白の衣の神の子孫

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第一章 神の子孫

藤黄の衣 18

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「そっくり……?」
南の地に降り立った神様の話にその姿は語られていない。語られるのは白一色の衣に包まれていたことだけ。
  
  うん、と頷くト・ト。

  目の前のト・トがなぜ確信をもった顔で自分が神様に、似ているというのか?……とアークは首を捻った。
「見たこともない神様の顔をあなたはご存知だと?」
再びト・トが頷く。
「俺が嘘を言ってると思う?疑っている?実は神様がどんな容姿をしていたか見ることが出来るんだ。ずっと研究していた俺もねぇ、初めてそれを見た時は驚いたよ?あり得ない物がね、残されていたんだ!」
「ト・ト何を言っている?神の姿?何か知っているのか?」
ト・トの上着を掴んだままのカークが口を開く。彼もそんな事は聞いていないと、言っている事から、ト・トのその確信を知らないようだ。
「数ある遺跡の出土品の中に、何かわからない不思議な物がいくつもあるんだ。聞いたことないかな?どんなに熱しても変形しない金属とかは、鍛冶屋に持ち込んでガンガンに熱して試してみたけど無理だったね。見たこともない鳥の絵が刻まれた壁なんかは、筆板を山ほど持ち込んで三日もかけて模写してわかったことは、大きな鳥と人が飛ぶ姿を表していたって事なんだ。何十年も朽ちることのない向こうが透けて見える布、これは何で出来ているかも不明で、汚れも付かないなんて不思議だよね……などなどあるけど。それがね、色々調べて行くうちに他の人には不思議だな、で終わったモノが、俺には素晴らしい発見だったんだ!君も見たいよね?見たら驚くよ!あれは、本当に偶然の出会いだったんだよ。神の意思かと思ったよ。見付けてくれと、ここにいると、訴えかけてくるように……目を引き付けてくるんだ、それが……」
キラキラ瞳を輝かせ、語り続けるト・ト。
「その、不思議な物とやらはどこにあるんだ?」
勿体ぶっているわけではないのであろうが、気持ちが高ぶり過ぎて、言葉が溢れ続けて、話が前に向いていかない。カークが、早く教えろとばかりに、握る手に力を入れて尋ねた。
「見たい?見たいよね?うん。待ってて、すぐに取ってくるから。親父、ちょっと離してくれないかな、部屋にあるんだ。」
カークは興奮するト・トを押し止めるために、ずっと上着を握りしめていた。はっと気づいたように、手を開いて「ああ、すまん。」と答えた。 
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