異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付

文字の大きさ
300 / 409
十四章

十四話 【冒険者のプライド】

しおりを挟む
急ぎ街を出た惣一郎達。

だが出てすぐにまた面倒な雰囲気が流れ出す。

ザザロウに入る前に出会った冒険者が、馬車と馬に乗り凄い形相で向かってくる。

「飛んで逃げるか……」

「あの顔、ずっと追いかけて来ますよ」

「だよな~」

「キサマーーー! よくも謀ったな!」

女冒険者が怒りまくって杖を振り回す。

馬を降り言い寄る女に、弓を背中に担いだエルフが「[エル]やめなさい!」っと、止めようとする。

「止めるなゴザ! 此奴、嘘をいいおって!」

血の気の多い女性だ。

その女の頭を掴み、持ち上げる弁慶。

「キサマ! 旦那様を嘘つき呼ばわりするとは!」

「痛い痛い痛い!」

遅れて馬車が止まり、中から歴戦の猛者を思わせる黒髪に前髪だけ白髪の女性が降りて来る。

「よさぬか! エル」

軽装の鎧にスカートから伸びる脚には、赤い金属の脛当てが目立つこの女性、40前後だろうか惣一郎のど真ん中を射抜いていた。

「でも団長!」

「うちの者が済まない! 私はチーム、ゴリラング・ログの団長を努める[ツナマヨ]と言う」

「素敵なお名前ですね♡ えっ? ツナマヨ?」

「流石に知れているか、ギルドでもそれなりに名が通っているからな」

いやいや、元の世界でよく聞く名前で……

「初めまして、美しいおねえ様! わたくしジビカガイライの惣一郎と申します! ここであったのも何かの縁、お茶でも飲みませんか?」

すぐさま荷車を降りてテーブルを出す惣一郎。

ベンゾウはおでこに手を置いて肩を落とす。

あちゃー

「何がお茶だ! 離せ! デカ女! イタタタタタタ!」

「弁慶さん、うるさいからそんなの捨ててきなさい! ささ、ツナマヨ様! こちらへ」

驚いた顔のセシルが「誰ですか、あの人は?」っと惣一郎を見る。

馬車から大男と長い剣を持った少年も降りて来て、異常な光景に固まる。

惣一郎はやかんに入った水出しの麦茶と人数分のコップをセシルに渡すと、自分のテーブルには豪華なティーセットで淹れた紅茶を注ぐ。

「いや~ こんな所で噂に名高いツナマヨ様にお会いできるなんて、これはもう運命ですかね~」

「えっ、いや、我々が追いかけて来たんだが……」

困惑する団長の顔がやや赤い。

「いだ!」

手から力が抜けローブの女を落とす弁慶。

「旦那様! また発作か!」

落ちたエルは尻を摩りながら、

「オイ! ジビカガイライ! よくも嘘を教えてくれおって! 行ったら既に厄災は解体されておったぞ!」

「ご主人様は場所を聞かれて教えただけだよ」

「そ、それならそれで普通言うじゃろ! もう倒した後だとか」

すると団長のツナマヨがため息を吐き、

「やはりエルの早とちりか。まずは故郷の礼を言わないとだな。我らの故郷ザザンドを救ってくれ感謝する」

「そんな、お礼だなんて結婚し「ご主人様! いい加減にするの!」モゴモゴ!」

ベンゾウに口を塞がれた惣一郎は、そのまま弁慶に抱き抑えられ浮き上がる。

「彼は大丈夫なのか?」

「なんでもないよ! ちょっと発作が!」

「プハ! 何が発作だ! 離せ弁慶!」

「話を続けても良いのか?」

するとまだ地面に尻を置くエルと言うローブの女が、

「団長! こんなふざけた奴、もうやっちゃいましょうよ!」

っと威嚇する。


「ほぉ~ 何をやっちゃうんだ?」

弁慶の惣一郎を抱く腕に力が入る。

ケフォ!っと息を漏らす惣一郎。

「よさんかエル! 済まない! 我々もこの国が厄災の被害にあると聞いて急ぎ帰国したのだが、ギルドが特例で厄災討伐を依頼した冒険者がいると聞いてな。しかもクランではなく、たった1チームに! 我らも長年冒険者としてやって来たが、故郷の危機にまさか我らではなく、新参者のチームに依頼するとはギルドもやきが回ったのだと追いかけて来たんだが…… まさか本当に厄災を倒してしまうとは」

「そうでしたか、僕を心配して追いかけて来てくれるなグフッ! く、くる…し……い」

「まぁ、我々のプライドが傷ついただけで、故郷は無事に済んだのだ、改めて礼を言うよ」

「ど…う……いたし…ま…して」

「団長! いいんですかこのままで!」

「ああ、誰が倒しても良いではないか、救われる者がいれば!」

「「「 団長~ 」」」

「騒がせて済まなかったな! 惣一郎。だが次は負けんぞ! 我らも厄災討伐を目標に行くのでな!」

するとセシルが、

「では、あなた方もゼリアオールスへ?」

「「 馬鹿! 」」

慌ててセシルの口を塞ぐベンゾウ。

だが遅かった。

「ほぉ~ 次は旧ゼリアオールスか!」

弁慶が慌てて惣一郎に助けを求めるが、腕の中で泡を吹いていた。

「旦那様!」

「決めた、決めたぞ! 惣一郎よ! 我らゴリラング・ログはジビカガイライに付いていくぞ!」

「「 旦那様~ ご主人様~! 」」

「えっ…… 団長?」




しおりを挟む
感想 67

あなたにおすすめの小説

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

処理中です...