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十三章
十六話 【普通じゃなかった】
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テントで目を覚ます惣一郎。
「「 旦那様! ご主人様! 」」
「マジか…… 俺、気失った?」
「ああ、急にどうしたんだ!」
「いや、それが…… サーチを使ったら」
そこに、セシルがギルマスを連れて戻って来た。
「「 惣一郎殿! 惣一郎様! 」」
「すまん、心配かけて、もう平気だ」
「いったいどうしたんだ! 急に倒れたと聞いて!」
「ああ、新しい魔法を覚えて…… ただのサーチなんだが」
「サーチ? サーチの魔法でどうして」
「分からん、ダンジョンで手に入れた魔導書なんだが…… 唱えた瞬間、凄い量の情報が一気に頭の中に入ってきて、目の前が真っ白に…… 目玉が後ろにひっくり返ったと思ったよ! 町の景色や人、動物も、何もかもが脳に直接情報として流れ込む感じで……」
「ただのサーチで?」
「どう言う事?」
ベンゾウと弁慶は、首を傾げていた。
「初めて使ったが、サーチってこんな脳に負担がかかるのか?」
セシルと目を合わすサーズリが、
「サーチは、自分を中心に直径数十メートルの範囲の中の、生物や壁、建物などの構造など、意識した物を感じ取る魔法だ。それが暴走でもしたのかもしれんな……」
「惣一郎様、どこまで感じ取れたのですか?」
「いや、よく覚えてないんだが、町の外、森の入り口付近の冒険者達も、感じ取るどころか目の前にいる様に鮮明に見えた気もしたんだ……兎に角情報が多過ぎて、一瞬で真っ白に……」
「おいおい、森の手前まで何キロあると思ってるんだ!」
「ただのサーチではないのでしょうか?」
「直ぐに、サーチを使える冒険者をあたってみよう!」
そう言い残しサーズリは、ギルドへ戻って行く。
「すまん、もう大丈夫だ」
起き上がる惣一郎に、ほっとするベンゾウ達。
しばらくすると、テントの外からサーズリが声をかけてくる。
テントを出ると、サーズリが職員の女性を連れて来ていた。
「彼女は、サーチの魔法を使えるそうだ、話を聞けば、何かわかるかもしれない」
「あ、あの、私[ミーリア]と言います。サーチの事をお聞きしたいと聞きまして、私でお役に立てるなら……」
「仕事中に済まん、初めてのサーチで気を失ってしまって」
惣一郎はミーリアに細かく説明する。
「えっ、そんな鮮明に? いえサーチはぼんやりと感じる程度ですよ? 範囲も異常です!」
「俺のは、サーチじゃないのだろうか?」
「魔力は絞れますか?」
「抑える? 意識して範囲を小さくする感じ?」
「試してみましょう!」
するとミーリアが惣一郎の後ろに立ち、
「後ろにいる私にだけ、集中して唱えて下さい」
簡単に言うが、さっきの恐怖が蘇る。
「私の声で、気配は感じますよね! その気配に向けて唱えてみて下さい」
惣一郎は、集中して気配を探る。
なるほど、後ろにいるのはなんとなくわかる。
『サーチ』
すると惣一郎には、後ろのミーリアが短剣を持って構えているのが鮮明に感じ取れる。
「すっげ~な! 目の前に居るみたいだ! 殺意は感じないが右手で短剣を向けて構えてるな……これは……血の匂い?」
「ちょっ、なんでそこまで! 鮮明に見えてるって事ですか?」
「ああ、髪の色も、服も、匂いまで…… 股の間、怪我してるのか?」
「女の子の日です!」
ちょっと殺意を感じた……
その後、目隠しをする惣一郎は、少しずつ範囲を広げ、実験を繰り返す。
「大分慣れてきたな~ 無意識に発動すると情報が多過ぎて混乱するが、見たい物に集中すれば、他の情報もノイズが無くなる様に消えていくよ!」
「そ、そうですか……」
黙って見ていたサーズリも、思わず口を開く。
「異常だな……」
「ええ…… コレはもう、サーチじゃないです」
「えっ! 違うの?」
目隠しをしたまま、ミーリアを見る惣一郎。
「惣一郎さんの異常な魔力量が原因かと……普通じゃないです」
本来サーチは、魔力量で範囲が決まり、その範囲の中を漠然と把握して、見たい物に集中すると、ぼんやりと敵意や危険を感じ取る、そんな魔法なのだが…… デタラメな魔力量の惣一郎には、範囲もデタラメ、見たい物も鮮明に見えるだけじゃなく、細かく息づかいや鼓動、脈打つ血液の流れまで感じ取れたのであった。
初回では、無意識にデタラメな魔力量で使った為、脳が処理できるキャパを大きく超え、防衛本能で活動を停止し倒れたのだろう。
「惣一郎さんのサーチは、普通のとは別物ですね…… 後は暴走しない様に、徐々に慣れて行くしか」
そ、そうですか…… 人を変態みたいに言いやがって。
「ありがとう、練習するよ」
