仕事やめても……いいですか……?

キュー

文字の大きさ
89 / 159
黒の章

黒の子 11

しおりを挟む
  クロードとベルタの無事を確認した後、ハンスはシーブイレイルが家まで送って行った。こんな田舎であっても、下位とはいえ貴族の子息をそのまま黙って返す訳にはいかない。クロードが一緒に謝りに行くと言ったが、フォムボトルは我々が行った方が事を大きくせずに済むと、シーブイレイルに指示した。
「大丈夫だよ!今日は父は不在だし、母も、もう慣れっこだからさ。」
明るく、軽く言うハンスは、じゃあね、と手を振り出ていった。

  帰る道すがら、シーブイレイルはハンスに今日の出来事を再確認する。
「ハンス、すべてをご家族に話すことはできない。確認しておきたい。いいかい?」
  キノコを取りに森に入ってからの事をハンスにもう一度細かく聞き、確認した後、シーブイレイルはハンスの両親に説明する内容をまとめて話す。ハンスはクロードやベルタと森の外周をかくれんぼをしたり、笛草やキノコを探して遊んでいたが、つい夢中にになり、森に入ってしまったと。ベルタは慣れない森の中ではぐれて、迷ってしまい、急斜面を転がり落ちて、怪我をしたが、たまたま近くにいたフォムボトルに助けられる。彼の治癒能力で怪我も治し、近くのホアンの家に世話になった、と説明する予定だ。狼は出会っていないことにする。ベルタはホアンの家で休ませ、ホアンが家族を呼びに行っている。ハンスとベルタが二人でキノコを取りに行ったことにすると不自然で、クロードが関わっていることは隠せない。クロードに対する風当たりがさらに強くなると思われるが、こればかりは仕方ない。
「クロードには悪いんだけどね……」
「うん。クロードに関しては言えない事が多いんだよね。」
「…そうだな。彼の不思議な力は内緒にしておかないとね…」
シーブイレイルが左手の人差し指を立て唇に当てて、もう片方の手をハンスの頭にポンと乗せ微笑んだ。大きながっしりとした手で撫でられたハンスはふわりと柑橘の香りを感じる。訓練され洗練された無駄のない仕草の王都から来た王立騎士は、貴族の親戚を沢山知っているハンスでも初めて見る。格好いい騎士姿にハンスは憧れ、ドキドキした。
「ああ、シーブイレイルさんもクロードの秘密知ってるの?わあ、そうかぁ、誰にも内緒って言われたけど、知ってるならいいよね。シーブイレイルさんも仲間だ。後でクロードに聞こうと思ってたんだけど……」
楽しげに笑うハンスに笑い掛けるシーブイレイルはそうだね、と頷く。穏やかな好意をもった口調は話しやすく、いつの間にか世間話をしているように秘密を持つ者も口からするりとこぼれてしまう。
「あれ、きっと、森の魔女だよね。びっくりしたなぁ~」
「ああ、そうだね。びっくりするよね。」
シーブイレイルは、初めて聞く内容におどろき震えたが、少しも態度に出さず、さも知っていたかのように頷く。
「やっぱり、いたんだ。知り合いだったなんて、早く教えてくれたらよかったのに。ねえ?シーブイレイルさんも仲良しなんだね?クロード達の怪我も森の魔女が治してくれたんだよね。」
「そうだね……君もクロードから聞いてもう知っていたと思っていたよ……君は…彼女がクロードの怪我を治すところを見てないの?」
……今、君から初めて聞いたけどね、とシーブイレイルは思ったが、目の前の少年から少しでも情報を引き出すために知り合いのように合わせて話す。
「うん。ぱっと目の前に現れて、ほんと!凄かった~助けに来てくれたんだ、そうしたら、クロードがホアンの家に行けって、内緒だよって……言って……」
「そうかぁ。」
シーブイレイルはもう一度ハンスの頭をクリっと撫でて微笑んだ。ありがとう、えらかったね、と呟く。
「髪の毛も瞳の色も真っ黒で、綺麗だったな……」
  シーブイレイルは上司にいい土産話ができたと、ほくそ笑んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

処理中です...