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十四章

七話 【ナイトゲーム】

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惣一郎の願いも虚しく、夢に男は現れずに朝を迎える。

絡みつくベンゾウと弁慶を外し、ベッドを出ると、テントの外でセシルが朝日に祈りを捧げていた。

「おはよ」

「おはようございます。惣一郎様」

「朝から熱心だな」

「長年の習慣でして、つい」

「あれから神様は、なんか言って来たか?」

「神? ああ、いえ、沈黙されたままですね。これは朝を迎える事が出来た、感謝の祈りです」

「ふ~ん」

惣一郎はセシルの答えに、はなから期待していなかった様に、そのまま朝食の準備を始める。

セシルも当たり前の様に、手伝い出す。

食パンにバターを塗って、フライパンで押し潰しながら焼いていく。

サラダと、インスタントのコーンスープ。

バターを染み込ませた薄いトーストは、香ばしい匂いで、みんなを起こす。



朝食を終えるとテントを仕舞い、先を急ぐ。

遠くに山が見える荒野を、リヴォイ達が乗る馬の後を付いて行く、クロの荷車。

何事もなくしばらく進むと、前方から近づいて来る砂煙が見える。

鎧を着た、騎士の一団であった。

「旅の者か! これより先は厄災が出現しており危険だ! 引き返しなさい!」

「我々は、厄災討伐の依頼を受けたジビカガイライの方々をご案内している! 厄災の詳しい所在を知りたい!」

騎士の一団に臆する事なく、堂々と応えるリヴォイであった。

「では、あなた方が! 報告は受けております!」

騎士団のリーダーだろう男が、前に出て馬を降りる。

「私は、ザザンド国[鋼犀騎士団]の団長[ピヌマ]と申します。 先日ギルドから厄災への対処法の連絡が入り[グラマラの葉]を燃やし煙で見事誘導に成功しまして、現在、後方約20km付近を軍が、ポートス目指し誘導中です」

賢王の所で見た植物の事だろう。

ギルドが本腰で、情報を集め出した結果であった。

「ダスコールの村人は! 今何処に!」

「避難させた方々は全て、南東の[ガニスの街]に避難して頂いています。ダスコールの方々もそちらに!」

そう告げると団長は仲間に手を挙げ、ここ荒野のど真ん中で、迎え撃つ準備を始める。

リヴォイ達も故郷の人々の無事を確信し、

「惣一郎さん! ここなら周りに被害も出ない。ここで迎え討ちましょう!」

っと、騎士達と準備を始める。

まぁ確かに、ここなら被害も出ないが…… コイツら全員ギャラリーって事か?

試合会場を準備するスタッフの中、対戦者を待つ格闘家の気分であった。

「なぁ、団長さん! どの位で着きそうだ?」

「コールで常に連絡を取り合っていますが、風向きにも大きく左右される為、おおよそですが、夕刻から朝方には着くと思われますが……」

「なるほど、了解」

ギルドから連絡は受けていたが、惣一郎を目の前にしてピヌマは正直、不安を覚えていた。

惣一郎もテントを出し、リヴォイに近くに来たら教えてと、中に入って行く。




「旦那様、またあの毒を噴き出す魔導具を使うのか?」

テントの中で、お茶を淹れながら弁慶が聞いてくる。

「いや、今回は薬が無い。まぁ普通の駆除剤でも効くとは思うが、単体ならゴリ押しで行けるだろう」

「ああ、アタイの侃護斧で潰してやる!」

「ベンゾウの番でしょ! ベンゾウが國家達とバラバラにするの!」

「いやベンゾウ! 今回は未知の厄災だ、油断せず3人で一気に行くぞ!」

惣一郎達は、武器の手入れをしながらお茶を飲み、その時を待つ事にする。



陽が落ち辺りは暗くなって来た。

うどんとおにぎりを食べながら、待ちくたびれていると、サヴォイがテントへやって来る。

「惣一郎さん、今連絡が入ったそうですが、風向きが変わってしまい、誘導に難航してるそうですよ! 着くのは深夜になりそうです」

「そうか、暗いとやりづらいな~」

サヴォイにうどんを出しながら愚痴ると、

「あっ、それは大丈夫ですよ! 騎士の方々に数人、ライトの魔法持ちがいるそうですから」

なるほど、ナイトゲームか……

遅れてリヴォイもやって来る。

「惣一郎殿! なんでもギルドの指示を無視した輩が、厄災にちょっかい出しに向かってるそうです!」

「ん? ちょっかい?」

ギルドが惣一郎に、特別依頼をしてるのが面白くない連中がいるそうだ。

「自分達の方が冒険者として、上だと思っている、上位ランカーと呼ばれていたチームのうちの一つ[ゴリラング・ログ]が、昨夜このザザンドに入ったそうで、一応注意する様にと連絡が」

「ゴリラング・ログだって! 惣一郎さん、バリバリの武闘派チームですよ」

また面倒そうだな……




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