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十四章

二話 【惣一郎の試練】

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「ベンゾウ! 弁慶! 大丈夫か!」

舟を海に浮かせ、ふたりに寄せる。

「旦那様! ベンゾウ殿が!」

惣一郎はふたりを引き上げ、クリーンをかける。

ベンゾウは気を失っていた。

そのまま舟を宙に浮かせ、揺れを無くす。

「ベンゾウ! ベンゾウ!」

息はあるが、意識が戻らない。

「何があったんだ弁慶」

「それが急に甲板で気を失い、そのまま海へ。慌ててアタイも飛び込んだんだが」

「そうか…… ありがとう弁慶! 一先ず船に戻ろう」

先に気を失っていたから、水を飲まなかったのだろう……

そのまま上空まで上がると暗い海を見渡し、船を探す。

遠くに灯りがぼんやりと見え、向かうと船の上でみんなが松明を掲げていた。

甲板に降りると舟を収納し、ベンゾウを部屋のベッドに運ぶ。

船員は惣一郎の幻腕に、また驚く。

セシルやリヴォイ達も、心配そうに見ていた。

「弁慶、詳しく話してくれ」

「それが、アタイにも…… 甲板で立っていたベンゾウ殿が、急にふらっと気を失う様に海に落ちたんだ。特に何をしてた訳でもないんだが」

するとリヴォイが、

「もしかして、シグラルの血を飲んだのでは!」

「返り血ならアタイも浴びたぞ!」

「待て待て、毒なのか?」

「はい、シグラルの血は少量で気を失う事があるそうです。痛みを伴う怪我などの時に使われる事も」

「麻酔か? まぁ、毒なら話は早い!」

惣一郎はベンゾウに、キュアをかける。

ケホッ! ケホ!

「良かった……」

「……ご主人様?」

「弁慶に、ちゃんとお礼を言えよ!」

「……弁慶に?」

説明を弁慶に任せて、惣一郎は甲板に戻る。



「みんな、騒がせてしまい、すまなかった! コレはお礼だ、遠慮なく飲んでくれ!」

惣一郎はそう言うと、酒を樽で出す。

大喜びの船乗り達。

すると船員のひとりが、

「あの…… あの子、もしかしてシグラルの血で?」

「ああ、らしいな。キュアをかけたので、もう大丈夫だ。心配かけたな」

「いえ、きっと俺らのせいだ! あの子は……」

まぁ、ベンゾウも初めての魔獣だろうしな~ アイツの斬るスタイルでは、相性も悪かったのだろう。

「なに、気にする事はないよ! 助かったんだし! 大方、返り血でも口に入ったのだろう」

「いや、違うんだ…… もっとちゃんと説明すれば良かったんだ……」

「説明? なんの話だ?」

「ちゃんと、食べられないって説明すれば良かったんだ!」

食ったのか…… あのアホ!

惣一郎は、船員達に更に謝り、おつまみにと、酒に合う食べ物を並べた。

客室に戻る惣一郎には、ツノが生えていた。






船は穏やかな海を、力強く進んで行く。

揺れは小さいが、惣一郎にはキツイ揺れで、青ざめた顔は、食事も摂れない程であった。

「旦那様…… 何か食べないと」

「うぅ……」

「ご主人様、モグモグ、ちゃんとモグモグ食べないと、モグモグ体力なくすよ!」

「うぅ……(後でコロス!)」

もうずっと浮いていようかと、本気で考える惣一郎だった。

なんでコイツらは平気なのだろうか……

「惣一郎さん、いっその事、シグラルの血を飲んでみますか? 良く眠れるかも知れませんよ!」

怖い事を言う……

だが、まだコーライ大陸に着くまで一週間近くかかる。

惣一郎は本気で、昏睡状態になってもいい気がして来た……



十日目。

船長が「気休めだが!」っと船乗りに伝わる酔い止めの薬を作ってくれた。

もっと早くに欲しかった……





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