【第三章、完結】転生少年は、魔道具で貧乏領地を発展させたい~アイボウと『ジョウカ魔法』で恩返し

gari@七柚カリン

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第三章

第56話 王立騎士団へ

 王立騎士団の鍛練場は、別棟の騎士団本部の中に設けられていた。
 到着したダニエルたちを、整列した騎士たちが出迎える。
 男性だけでなく、女性騎士の姿もあった。
 
 騎士団は第一から第五まであり、王城や王都、直轄領の警備を担当しているとダニエルは聞いた。

 騎士たちの中に、見知った顔がチラホラ見える。
 野外実習の時に第三王子に同行していた護衛騎士たちと、副団長のニルマーラだった。

「では、ただいまよりダニエル殿の魔道具────」

 ニルマーラの言葉にさっそく反応したアイボウが、グッと身を乗り出す。

「────の収納量調査を開始する。各自、荷物を持って集合せよ!」

「「「「「「「はい!」」」」」」」

 飛び上がりかけたアイボウは途中で勢いを失い、ゴロンと横に倒れた。
 そんな魔道具を気にも留めず、騎士たちは鍛練場を駆け足で出ていく。

「アイボウ、行儀が悪いぞ。早く起きなさい」

 いつも自分がされているように本体をツンツンと指で突いたら、渋々といった感じで起き上がる。
 ますます人間味が増してきた魔道具を、ダニエルはやさしく撫でてやった。

「ダニエル殿、本日はご足労いただきありがとうございます」

「ニルマーラ副団長、今日はよろしくお願いします」

 ダニエルが挨拶をすると、アイボウも敬礼をする。

「アイボウ殿には、後で一人の騎士と模擬戦をしていただきます。彼は強いですから、楽しみにしてくださいね」

「はい、喜んで!と言ってます」

「ハハハ、お手柔らかにお願いしますよ」

 苦笑いを浮かべたニルマーラは、隣に立つ騎士へ視線を向ける。

「紹介します。こちらは、騎士団長のイザギオです」

「騎士団へようこそ。君と魔道具を歓迎する」

 ダニエルはイザギオと握手を交わす。
 騎士団長の瞳が、ギラリと光ったような気がした。


 ◇


「団長、あっという間に全部入りましたね……」

「やはり、ものすごい収納力だな」

 騎士たちが持ってきたのは、遠征時に各個人が持ち運ぶ荷物一式だった。
 アウトドア用の大きなリュックサックくらいの大きさで、重量もかなりある。
 それが、五十人分あった。
 ニルマーラから「すべて収納できますか?」と聞かれたので「大丈夫です」と答え、アイボウがスポンスポンと全部吸い込んだ。

「指定した物を取り出すことは、可能なのか?」

 今度はイザギオが聞いてきた。

「たとえば、どんな物でしょう?」

「目印に、紐が付けてあるのだが」

「紐が付いているものが、複数あると言っています。何色の紐でしょうか?」

「赤と青と緑の三本で編んだ紐だ」

 アイボウが、ポンと出した。

「こちらですか?」

「せ、正解だ」

 騎士団長の声が、心なしか震えている。
 
「では、青い布が巻いてあるものは────」

 ポン。

「底を繕ってあるもの────」

 ポン。

「団長、最上級の拡張袋と同等…いや、それ以上の性能がありますよ」

「『完全時間停止機能』も、あるのだったな……まったく、恐ろしいぞ」

 アイボウの性能に、騎士たちも驚愕している。
 確認が終わり荷物をもとの場所に戻すというので、アイボウにそのまま運ばせる。
 後ろからぞろぞろと手持ち無沙汰の騎士たちがついていく様が、ダニエルは見ていて面白かった。

「なあ、ニルマーラ……陛下にお願いして、大規模演習の時だけでもダニエル君を騎士団に招集できないだろうか」

「彼は、まだ未成年ですよ?」

「だから、この間の野外実習のときのように権力で……」

 ニルマーラが慌てて騎士団長の口を押さえる。
 権力のゴリ押しだったことは知っていたが、ダニエルは聞こえていないふりをした。

「で、では、皆が戻ってきましたので、アイボウ殿とモーリスの模擬戦を始めたいと思います」

 場を取り繕うようにパンパンとニルマーラが手を打つと、一人の若い男性騎士が中央に出てきた。
 アイボウも、いそいそと前へ出ていく。

 対戦相手のモーリスは、剣を二本構えている。

(へえ、二刀流、いや双剣か。しかも……)

