て来る」

っと、惣一郎がテントを出る。

そこには、ゲーゲートを抱えた、大きな巨人が立っていた。

4~5mはあろうか、寒空の中、裸の巨人は不思議そうにテントと惣一郎を見ていた。

「家?」

髭面の原始人の様な巨人の男は、肩に倒しただろうワニを担いだまま、話しかけて来た。

「う、うん……」

「ここに住んでるの?」

「いや、旅の途中だが……」

「へぇ~ そうなんだ~」

呑気な会話に聞こえるが、惣一郎は恐怖していた。

弁慶の倍はあろうか、この巨人!

その三分の一が、顔なのだ!

漫画だ、漫画の原始人だ!

それを実物で生で見ると、恐怖を覚える!

「ゲーゲート食べる?」

巨大なワニの首を掴み片手で差し出す手もデカい!

「だ、大丈夫だ、ありがとう」

すると、ニカっと笑い顔を見せて去って行く。

惣一郎は、姿が見えなくなるまで、後ろ姿を目で追っていた。

遅れて着替えて出てきたふたりが、去った後の大きな足跡で察したのか、惣一郎の向く方を見渡すが、すでに姿はなかった。

砂漠にはまだまだ知らない事が多い様だ。





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