仕事やめても……いいですか……?

キュー

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黒の章

黒の子 21

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「おかしい。どこにもクロードがいない!」
ハンスは馬を止めて、叫んだ。そんな彼の声は誰にも届かなかった。周りに人の姿はなく、道案内の標識があるだけだ。
「まあいい………夜には戻るだろう、今日こそは問い詰めてやる。」
  今来た道を引き返す。つい先ほど彼がたどり着いた道標は領土の境を示すもの。騎士養成学校の生徒は許可なく王都を離れてはならない。クロードが許可されていなければ、あの道の先に彼はいないはずだ。

「外泊届け?」
ハンスがそれを聞いたのは寮に戻ってからだった。クロードから外泊届けが出されていて、今日は戻らないと。そんな話は聞いていない。夜には話せると言っていたのに…とぷりぷり怒りながら食堂へ向かった。
「ハンス、今日は図書館に来なかったな。」
イークがハンスの姿を見ると声を掛けた。彼と同級の何人かが、同じテーブルで食事中だった。
「よお、ハンス、どした?なんか機嫌悪そうだな。」
「今日の定食あたりだぜ?お前もこれにすれば?」
「うるさい。」
次々と話し掛けられ、苛立ちを隠さずに吐き捨てるように言い放つ。
「ハンス、心配しているのに、それはないよ。」
イークが手を止めて、立ち上がる。その勢いに、少し怯んだハンスが小さく呟く。
「クロードが…外泊だって。」
「相棒がいないだけで、カリカリすんなよ。」
「俺、トレー取ってくる。定食でいいよな?」
側に座っていたソラルトがそう言うとトレーが積まれたカウンターへ駆けて行った。そこ、走るな、と上級生に叱られながら、すんませ~ん、と返事が聞こえた。
「なあ、クロードは何か言ってなかった?」
「クロード…話そうって……話してくれるって…」
「そう、なら、待ってやれよ。帰ったら話すって、言ってたんだな?」
「うん、夜…」
「今日の夜?泊まりなら明日の夜じゃないか?」
「ん…どうだったかな…夜って…今日…明日…だったかも…あれ?……どうだったかな。」
「ほら、ハンスもハッキリ聞いてないじゃないか。クロードもだよ、案外抜けてんな、明日って言って、外泊の事を伝え忘れてるし。」
  気持ちが落ち着いたハンスの腹が、急に鳴った。
「腹へった…」
「ほらほら、食べなよ。」
「ごめん、なんかイライラしてた。」
「まあ、明日…クロードが帰ったら、一緒に話を聞こう。ほら、早く食べないと……ソラルトが横から狙ってるぞ。」
イーク達に急かされ、やべぇっと、ハンスは慌ててフォークを握った。

  だが、翌日、夜遅くになっても、クロードは帰ってこなかったのだ。
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