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第十六章

二十九話 【浮かぶ厄災の謎】

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セシルがサーズリに、討伐完了の連絡を入れる。

「惣一郎様、報告は終わりましたがフロスト諸島へ向かったチームが、まだ着かないそうです」

「ありゃ、遠いのか?」

「みたいですね。馬車で向かっているそうなのですが……」

俺も向かった方がいいだろうか?

ドノレイが兜を取り頭を下げる。

「助かりました感謝します。多くの犠牲も出しましたが、この位で済んだのも、ジビカガイライのおかげです。しかし……」

「しかし?」

「ここ最近世界中で、厄災の被害が増える一方です。この国に現れたのも数百年ぶりだと言うのに」

確かに多い気もするが、惣一郎にはもっと納得いかない事があった。

天敵のいないこの世界で厄災は、卵を産みなぜ増えないのか……

「今回の厄災は、先日ザザンドに現れた厄災の卵が孵った幼体だと思うけど、今まで厄災が卵で増える事は無かったのか?」

「卵が? 厄災が増えると言う事ですか?」

あれ?

「セシル、サーズリに厄災について詳しい者を紹介してもらってくれ」

「はい!」

この世界で脅威とされる厄災。

古代魔法による召喚……

一体何処から来るのか、何故急に現れ人を襲うのか……

そして何故急に増えたのか……

今まで当たり前のように依頼を受け、倒して来た惣一郎だが、ここに来て初めて、厄災について詳しく調べようと心に決める。





雨脚が強くなる中、馬車と11頭の騎馬隊がゴミヤの街を目指していた。

「団長! 陽が暮れ始めて来たぜ。そろそろ馬も休ませないと」

「仕方あるまい! 馬を休ませるぞ」

すると、並走するアザが、

「いえ、ここから少し先に[トチカの村]がある! そこまで行ければ代わりの馬がいるはずだ」

「馬を代えれば、そのまま休まず行けるな団長」

「ああ、馬には悪いが、もう少し頑張ってもらおう」

「おい、休憩しないのか!」

「今は先を急ごう」

「体が固まっちまうぜ」

「我慢するしかないの~ 雨に濡れるのもやじゃし…… そうじゃ! 惣一郎様に頂いた雨具があるではないか!」

「何だそりゃ?」

「惣一郎様に頂いた魔導具じゃ! これを羽織ると、雨に濡れんのじゃ!」

「マジか! 貸してくれよ」

「大事に扱うか?」

「ああ、任せとけ!」

ミコはエルのカッパを借りると、馬車の屋根に出る。

「すっげ~ 雨を寄せ付けねぇじゃね~か!」

「これで少しは静かになるじゃろう」

エルの計らいに感謝するガブガとガオ。

「すまんな……」

「ガオ……」






惣一郎達はドノレイ達と別れ、施設のあるサイの街に戻ろうと、荷車を走らせていた。

「惣一郎様、サーズリの話では、厄災について研究をしている者がいるそうです」

「良かった、やっぱりいたか。後で会う段取りを付けてもらってくれ」

「それが……」

「ん?」

「それが、ギドなんです」

「あら、厄災の島の施設長か! まぁ不思議はないな、もっと早く気付けば良かった。じゃ戻ったら聞いてみるか!」

「フロスト諸島の方はどうしますか?」

「そうだな~ 街の避難は済んでるんだろ?」

「ええ、幸い向こうは雨で、厄災も大人しくしているそうなんですが、その雨のせいでグラマラの煙を出す事が出来ない状態です。雨が止んだら厄災がどう出るか」

「そっか~ じゃ俺だけでも応援に飛んだ方がいいかな~」

「ベンゾウも行く!」

「そうだな、じゃ弁慶! みんなと島に戻っててくれるか? 俺とベンゾウは、先にフロスト諸島に向かうよ!」

「わかった…… 旦那様、気をつけてな!」

「ああ、何かあればセシル、コールで連絡してくれ」

「はい!」

惣一郎はベンゾウを理喪棍に乗せると、先にサイの町へと飛んで行った。

「良かったのですか? 弁慶さん」

「ああ…… 一緒に行きたいが、飛ぶのはな……」






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