288 / 409
十四章
二話 【惣一郎の試練】
しおりを挟む
「ベンゾウ! 弁慶! 大丈夫か!」
舟を海に浮かせ、ふたりに寄せる。
「旦那様! ベンゾウ殿が!」
惣一郎はふたりを引き上げ、クリーンをかける。
ベンゾウは気を失っていた。
そのまま舟を宙に浮かせ、揺れを無くす。
「ベンゾウ! ベンゾウ!」
息はあるが、意識が戻らない。
「何があったんだ弁慶」
「それが急に甲板で気を失い、そのまま海へ。慌ててアタイも飛び込んだんだが」
「そうか…… ありがとう弁慶! 一先ず船に戻ろう」
先に気を失っていたから、水を飲まなかったのだろう……
そのまま上空まで上がると暗い海を見渡し、船を探す。
遠くに灯りがぼんやりと見え、向かうと船の上でみんなが松明を掲げていた。
甲板に降りると舟を収納し、ベンゾウを部屋のベッドに運ぶ。
船員は惣一郎の幻腕に、また驚く。
セシルやリヴォイ達も、心配そうに見ていた。
「弁慶、詳しく話してくれ」
「それが、アタイにも…… 甲板で立っていたベンゾウ殿が、急にふらっと気を失う様に海に落ちたんだ。特に何をしてた訳でもないんだが」
するとリヴォイが、
「もしかして、シグラルの血を飲んだのでは!」
「返り血ならアタイも浴びたぞ!」
「待て待て、毒なのか?」
「はい、シグラルの血は少量で気を失う事があるそうです。痛みを伴う怪我などの時に使われる事も」
「麻酔か? まぁ、毒なら話は早い!」
惣一郎はベンゾウに、キュアをかける。
ケホッ! ケホ!
「良かった……」
「……ご主人様?」
「弁慶に、ちゃんとお礼を言えよ!」
「……弁慶に?」
説明を弁慶に任せて、惣一郎は甲板に戻る。
「みんな、騒がせてしまい、すまなかった! コレはお礼だ、遠慮なく飲んでくれ!」
惣一郎はそう言うと、酒を樽で出す。
大喜びの船乗り達。
すると船員のひとりが、
「あの…… あの子、もしかしてシグラルの血で?」
「ああ、らしいな。キュアをかけたので、もう大丈夫だ。心配かけたな」
「いえ、きっと俺らのせいだ! あの子は……」
まぁ、ベンゾウも初めての魔獣だろうしな~ アイツの斬るスタイルでは、相性も悪かったのだろう。
「なに、気にする事はないよ! 助かったんだし! 大方、返り血でも口に入ったのだろう」
「いや、違うんだ…… もっとちゃんと説明すれば良かったんだ……」
「説明? なんの話だ?」
「ちゃんと、食べられないって説明すれば良かったんだ!」
食ったのか…… あのアホ!
