仕事やめても……いいですか……?

キュー

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お仕事の時間ですよ

俺なんか… 1 俺なんか…

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  はあ~

  俺の一日はため息と共に始まる。
  夜の撮影がない日は目覚ましよりも早く目が覚める。ぼ~っとした頭をシャワーで目覚めさせて、バスタオル一枚腰に巻き、ソファーに腰掛ける。独り暮らしなので、裸でも、構わないけどね。
  はあ~今日は読み合わせかぁ~行きたくないな~

  俺はファイブという芸名で、一応、役者をやっている。小さい頃は別の名前で子役をやっていて、そこそこ名前が知られていた。俺は叔父さんに言われるまま、現場に連れて行かれて、こうしてね、ああしてね、と言われることをしていただけだった。芸能人になりたいと思ったこともないし、叔父さんに嫌われたくないから、嫌でもニコニコ言うことを聞いていた。十八歳の時に独立して、名前を変え、小さな劇団に入り、大人の役者として頑張ることにしたのだ。

  来客を知らせるチャイムが鳴る。仕事のある日はいつものことだ。
「はーい。」
まだ、着替えていないが、ドアを開ける。あ、もちろん誰かモニターで確認してから開けてるよ。ストーカーとか、心配がないわけじゃないからね。
「おはよーファイブ!」
「おはよ、サクラ。」
彼女はマネージャーのサク・ラーヤ。俺はいつもサクラと呼んでいる。
「はい、これ食べて!」
四角い箱と飲み物のはいったポットを渡されて俺は、のそのそ移動する。テーブルに箱をおき、カップにスープを注ぐ。箱の中にはサンドイッチと盛り盛りサラダが入っている。以前、俺は食べずにそのまま仕事に向かっていたので、サクラが用意するようになった。彼女いわく、いい仕事をするためには、いい身体をキープしなくちゃだめ。いい身体をつくるためには朝ごはんをしっかり食べること。深夜まで撮影があったり、撮影がのびて食べ損なったりしょっちゅう。出される弁当はカロリーが高くて濃い味、身体に悪そう~って彼女は言う。せめて、朝は野菜を取らなきゃだめ~って。オレなんかのためにわざわざ用意してもらってて、文句言っちゃだめだって、わかってるけど……野菜……キライ……
  モシャモシャ噛み締めてスープを飲んだ。今日のサンドイッチはスモークチキンだ。美味しい。
「今日の服出しといたから、着替えてね。」
「うん。」
口を動かしながら頷く。俺の服のセンスはサイテーだそうで、着る服もサクラが選んでくれる。
「今日の予定は、特撮戦隊ヒーロー『センセイダー!』の読み合わせですよ。その後雑誌のインタビュー。新作ドラマの打ち合わせ。今日も一日頑張ってまいりましょう!」
「ん~………」
サクラはいつも元気だ。マネージャーって、こんなに色々世話してくれるものなのかな……他のマネージャーがついたことないから、わからないなぁ……でも、俺なんかが、役者やっていけてるのは、サクラのおかげだよな。

  でも……読み合わせかぁ……行きたくない……ミライ君のテンション高過ぎて、ついていけないよぉ……

「おはよーございますぅ!」
高い声で入ってきたのはシャカイダー役のミライ君。
あ、シャカイダーっていうのは役名ね。ちなみに俺はオンガクダー………
長テーブルには既にスウガクン役のフェニックス君とカティー役のサファイアさん。ヘリペア役のタカノ先輩もいる。放送中の特撮戦隊ヒーロー物のセンセイダーってドラマの読み合わせ。順々に撮って放送して……結構ギリギリのスケジュールです。
  ストックが、少ないので、今回は二本一度に撮りますって、説明を受けた。同じセットごとに撮るから、時系列メチャメチャで、気持ちをつくるのは大変なんだ。俺は役に入り込むタイプだから、物語のストーリーどおりに演技したい。でも、それは無理なので、休憩中も気持ちを切らさないように集中している。そんなだから、終わる頃にはもう、ぐったり。ミライ君なんかは、切り替え早くて休憩中もおしゃべりしたり、ゲームしたりしてて、羨ましい。スタートの声で、すぐ役に入る。泣くも、笑うも自由自在。若いけど、実力派って言われるの当然だよ。俺なんか……ね、全然なんだ。
「あ、ファイブ君、聞いたよ、今度『王宮騎士物語』出るんだってね。ヒロインの相手役だなんて、大役だね!俺も出るんだ!楽しみだね!」
ミライ君の言葉に、俺は固まった。

……聞いてないよ…サクラ………俺なんかが……ヒロインの相手役なんてできないよ……
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