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第十六章
三十二話 【ゴミヤの街】
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「心配してたが雨はすぐには止まなそうだな」
夜の空で雨を弾くほうき星は、先を走るツナマヨ達をすぐに捉える。
真っ暗な林の中を突っ走る4頭の馬。
道らしいものはあるが、それでも暗い中よく走れると感心する惣一郎。
後ろから追い付くと、すぐにミコに気付かれる。
「旦那か! 何だよもう追い付いたのかよ」
「雨が心配でな! トチカのみんなには先に戻る様に言ってある、このペースだとゴミヤに着くのは朝だな」
「惣一郎様、ゴミヤの厄災は是非、我々にお任せ下さい!」
馬を走らせながら、杖を構えるエル。
ここまで来て横取りしちゃうのも悪いか……
避難も済んでるし、雨も大丈夫だろうし。
「ああ、任せる」
それを聞いてホッとする4人。
取り合いじゃないんだがな……
「ツナマヨ! 馬はまだ保ちそうか?」
「駆歩で来てるから、そろそろ休ませないと」
「じゃ、少し休憩しよう」
惣一郎は息の上がった馬に水と栄養ドリンクを飲ませると、リアカーを出して馬に繋ぎ始める。
トーマの馬だけ消耗が激しいからだ。
「惣一郎のそのスキルは、ホント便利そうだな~ ひとりで町ごと移動出来るんじゃないか?」
「ハハ、生き物は無理なのよ!」
アイテムボックススキルも、最近では遠慮なく人前で使っている。
「ダンジョン産ですか?」
トーマが聞いて欲しくない質問をして来る。
「そんなもんかな~ 内緒ね!」
「惣一郎殿は他にも確かダンジョン産の物を持っていたよな、一体何年籠ってたんだ?」
「えっ? いや数日しか。毎回入ってすぐ出て来ちゃうので……」
すると驚くツナマヨが、
「いや、数日ってそんな! ダンジョンで宝箱を出すのに何年も籠るのは珍しくないのだぞ!」
アレ?
「そうなの? 運が良いのかな~ ははは~」
みんな驚きの表情だ。
アレ? ダンジョンって割と出るよなぁ、宝箱。
笑って誤魔化す惣一郎は、栄養ドリンクで多少回復した馬を確認すると、みんなを荷車に乗せ、またゴミヤへと走り出した。
移動を考えると荷車も3チームに配らないとだな……
明け方、朝日に照らされた半壊の街が先に見えて来る。
街の手前にはテントを張り、監視する冒険者達がいた。
「止まれ、ゴミヤは今閉鎖されている! 引き返すんだ」
「ギルドから依頼を受けた、ジビカガイライだ! 責任者は?」
「え! もう着いたのですか? 応援はまだ先かと…… 今起こして来ます」
夜の見張りだろう冒険者が、他のテントへ指揮官を呼びに走る。
「遠いところよく要請に応じてくれた! 私は、足止めを任された[セバシール国]の一等騎士[エルチャンド]だ。ギルドには世話になる!」
「惣一郎だ、よろしく。それで厄災は?」
「瓦礫の下で眠っている! この雨のおかげで被害も少なく、街の住民もあらかた避難を終えた。まさに救いの雨だ…… が、止んだ時の事を考えると胃が痛む思いだった。よく間に合ってくれた!」
「よし! じゃ寝てる内にやっちまおうぜ!」
黒髪の猫娘が、威勢よく拳を叩く。
「そうだな、じゃ任せるよ!」
「「「 おおお! 」」」
そのまま荷車で街に向かう4人。
惣一郎とベンゾウは、エルチャンドとその4人の背中を見送る。
「あの方々だけで、大丈夫なんですか?」
「クルセウスのリーダーと、ゴリラング・ログの主力メンバーです。まぁ、何かあれば我々が居ますので」
「何と! あれが[黒の死神]と[神剣の魔女]ですか!」
何それカッコいい!
