仕事やめても……いいですか……?

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お仕事の時間ですよ 3

+王宮騎士物語 第58話

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  シャノアの王子が王都へ入る。物々しく、厳つい真っ黒な馬車が列をなして静かに進む。王女の結婚が発表されたこともあり、珍しい隣国の客人を一目見ようと、続々と沿道には人が集まっていた。
  先頭には黒い馬に乗った鈍く光る黒い鎧姿の騎士がシャノア王国の旗を掲げ、続いて槍を持った騎士、盾を持ち剣を腰に下げた騎士、その後ろには見たこともないような造形の朱色のラインで化粧を施した面を着けた、男か女かわからぬようなゆったりとした白い布を重ねたデザインの服装の従者達。続く黒い立派な、何台もの馬車のどれかに王子は乗っているのであろうが、どの馬車も窓を閉ざし、中を見ることはできない。
  馬車の後には、再び黒い鎧の騎士が続く。いずれもバイザーに覆われ表情は見えず、街の住人は華やかな王族の行列を期待して沿道に並び立つが、その異様な姿と雰囲気に声を潜め、黙って見送る。

「ソフィーナ様、こちらでお待ちください。」
花嫁の衣装に身を包み、座っていると、不安で身体が震えてくる。
  シャノアの結婚の儀式では、花嫁は式の前五日間異性と住を共にしてはならないという。それにならい、ソフィーナも男子禁制の後宮で過ごした。
  そして今日、式の日。王族の結婚式を執り行う神殿へこれから向かうのだ。
「ソフィーナ様、そろそろ、お時間です。」
もう逃げ場はない。マリーは今から王女として、隣国の初めて会う王子と結婚するのだ。結婚の延期を働きかけてみるよと、王弟は言ってくれたが、それも難しい事だったのだろう、あれから一度も顔を会わせていない。ふと、前世の両親の顔が脳裏に浮かんだ。花嫁姿を見せられなかったね……ごめんね……お父さん…お母さん……

「王女様、よろしいでしょうか。」
「ええ。」
「こちらをお付け下さい。」
そう言って渡されたのは白く凹凸のない面。表面に朱色の曲線で化粧をした顔がかかれている。
「シャノアのしきたりとかで顔を隠すのだそうです。」
「これでは何も見えないわね……」
「我々が手を引いてまいります。」
「そう……お願いね………」

マリーは立ち上がり、扉に向かって歩き出した。

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