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1章
08.冒険の理由2 『リシア様は何の病気なんだ?』
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『……いい母上だな』
ぼつりと呟いたテトに、アセリアは嬉しそうに微笑む。
不遇の属性を持って生まれながら、アセリアが真っ当な性格をしていられるのは、この母の影響が大きいに違いない。
(だが、あの様子ではあまり長くはなさそうだな……)
彼女自身にもその自覚があるのか、隠しきれない悲壮感が言葉の端々から感じ取れた。
(せっかく、前世の知識を持ったままこの世に転生したんだ。何かしてやれることはないだろうか)
考えるうちに、アリシアは廊下を進んでいき、近くの部屋へと入った。
他の部屋と同じく質素な内装だが、どこか少し雑然とした感がある。
あちこちに読みかけと思われる書物が置かれ、机には紙の束が積み上がっていた。
おそらくここは、アセリアの部屋なのだろう。
アセリアは窓ぎわに立ち、窓を開けた。ふわりと風が部屋に吹き込み、アセリアの美しい銀髪を揺らしていく。
『なあ、ひとつ聞いてもいいか?』
「ん?」
『リシア様は何の病気なんだ?』
「魔力不全症だよ。体内の魔力がうまく外に出せなくなるんだ。とても体力を使う病気で、それで少しずつ弱っちゃうんだって。だから最近は、眠ってる時間のほうが多いよ」
『そうか……。あ、そういえば、薬草がどうのと言ってた気がするけど、もしかしてアセリアが森の奥まで来たのは……』
「うん、母上の病状を和らげる効果がある薬草を、とりにいってたんだ。魔力の濃い場所にしか生えないから」
『なるほど、そういうことか』
特別な場所にしか生えない薬草が必要なら、多少無理をしても仕方がない――
『いやいや、それはおかしいだろ!
王妃だろ!? 何で騎士とか、兵士とかに、その薬草とやらを取りに行かせないんだよ。まだ子供のアセリアが取りに行くのはおかしすぎるじゃないか』
思わずそう突っ込んだテトに、アセリアはふっと笑った。
それは年齢にそぐわない、大人びた笑みだった。
「母上は、もう見捨てられてるの。私を産んだから」
『は……?』
アセリアは風に吹かれる髪を、肩の後ろへとそっと払う。
その視線は相変わらず空に向けられたままで、どこを見ているか分からない。
「父上は、母上が風属性の私を産んだことを快く思わなかったんだ。おまけに、私は魔力も全然なかったから、本当にがっかりしたんだって」
『そんな……』
「元々お母様は他の王妃様より身分が低い。でも、その美貌で王をろうらくした。そのばちが、当たったんだろうって、皆言ってる」
『はあ!? そんなわけがあるか』
仮にもし、アセリアの母親が地位目当てに王に近付いたのだとしたら『役立たず』の娘に、あそこまで優しい表情を、向けるわけがない。
『まさか、それでろくに薬も用意してもらえないのか!?』
「うん」
アセリアは静かに頷く。その横顔に怒りはなかった。
ただ、期待して、期待して、失望することになれてしまった――そんな顔をしていた。
「私の属性が風だってわかるまで、父上はとても優しかった」
『アセリア……』
「でも、いまは父上なんか、大嫌い」
風属性だと分かったその日から、もう一度も会っていない。
そう呟くアセリアに、ぎゅっと胸が締め付けられたる。
テトは肩に飛び乗ると、アセリアの小さな体を包み込むように身をすり寄せた。
アセリアはテトの毛並みに顔を埋めながら、小さく声を震わせる。
「私は……母上のためなら、何だってする。だって、私のせいで、母上が……」
『……大丈夫だ、アセリア。これからは俺が一緒にいる。俺も魔術を覚えるから、2人で一緒に薬草を採りに行こう』
アセリアは小さく頷いた。
その痛みに寄り添うことしかできないこの身が今はただもどかしい。
(何としても魔術とやらをものにしなくては)
アセリアの瞳から涙の色が渇くのを待って、問いかける。