俺の国盗りって……
「ご主人様、ドンマイ!」
…………
夜の空で雨を弾くほうき星は、先を走るツナマヨ達をすぐに捉える。
真っ暗な林の中を突っ走る4頭の馬。
道らしいものはあるが、それでも暗い中よく走れると感心する惣一郎。
後ろから追い付くと、すぐにミコに気付かれる。
「旦那か! 何だよもう追い付いたのかよ」
「雨が心配でな! トチカのみんなには先に戻る様に言ってある、このペースだとゴミヤに着くのは朝だな」
「惣一郎様、ゴミヤの厄災は是非、我々にお任せ下さい!」
馬を走らせながら、杖を構えるエル。
ここまで来て横取りしちゃうのも悪いか……
避難も済んでるし、雨も大丈夫だろうし。
「ああ、任せる」
それを聞いてホッとする4人。
取り合いじゃないんだがな……
「ツナマヨ! 馬はまだ保ちそうか?」
「駆歩で来てるから、そろそろ休ませないと」
「じゃ、少し休憩しよう」
惣一郎は息の上がった馬に水と栄養ドリンクを飲ませると、リアカーを出して馬に繋ぎ始める。
トーマの馬だけ消耗が激しいからだ。
「惣一郎のそのスキルは、ホント便利そうだな~ ひとりで町ごと移動出来るんじゃないか?」
「ハハ、生き物は無理なのよ!」
アイテムボックススキルも、最近では遠慮なく人前で使っている。
「ダンジョン産ですか?」
トーマが聞いて欲しくない質問をして来る。
「そんなもんかな~ 内緒ね!」
「惣一郎殿は他にも確かダンジョン産の物を持っていたよな、一体何年籠ってたんだ?」
「えっ? いや数日しか。毎回入ってすぐ出て来ちゃうので……」
すると驚くツナマヨが、
「いや、数日ってそんな! ダンジョンで宝箱を出すのに何年も籠るのは珍しくないのだぞ!」
アレ?
「そうなの? 運が良いのかな~ ははは~」
みんな驚きの表情だ。
アレ? ダンジョンって割と出るよなぁ、宝箱。
笑って誤魔化す惣一郎は、栄養ドリンクで多少回復した馬を確認すると、みんなを荷車に乗せ、またゴミヤへと走り出した。
移動を考えると荷車も3チームに配らないとだな……
明け方、朝日に照らされた半壊の街が先に見えて来る。
街の手前にはテントを張り、監視する冒険者達がいた。
「止まれ、ゴミヤは今閉鎖されている! 引き返すんだ」
「ギルドから依頼を受けた、ジビカガイライだ! 責任者は?」
「え! もう着いたのですか? 応援はまだ先かと…… 今起こして来ます」
夜の見張りだろう冒険者が、他のテントへ指揮官を呼びに走る。
「遠いところよく要請に応じてくれた! 私は、足止めを任された[セバシール国]の一等騎士[エルチャンド]だ。ギルドには世話になる!」
「惣一郎だ、よろしく。それで厄災は?」
「瓦礫の下で眠っている! この雨のおかげで被害も少なく、街の住民もあらかた避難を終えた。まさに救いの雨だ…… が、止んだ時の事を考えると胃が痛む思いだった。よく間に合ってくれた!」
「よし! じゃ寝てる内にやっちまおうぜ!」
黒髪の猫娘が、威勢よく拳を叩く。
「そうだな、じゃ任せるよ!」
「「「 おおお! 」」」
そのまま荷車で街に向かう4人。
惣一郎とベンゾウは、エルチャンドとその4人の背中を見送る。
「あの方々だけで、大丈夫なんですか?」
「クルセウスのリーダーと、ゴリラング・ログの主力メンバーです。まぁ、何かあれば我々が居ますので」
「何と! あれが[黒の死神]と[神剣の魔女]ですか!」
何それカッコいい!
俺の国盗りって……
「ご主人様、ドンマイ!」
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