 彼の持つ剣は、二本とも銀色に輝いていた。


 ◇


 アイボウにとっては、初めての無属性魔法の使い手との戦いだ。
 これまでとは違い、相手の武器を飛ばしても魔法で戻ってくる。
 無効化しても、再生成される。

 アイボウの普段の戦い方が通用しない。
 どう対応するのか。
 ダニエルは静かに見つめる。

 試合が開始したが、モーリスは動かない。
 アイボウも動かない。
 お互いに牽制しあっている。

 しばらくして、最初に動いたのはアイボウだった。
 鋭い突きを放ったが、軽く返される。
 追撃はない。
 モーリスは、アイボウの動きをじっと見ている。

 アイボウは徐々に、攻撃のスピードを上げていく。
 しかし、モーリスは受け流したり、剣をクロスさせて受け止めたりと、難なく対応している。
 
 観戦している騎士たちは、最初こそモーリスへ大きな声援を送っていたが、今は誰もが固唾を呑んで試合に見入っていた。

(この人、目が非常に良いんだな)

 アイボウの動きに反応できるだけでも、ダニエルにとっては驚愕すべきことだ。

(さて、アイボウはどうするのか)

 フォスター伯爵領騎士団のピーターと対戦したときに披露した回転斬りを仕掛けたが、モーリスにはしっかりと受け止められた。
 やはり二本の剣、それも同じ魔道具だから守りも固い。

 だが、アイボウに焦りは感じられない。
 逆に、嬉々としたように見える。

 アイボウに目はないが、目の色が変わったような気がした。
 ヘッドが隙間ノズルへと変更される。

 面の広いヘッドは攻撃だけでなく、盾の代わりも果たしていた。
 その防御を捨て、アイボウは攻撃に全振りした。
 先端を細い隙間ノズルへ代えることで、スピードも上昇する。

 さらにギアを上げてきたアイボウの攻撃に、モーリスは対応ができなくなってきたように見える。
 ダニエルの動体視力では、動きを目で追うのがやっとだ。

 そして、勝負は決まる。
 再び回転斬りを繰り出したアイボウにモーリスはどうにか対応したが、クロスした二本の剣は跡形もなく消え去った。

 アイボウが、モーリスの喉元に隙間ノズルを突きつけていた。

「ま、参りました」

「勝者、アイボウ殿!」
 
 試合後の挨拶をし、アイボウが戻ってきた。隣にはモーリスが、後ろには団長と副団長も続いている。

「ダニエル殿の魔道具は、すごいな。まさか、私の双剣が通用しないとは思わなかったよ」

「無属性で武器を二本出すのは、やはり珍しいのですか?」

「普通は一本だからね。でも、珍しさでもアイボウ殿には負けるよ。自発的に動く魔道具が、本当に存在するなんて……」

 話には聞いていたが、術者が操作していると思っていたとモーリスは語る。
 ダニエルはせっかくなので、疑問を尋ねてみることにした。

「アイボウの最後の一撃は、一度目はモーリスさんに受け止められたのに、なぜ二度目は通用したのでしょうか?」

 双剣に魔力では修復が追いつかないくらいの亀裂があったのですか?と聞いたところ、モーリスだけでなくニルマーラもイザギオも「そうではない」と首を横に振った。

「アイボウ殿は、『二回転斬り』をしたんだよ」

「二回転……」

 速すぎてダニエルは目で追えなかったが、この三人にはしっかりと見えていたようだ。

「あんな凄まじい威力では、双剣だけでなく盾でも破壊されますな」

「私の剣でも、真っ二つになっていただろう」

 騎士団のツートップが、率直な感想を述べ合っている。

「あのヴァキシムでも二回転斬りはできないから、今度彼に会ったときに話してやろう。きっと、悔しがるぞ……」

 クックックと楽しげな笑みを浮かべるモーリスは、ヴァキシムと親交があるとのこと。
 アイボウのことも、ヴァキシムから聞いたそうだ。

「次に対戦するときまでに、受け止められるよう鍛練しないとね」

「あっ、モーリスさん、アイボウが……」

「うん?」

「その時までに、自分は三回転斬りを習得しておきたいと……」

「そ、そうなんだ、うん……私も頑張るよ」

「「・・・・・」」

 場に微妙な空気が漂うなか、連続訪問は無事(?)終わったのだった。

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