惣一郎は、船員達に更に謝り、おつまみにと、酒に合う食べ物を並べた。
客室に戻る惣一郎には、ツノが生えていた。
船は穏やかな海を、力強く進んで行く。
揺れは小さいが、惣一郎にはキツイ揺れで、青ざめた顔は、食事も摂れない程であった。
「旦那様…… 何か食べないと」
「うぅ……」
「ご主人様、モグモグ、ちゃんとモグモグ食べないと、モグモグ体力なくすよ!」
「うぅ……(後でコロス!)」
もうずっと浮いていようかと、本気で考える惣一郎だった。
なんでコイツらは平気なのだろうか……
「惣一郎さん、いっその事、シグラルの血を飲んでみますか? 良く眠れるかも知れませんよ!」
怖い事を言う……
だが、まだコーライ大陸に着くまで一週間近くかかる。
惣一郎は本気で、昏睡状態になってもいい気がして来た……
十日目。
船長が「気休めだが!」っと船乗りに伝わる酔い止めの薬を作ってくれた。
もっと早くに欲しかった……
舟を海に浮かせ、ふたりに寄せる。
「旦那様! ベンゾウ殿が!」
惣一郎はふたりを引き上げ、クリーンをかける。
ベンゾウは気を失っていた。
そのまま舟を宙に浮かせ、揺れを無くす。
「ベンゾウ! ベンゾウ!」
息はあるが、意識が戻らない。
「何があったんだ弁慶」
「それが急に甲板で気を失い、そのまま海へ。慌ててアタイも飛び込んだんだが」
「そうか…… ありがとう弁慶! 一先ず船に戻ろう」
先に気を失っていたから、水を飲まなかったのだろう……
そのまま上空まで上がると暗い海を見渡し、船を探す。
遠くに灯りがぼんやりと見え、向かうと船の上でみんなが松明を掲げていた。
甲板に降りると舟を収納し、ベンゾウを部屋のベッドに運ぶ。
船員は惣一郎の幻腕に、また驚く。
セシルやリヴォイ達も、心配そうに見ていた。
「弁慶、詳しく話してくれ」
「それが、アタイにも…… 甲板で立っていたベンゾウ殿が、急にふらっと気を失う様に海に落ちたんだ。特に何をしてた訳でもないんだが」
するとリヴォイが、
「もしかして、シグラルの血を飲んだのでは!」
「返り血ならアタイも浴びたぞ!」
「待て待て、毒なのか?」
「はい、シグラルの血は少量で気を失う事があるそうです。痛みを伴う怪我などの時に使われる事も」
「麻酔か? まぁ、毒なら話は早い!」
惣一郎はベンゾウに、キュアをかける。
ケホッ! ケホ!
「良かった……」
「……ご主人様?」
「弁慶に、ちゃんとお礼を言えよ!」
「……弁慶に?」
説明を弁慶に任せて、惣一郎は甲板に戻る。
「みんな、騒がせてしまい、すまなかった! コレはお礼だ、遠慮なく飲んでくれ!」
惣一郎はそう言うと、酒を樽で出す。
大喜びの船乗り達。
すると船員のひとりが、
「あの…… あの子、もしかしてシグラルの血で?」
「ああ、らしいな。キュアをかけたので、もう大丈夫だ。心配かけたな」
「いえ、きっと俺らのせいだ! あの子は……」
まぁ、ベンゾウも初めての魔獣だろうしな~ アイツの斬るスタイルでは、相性も悪かったのだろう。
「なに、気にする事はないよ! 助かったんだし! 大方、返り血でも口に入ったのだろう」
「いや、違うんだ…… もっとちゃんと説明すれば良かったんだ……」
「説明? なんの話だ?」
「ちゃんと、食べられないって説明すれば良かったんだ!」
食ったのか…… あのアホ!
惣一郎は、船員達に更に謝り、おつまみにと、酒に合う食べ物を並べた。
客室に戻る惣一郎には、ツノが生えていた。
船は穏やかな海を、力強く進んで行く。
揺れは小さいが、惣一郎にはキツイ揺れで、青ざめた顔は、食事も摂れない程であった。
「旦那様…… 何か食べないと」
「うぅ……」
「ご主人様、モグモグ、ちゃんとモグモグ食べないと、モグモグ体力なくすよ!」
「うぅ……(後でコロス!)」
もうずっと浮いていようかと、本気で考える惣一郎だった。
なんでコイツらは平気なのだろうか……
「惣一郎さん、いっその事、シグラルの血を飲んでみますか? 良く眠れるかも知れませんよ!」
怖い事を言う……
だが、まだコーライ大陸に着くまで一週間近くかかる。
惣一郎は本気で、昏睡状態になってもいい気がして来た……
十日目。
船長が「気休めだが!」っと船乗りに伝わる酔い止めの薬を作ってくれた。
もっと早くに欲しかった……
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
1,857
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる