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お仕事の時間ですよ 3

王宮騎士物語 第47話 双子

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「クレッセリア、あなたの言う希人って、何か、聞いてもいい?私達が親として、知るべきことは?」
「う……ん……説明が難しいのだけれど、別の世界の、別の時間から魂だけがやってきたの。」
「別の世界?別の国じゃなくて…命の生まれる場所?生まれ変わりなの?私達も?」
「この世界で、生まれ変わりがあるのかは、わからないけど…どうやら…このお腹の子は別の世界で生きていて、その世界での人生を終えて、その記憶を持ったまま生まれるの。」
「……まだ生まれていない子の事を、クレッセリアは何故、知っているの?」
ブリジットは目の前の友人の言葉を疑いたくはないが、突拍子もない内容に理解が追い付かない。
「夢で見たの……この子と……未来を。」
「……生まれてくる子の未来を?……」
「ええ。最悪の未来を、変えたいの……この子も皆も幸せな未来にしたい。」
「あなたなら、変えることが出来るのね。」
「多分……未来に続く道は一つではないから。無理を承知でお願いするわ。この子をあなた達に託したい。」
「わかったわ。本当にサーバスには言わなくていいのね?」
「ええ。いずれ私から話すわ。出産まで、ここにいていい?」
「もちろんよ。元気な子を産んでちょうだい。名前はもう決めているの?たまには、娘の成長を見に来てね。そしていつか、母と名乗り、抱きしめてあげて。」
「うん。わかってる。」
ブリジットは手を伸ばし、クレッセリアの長い髪を一房すくう。
「あなたの髪の色……写真じゃわからなかった。」
「そうね。生まれてすぐの写真だったから。」
「写真?」
古いセピア色の家族写真。学生時代、ブリジットは偶然見てしまった。その時はハマーは一緒ではなく、写真の事も知らない。
「一度だけ、見ちゃったの。双子だったのね。」
「ええ。妹はシャノアにいるの。クローディリア……っていうの。幼い頃に別れてから、父と妹には会っていないの。」
そう言うクレッセリアの髪はブリジット達が学生時代からの見慣れた灰色ではなく、艶やかな黒髪だった。

「クレッセリアは何処に行った?」
「ん~わからないなあ。昨日しばらく出掛けるね~と言って、ふらっと、出ていったから。」
「知らないはずはない。教えてほしい。」
「いやぁ、よくセリアは行き先を言わずに出掛けるから。」
「……帰ってくるよな? 」
「まあ、いつかは…帰ってくると思うが、それが明日か、明後日か…一ヶ月か………」
「ここでしばらく待たせてもらってもいいか?」
「まあ、いいが。この村に宿はないぞ?」
「ここには空き部屋はないのか。」
「セリアの部屋は空いてるがな。」
「それは、使えん……」
「だが、床に寝るわけには…」
「かまわない。」
「なら、寝具を貸すよ。セリアの部屋から移すから。」
「それは、使えない。」
「田舎の夜の冷えを甘くみちゃいかん。身体を壊されるくらいなら、セリアも使えと言うだろうよ。」
「……」
  学校の授業で野営の経験もあるし、若いから体力もある。四天王と呼ばれる成績上位者の自負もあるが、所詮王都育ちの王族である。寒さ厳しい地方の山中の粗末な家で、十分な寝具も火もなしに夜をプライドだけで何日も過ごせる訳もない。それがわからぬ愚か者ではない。
「わかった。……使わせてもらおう。だが、セリアへの説明に口添え願おう。」
「あいよ。しばらくいるなら、飯代がわりに仕事を手伝ってもらうよ。」

  クレッセリアの部屋は余計なものが何もない。机と椅子本棚、ベッド。洋服を入れる櫃。入ってすぐ本棚が目についた。見慣れない背表紙の文字を指で触る。わずか三冊の本が並ぶだけ。あんなに本が好きなのに、貸本屋や図書館の利用で済ませていたんだな……と思う。この貧しい田舎の村や、この家を見れば、そうだよな……と納得する。この環境から、王立学院に通っていたとは信じられない。つい先ほど話した保護者が収入をやりくりして、送り出したのだろうか……それとも………
「あ……」
机の上に見覚えのある表紙の本があった。
「これ…」
パラパラとめくると、写真をみつけた。異国の文字の本に挟まれた古い写真。表紙のカバーだけ、少し昔に流行った恋愛小説のもの。なかには国交のないシャノアの文字の本。授業で少し習ったものの、ほとんど覚えていない……が……間違いない。
  セピア色の写真に映るのは、クレッセリアと彼女の姉か妹……おそらく双子。ベビーボンネットで髪は見えない。きっと両親と同じ、美しい黒髪だろう。
「クレッセリア……どうして、何も言わずに……」



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