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黒の国の王子

王宮騎士物語 第59話 予言の子

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   百年前、シャノア王国の予言者が一つの予言を残した。それは秘密裏に王家に伝えられる。

月の隠れる黒き夜
流れる一つ星
二つの魂の片割れより生まれし黒き男子
黒き渦  黒き三つの力満ちる時
王国の終わりの王の逝く時

  知るものは数少ない。しかし百年の時を経て、月のない夜、王の子が生まれた。

「どうして……男子なの………この子は『王殺し』……生まれてはならない子……」
その男の子を取り上げた助産婦はそうつぶやき、しばらく産声を上げる赤子を悲しそうに見つめた。そして、ぎゅっと目を閉じゆっくりと赤子を抱いた両手を高く上げ、そのまま床に投げ落とそうとした。
「やめて!」
悲鳴と共に、必死で生まれたままの赤子を取り返し、産衣でくるむ女。そのまま女は手当たり次第に周りの物を投げ、乱れた衣服を直そうともせず、走り出した。

  彼女は追い詰められていた。
  階段を上り、空き部屋に飛び込んで鍵を掛ける。
「このままここにいると、この子は殺されてしまう。」
黒い長い巻き毛と黒い瞳。この国では珍しくもない風貌の女は産まれて間もない小さな子を抱いていた。
「この国を出ましょう。」
いつの間にか、彼女の側には従者が寄り添い口を開いた。
「……一緒に行くと目立つ。私がこの子を抱いてるふりをして兵の注意を引いて時間を稼ぐ。その隙にあなたはこの子を連れて隣国へ逃げて。隣国に姉がいるから……彼女を頼って。彼女が守ってくれるから。」
彼女の黒い瞳が、赤く染まった。右手に宝石を握り、左手を我が子の額に乗せて、小さく何かを呟いた。
  手の平から少し光が漏れ、ゆっくりと手を動かし、彼女の手が額から離れた。子どもの髪の色が、黒から灰色に変わった。おそらく瞳の色も変わったのであろう。
「私に出来る一度だけの奇跡。愛しているわ愛しい子。」
小さな頬にキスをする。
「しかし…」
「私は殺されることはない。大丈夫。この子が大事。死んではだめ。お願い。これもこの子に…売れば幾らかになる。」
彼女が着けていた首のネックレスと、宝石の付いた指輪、ブレスレットを急いで外して従者に渡した。
「お任せ下さい。私の命に代えてもお守りいたします。」
小さな赤子を抱いた男は闇に紛れた。

「誰も部屋に入らないで!私はここにいます!他の誰かが近寄ったら、この子と共にここから飛び降ります!」
  騒然となった城内は衛兵が高い塔を、彼女のいる部屋を取り囲み、彼女の一挙一動に目を離せず、息を飲んで見守る。

  騒ぎに紛れて、夜の闇を、第二王子を抱いた従者は隣国へと走った。





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