テレキシス同様、サーチもまた、惣一郎にとって相性の良い魔法の様であった。
「「 旦那様! ご主人様! 」」
「マジか…… 俺、気失った?」
「ああ、急にどうしたんだ!」
「いや、それが…… サーチを使ったら」
そこに、セシルがギルマスを連れて戻って来た。
「「 惣一郎殿! 惣一郎様! 」」
「すまん、心配かけて、もう平気だ」
「いったいどうしたんだ! 急に倒れたと聞いて!」
「ああ、新しい魔法を覚えて…… ただのサーチなんだが」
「サーチ? サーチの魔法でどうして」
「分からん、ダンジョンで手に入れた魔導書なんだが…… 唱えた瞬間、凄い量の情報が一気に頭の中に入ってきて、目の前が真っ白に…… 目玉が後ろにひっくり返ったと思ったよ! 町の景色や人、動物も、何もかもが脳に直接情報として流れ込む感じで……」
「ただのサーチで?」
「どう言う事?」
ベンゾウと弁慶は、首を傾げていた。
「初めて使ったが、サーチってこんな脳に負担がかかるのか?」
セシルと目を合わすサーズリが、
「サーチは、自分を中心に直径数十メートルの範囲の中の、生物や壁、建物などの構造など、意識した物を感じ取る魔法だ。それが暴走でもしたのかもしれんな……」
「惣一郎様、どこまで感じ取れたのですか?」
「いや、よく覚えてないんだが、町の外、森の入り口付近の冒険者達も、感じ取るどころか目の前にいる様に鮮明に見えた気もしたんだ……兎に角情報が多過ぎて、一瞬で真っ白に……」
「おいおい、森の手前まで何キロあると思ってるんだ!」
「ただのサーチではないのでしょうか?」
「直ぐに、サーチを使える冒険者をあたってみよう!」
そう言い残しサーズリは、ギルドへ戻って行く。
「すまん、もう大丈夫だ」
起き上がる惣一郎に、ほっとするベンゾウ達。
しばらくすると、テントの外からサーズリが声をかけてくる。
テントを出ると、サーズリが職員の女性を連れて来ていた。
「彼女は、サーチの魔法を使えるそうだ、話を聞けば、何かわかるかもしれない」
「あ、あの、私[ミーリア]と言います。サーチの事をお聞きしたいと聞きまして、私でお役に立てるなら……」
「仕事中に済まん、初めてのサーチで気を失ってしまって」
惣一郎はミーリアに細かく説明する。
「えっ、そんな鮮明に? いえサーチはぼんやりと感じる程度ですよ? 範囲も異常です!」
「俺のは、サーチじゃないのだろうか?」
「魔力は絞れますか?」
「抑える? 意識して範囲を小さくする感じ?」
「試してみましょう!」
するとミーリアが惣一郎の後ろに立ち、
「後ろにいる私にだけ、集中して唱えて下さい」
簡単に言うが、さっきの恐怖が蘇る。
「私の声で、気配は感じますよね! その気配に向けて唱えてみて下さい」
惣一郎は、集中して気配を探る。
なるほど、後ろにいるのはなんとなくわかる。
『サーチ』
すると惣一郎には、後ろのミーリアが短剣を持って構えているのが鮮明に感じ取れる。
「すっげ~な! 目の前に居るみたいだ! 殺意は感じないが右手で短剣を向けて構えてるな……これは……血の匂い?」
「ちょっ、なんでそこまで! 鮮明に見えてるって事ですか?」
「ああ、髪の色も、服も、匂いまで…… 股の間、怪我してるのか?」
「女の子の日です!」
ちょっと殺意を感じた……
その後、目隠しをする惣一郎は、少しずつ範囲を広げ、実験を繰り返す。
「大分慣れてきたな~ 無意識に発動すると情報が多過ぎて混乱するが、見たい物に集中すれば、他の情報もノイズが無くなる様に消えていくよ!」
「そ、そうですか……」
黙って見ていたサーズリも、思わず口を開く。
「異常だな……」
「ええ…… コレはもう、サーチじゃないです」
「えっ! 違うの?」
目隠しをしたまま、ミーリアを見る惣一郎。
「惣一郎さんの異常な魔力量が原因かと……普通じゃないです」
本来サーチは、魔力量で範囲が決まり、その範囲の中を漠然と把握して、見たい物に集中すると、ぼんやりと敵意や危険を感じ取る、そんな魔法なのだが…… デタラメな魔力量の惣一郎には、範囲もデタラメ、見たい物も鮮明に見えるだけじゃなく、細かく息づかいや鼓動、脈打つ血液の流れまで感じ取れたのであった。
初回では、無意識にデタラメな魔力量で使った為、脳が処理できるキャパを大きく超え、防衛本能で活動を停止し倒れたのだろう。
「惣一郎さんのサーチは、普通のとは別物ですね…… 後は暴走しない様に、徐々に慣れて行くしか」
そ、そうですか…… 人を変態みたいに言いやがって。
「ありがとう、練習するよ」
テレキシス同様、サーチもまた、惣一郎にとって相性の良い魔法の様であった。
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