『アセリア、魔術を覚えるにはどうしたらいい?』
「……ん。それなら――」
ぼつりと呟いたテトに、アセリアは嬉しそうに微笑む。
不遇の属性を持って生まれながら、アセリアが真っ当な性格をしていられるのは、この母の影響が大きいに違いない。
(だが、あの様子ではあまり長くはなさそうだな……)
彼女自身にもその自覚があるのか、隠しきれない悲壮感が言葉の端々から感じ取れた。
(せっかく、前世の知識を持ったままこの世に転生したんだ。何かしてやれることはないだろうか)
考えるうちに、アリシアは廊下を進んでいき、近くの部屋へと入った。
他の部屋と同じく質素な内装だが、どこか少し雑然とした感がある。
あちこちに読みかけと思われる書物が置かれ、机には紙の束が積み上がっていた。
おそらくここは、アセリアの部屋なのだろう。
アセリアは窓ぎわに立ち、窓を開けた。ふわりと風が部屋に吹き込み、アセリアの美しい銀髪を揺らしていく。
『なあ、ひとつ聞いてもいいか?』
「ん?」
『リシア様は何の病気なんだ?』
「魔力不全症だよ。体内の魔力がうまく外に出せなくなるんだ。とても体力を使う病気で、それで少しずつ弱っちゃうんだって。だから最近は、眠ってる時間のほうが多いよ」
『そうか……。あ、そういえば、薬草がどうのと言ってた気がするけど、もしかしてアセリアが森の奥まで来たのは……』
「うん、母上の病状を和らげる効果がある薬草を、とりにいってたんだ。魔力の濃い場所にしか生えないから」
『なるほど、そういうことか』
特別な場所にしか生えない薬草が必要なら、多少無理をしても仕方がない――
『いやいや、それはおかしいだろ!
王妃だろ!? 何で騎士とか、兵士とかに、その薬草とやらを取りに行かせないんだよ。まだ子供のアセリアが取りに行くのはおかしすぎるじゃないか』
思わずそう突っ込んだテトに、アセリアはふっと笑った。
それは年齢にそぐわない、大人びた笑みだった。
「母上は、もう見捨てられてるの。私を産んだから」
『は……?』
アセリアは風に吹かれる髪を、肩の後ろへとそっと払う。
その視線は相変わらず空に向けられたままで、どこを見ているか分からない。
「父上は、母上が風属性の私を産んだことを快く思わなかったんだ。おまけに、私は魔力も全然なかったから、本当にがっかりしたんだって」
『そんな……』
「元々お母様は他の王妃様より身分が低い。でも、その美貌で王をろうらくした。そのばちが、当たったんだろうって、皆言ってる」
『はあ!? そんなわけがあるか』
仮にもし、アセリアの母親が地位目当てに王に近付いたのだとしたら『役立たず』の娘に、あそこまで優しい表情を、向けるわけがない。
『まさか、それでろくに薬も用意してもらえないのか!?』
「うん」
アセリアは静かに頷く。その横顔に怒りはなかった。
ただ、期待して、期待して、失望することになれてしまった――そんな顔をしていた。
「私の属性が風だってわかるまで、父上はとても優しかった」
『アセリア……』
「でも、いまは父上なんか、大嫌い」
風属性だと分かったその日から、もう一度も会っていない。
そう呟くアセリアに、ぎゅっと胸が締め付けられたる。
テトは肩に飛び乗ると、アセリアの小さな体を包み込むように身をすり寄せた。
アセリアはテトの毛並みに顔を埋めながら、小さく声を震わせる。
「私は……母上のためなら、何だってする。だって、私のせいで、母上が……」
『……大丈夫だ、アセリア。これからは俺が一緒にいる。俺も魔術を覚えるから、2人で一緒に薬草を採りに行こう』
アセリアは小さく頷いた。
その痛みに寄り添うことしかできないこの身が今はただもどかしい。
(何としても魔術とやらをものにしなくては)
アセリアの瞳から涙の色が渇くのを待って、問いかける。
『アセリア、魔術を覚えるにはどうしたらいい?』
「……ん。それなら――」
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