上 下
299 / 409
十四章

十三話 【夜の長話】

しおりを挟む
夕食を終えるとセシルが、サーズリと連絡とり始める。

その間に惣一郎は、ベンゾウと弁慶にまた依頼の話があった事を話す。

「っと言うのだが、遠いしまた船での移動になりそうなんだ」

「ご主人様、ゼリアオールスって、確か前に一緒にダンジョンに入った……」

「あっ! そうだ! 聞いた事ある気がしてたんだ、ビルゲンだ、ビルゲンの故郷って言ってたな!」

「魔族が多い国と聞いた事があるぞ、アタイも」

「ん? もしかしたら、またダンジョンから一か八か飛べるんじゃないのか?」

「旦那様そりゃ博打だぞ!」

「ケラケラケラ」

「惣一郎様! サーズリ殿が直接お話がしたいそうなんですが」

そう言うとセシルが、ブローチを渡して来て、面倒臭そうに受け取る惣一郎。

『もしもし』

『もし? 惣一郎殿か?』

『ああ、すまん! 話は聞いたよ、だが遠くて間に合いそうも無いぞ』

『惣一郎殿、まずは此度のザザンド国からの依頼、無事達成された事、心から感謝します。近日中に話も広がり、ザザンドもお祭り騒ぎになるでしょうな! 今回の厄災討伐の話が広がれば、今後至る所から、ギルドへ依頼の話も来る事でしょう。そこで、ギルド本部はジビカガイライを特級冒険者と認め、極秘施設利用の許可が出たのです!』

『ん~ 聞いてる? 間に合わんぞ!』

『ええ、その話です! その許可が出た極秘施設とは、転移魔法が使える施設なのです。数は多くありませんが、ザザンドの王都にあるギルドにもございます。そこまで行けば旧ゼリアオールスへも一瞬で移動出来ます』

『転移! ダンジョンのか!』

『ええ、古代魔法の残りですが、ギルドが極秘に守り、受け継いできた物です。極秘ですので、何卒他言はしない様お願いします』

『それは凄い! 船に乗らなくて良いなら依頼受けても良いぞ!』

『あっはははは! 厄災と戦うより船ですか! 流石は惣一郎殿だ! 安心して下さい、ダンジョンの転移魔法陣と違い、ちゃんと目的地へ飛べますので! ただ何度も申し訳ありませんが、ギルドでも関係者以外極秘となっております、呉々も御内密にお願いします!』

『ああ、だが、あちこちで俺らが厄災倒してたらいずれバレるんじゃないか?』

『そこは、惣一郎殿個人のスキルなり魔法という事でお願いします。要はギルドが持っていると思われない様に! 使い方では兵器にもなりうる代物ですので』

『了解した! 約束は守るよ。早速明日にでも王都へ向かうが、肝心の厄災の情報は?』

『ええ、ゼリアオールスは最近まで国王が病で伏せており、次期王位を継ぐ者を選抜する事で争いが絶えない国でした。あの国は血縁から王位を認めない珍しい国でしたので。その争いの中候補者のひとりが、古代魔法を悪用し禁忌を犯したとされています。王都を壊滅させた召喚魔法は、空を飛ぶ大きな脚を持つ厄災を数多く解き放ってしまったのです。厄災は、物凄い食欲で王都を食い尽くし、近隣の街や村までもが次々と地図から消えていってるそうです』

『なるほど、バッタか』

『ご存じで!』

『いや、見て見ない事には確証は無いんだが、何とかなるかもしれん』

『おお~ 流石、惣一郎殿! 奴らは街を襲い腹が膨れるとしばらく動かなくなります! ですが目覚めると数を数倍に増やし、今では空を覆い尽くす量に、このままでは旧ゼリアオールスだけの問題ではなくなると、隣国が揃って依頼をして参りました』

『そんな増えたのか! 急がないと』

『今はまた、休眠期に入っているそうで、住民の避難をする時間はあるそうですが、予測がつかない動きをするとの事で、ゆっくりもしていられません。それも踏まえての今回の特級認定だったのでしょう』

『なるほど、転移利用はどの道助かる! なるべく急ぐとするよ!』

『どうかお気を付けて! よろしくお願いします…… 以上』

『ああ、また情報が入ったらセシルに連絡頼むよ! 以上』

惣一郎はみんなに、明日の朝、王都に行く事を伝える。

セシルにその事をシーバサキにも伝え、王都までの道を聞きに行く。




翌朝、朝食を済ませた惣一郎達はテントを片し、中庭を出ようとすると、この街の冒険者達が揃ってベンゾウと弁慶に、特訓をお願いして来た。

「姐さん! 今日も特訓お願いします!」

「聞きましたよ! この国を救った英雄だったなんて!」

「俺たち、貴重な体験をしたんだな~って!」

「俺たちにも、ご指導お願いします!」

姐さん呼ばわりに、まんざらでも無いベンゾウがクネクネ照れていると、弁慶が、

「悪いが、先を急ぐ! どけ!」

っと、全然悪そうじゃ無い弁慶が、次々と冒険者を投げ飛ばして道を作って行く。

訓練が始まったと勘違いした冒険者は、武器を構え、襲いかかってくる。

朝からカオスだった……

惣一郎は、倒れた冒険者の前に栄養ドリンクを1本ずつ置いていきながら、申し訳なさそうに弁慶の後を追う。



上の受付に出ると、シーバサキが見送りに出て来てくれた。

「皆さん、本当に短い間でしたが、この国を、この街をお救い下さり、心より感謝申し上げます!
これは街からのお礼の品です。街の最高の職人が、最高の素材で作った、魔銀の杖です。どうか旅のお役に立てれば」

「ありがとう、世話になったな! 今度はゆっくり遊びに来るよ!」

「ええ、お待ち申し上げております」

惣一郎達はクロの荷車に乗り込み街を出る。

進路は、南東にあるザザンド国王都へ。





しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【ショートショート】このあと二人は付き合いました

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

貴方へ愛を伝え続けてきましたが、もう限界です。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,764pt お気に入り:3,808

悪役令嬢になったようなので、婚約者の為に身を引きます!!!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:944pt お気に入り:3,275

私は神に愛された歌姫だった

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:49pt お気に入り:8

転生不憫令嬢は自重しない~愛を知らない令嬢の異世界生活

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:28,749pt お気に入り:1,873

処理中です...