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第十六章

三十七話 【捜索依頼】

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水着にアロハシャツで、拠点となるテントを改造し広げるガブガ。

島ではすっかり、みんなこのスタイルになっていた。

ミコ用に、小さめのテントも頼まれ、つなげている。

ちゃんと渡したマジックバックに、入る大きさに調整されている。

移動用に渡した荷車も使いやすそうに、手を加えられていた。

ゼリオス達ハツネツガイライは、今朝から訓練と厄災の島に行っている。

王が居ると聞いた惣一郎が、奥まで行かない様にと注意してある。

フジンカガイライのツナマヨ達は、資材調達に施設から何処かの街に行っている。

セシルは朝からミコと意外にもギコルに、料理を教えながら、調理を楽しんでいる。

毎回毎回、他のチームの分まで作る訳にもいかないとの事で、料理教室が開かれている。

そして惣一郎はサーズリに呼び出され、またギルド本部のあるゼルダンに行く為、準備をしていた。

「じゃセシル、食材はここに置いておくぞ、悪いがクロと留守番を頼む」

「はい、いってらっしゃい!」

聖女も今や、寮母の様であった。

本人が楽しそうだから、いいだろう。

惣一郎は、寒いから留守番してろ!っと言ったが、ついて行くと聞かないベンゾウと弁慶を連れ、施設に向かう。






本部の地下では、ヌイドリーとサーズリが待っていた。

「惣一郎殿、急に呼び出して済まない!」

「いえいえ」

「クラン結成おめでとうございます。それで、今回お呼びしたのは、本部統括のジゼル様より、折り入ってお願いがあるとの事で」

「あの爺さんが?」

長い階段を登りながら話す惣一郎。

背中にはベンゾウが引っ付いていた。

賑やかなギルド受付を通り、前回とは違う場所へ案内される。

通された部屋の奥にいる、ガタイのいい白髪の老人。

「おお、惣一郎! よく来たの~ 噂は聞いておるぞ! クランを立ち上げ、クルセウスやゴリラング・ログを鍛えてるそうじゃな! 一体どんな魔法を使えばそんなすぐに、厄災を倒せるチームに鍛えられるのじゃ!」

「彼女達は元々、その素質があっただけですよ」

「謙遜するな、他のチームもどんどん鍛えて欲しいもんじゃ!」

「それで、頼みとは?」

「いきなり本題か、つれないの~」

ジゼルの頼みとは、消息不明の冒険者チームの捜索であった。

セキヌス大陸の北にある[コステル国]。その中でもダンジョンで有名な[エキオの町]が突然音信不通になり、厄災の仕業かもと事実確認の為に向かったベテランチームが、その後消息を絶ったとの事。

「セキヌス大陸か、つい最近ワーテイズに行ってたが……」

「そのずっと北じゃ、町ひとつ急に消えたとなると、厄災が絡んでる可能性が高い。そうなれば、おいそれと依頼も出せんのじゃ」

「なるほど」

「コステル国からの依頼でな、近隣の村や街は万が一を考え、すでに避難にはいっちょる。まだ厄災と決まった訳じゃないが、最近頻繁に厄災も現れておるしの」

「まぁ可能性があるなら引き受けますよ」

「済まんの~ それとジビカガイライに依頼する理由がもう一つ……」

「何ですか?」

「その消息を絶ったチームは、ジビカガイライが現れるまでトップじゃった、ワイドンテなんじゃ」

ありゃNo2のチームか、そりゃその捜索を下のチームに依頼は出来ないな……

「了解した、一度戻ってからすぐに向かうよ」

「頼む!」

頭を下げて頼むジゼルに見送られ、惣一郎達は部屋を出る。

「わざわざ本部に呼ばなくても、いつもの様にコールくれれば良かったのに」

戻りながら額の汗を拭く、サーズリ。

「いえ実は、お願いがもう一つありまして」

サーズリのお願いは、最近頻発する厄災と同じく、ムカデの出現も増えて来ているとの事で、惣一郎が使う、厄災にも有効な毒を大量に購入させて欲しいとの事だった。

「それはいいが、ムカデも厄災だぞ! 脚の数が違うってだけで判断するな、無理をせずに依頼してくれ! ゴリラング……じゃないフジンカガイライや他のチームも、ムカデ位なら問題ないからな」

まっ、そうは言っても、実際には移動の時間も問題ではあるのだろう。

惣一郎は受付の裏から資材置き場へと案内され、殺虫剤を大量に出し、詳しく使用上の注意を説明する。

ギルドでもグラマラの葉の研究が進み、忌避薬の開発が進んでいるそうだ。

その後、サーズリからワイドンテの情報を聞き、依頼について詳しく打ち合わせを済ませると、地下施設からその日のうちに島に戻る事になる。

つくづく縁の無い街である……

「雪国観光は、また今度だな」





島に戻った惣一郎は、まだ戻らないゼリオス達を抜きに、調達から帰って来ていたツナマヨとミコ達に、事情を説明する。

「ワイドンテが! そりゃただ事じゃね~な!」

ミコを驚かせる、このワイドンテ。

17人とメンバーの多い、ベテラン揃いの冒険者チームだと言うこのチーム。

リーダーの[イグラシオ]は槍の名手で、ミコは過去に二度ほど喧嘩をふっかけ、やられているそうだ。

イグラシオの強さより、血の気の多いミコに引いた惣一郎。


「まぁ、そんな訳で、俺らは暫く留守にする。厄災の討伐依頼があれば、無理のない範囲でよろしく頼むよ!」

「ああ、任された」

「こっちは上手くやるさ!」

「連絡係にセシルが島に待機するので、何かあればセシルに言ってくれ」

「惣一郎様、留守はお任せください! 惣一郎様もどうかお気を付けて」

「ああ、よろしく頼む」

気怠そうなクロを引きずり、施設へと向かう。


「ギド、暫く留守にする。何かあればセシルに言ってくれ」

「ああ、連絡は受けている。また厄災絡みか?」

「まだわからんが、おそらく……」

惣一郎は、コステル国のエキオに一番近い施設へ繋いで欲しいと頼むが、

「コステルの施設は、エキオだ。そのエキオに連絡がつかん。一番近くて、ワーテイズ城だな」

ありゃ、急がないとだな……

ギドが連絡を取り合い、光る魔法陣に乗る。

惣一郎には、嫌な予感がした……





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