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21、化け物の番
(まただ、何でだよ……)
ここのところ、妙な性欲に悩まされ続けている。
自分は昔から、異様なほど性欲が薄い方だと思っていた。思春期に同級生が性的な話をしていても興味が持てなかったし、大人になって女を抱きたいと感じたことがない。
別に、勃起不全だとか問題があるようではなかった。たまには自慰もするが、頻度は一般の男性と比べるとかなり少ないはずだ。
それが何故かここへきて、耐え難くなっている。悶々とする、というのはこういう状態を指すのだろう。女を抱きたいという衝動なのかはよくわからないが、とにかく下半身がむずむずした。
先ほどヘルマンに背中を触れられた時も、勃起しそうになって慌てたのだ。勃ってしまったらどうにも言い訳ができない。
(何で……何で)
目を閉じると、ヘルマンの裸体を思い出した。均整のとれた体つき。ほどよく筋肉のついた、彫刻のような肉体。
(この渇きは、何だ?)
動揺が収まらない。自分の体を自分でコントロールできず、何かに呑まれてしまいそうだった。
うつむいて衝動に必死で耐えていたところ、部屋のドアが開く音を耳にして顔を上げる。
裸に適当に服をひっかけただけのヘルマンがそこに立っていた。半裸の青年は、非人間的な色香を漂わせている。風呂上がりでも顔は上気しておらず、その白い肌はまるで石でできているかのように冷たく思われた。
「……来るな」
「父様は僕から離れたいんですか?」
心の内を言い当てられて、弘明は返答に窮する。ヘルマンが射抜くような視線をこちらに向けており、その熱っぽさに困惑した。薄く、形の良い唇が動いて言葉を紡ぐ。
「逃がさない。あなたは、たった一人の僕の番だ」
「は……?」
弘明が目を見開いた瞬間、ヘルマンの背部から黒い触手が生えてきて、弘明の方へと急速にのびていった。
腕に触手が絡みつく。そのままベッドに押しつけられて、体が起こせなくなってしまった。ヘルマンがゆっくりと歩いてくるのを見て、そのただならない雰囲気に弘明は声を失った。
「父様も僕を求めていたはずです。僕が成獣となり、準備が整ったのを体が感じていたでしょうから」
何の話だ。さっぱり意味がわからない。
そうやって、鈍いふりをしていたいのに、心の奥底では気づいていた気がして、恐怖で体が硬直する。それは、何に対する恐怖なのだろうか。
何本もの触手が、弘明の肌に触れてくる。腹や背中の上を這う。シャツの前はしめておらず、そのはだけた胸にも触手は触れた。敏感な突起をこすられ、弘明は短い悲鳴をもらす。
「やめろ……ヘルマン……!」
触手達は器用に弘明が下に履いているものを脱がしていった。痛いくらいに勃ち上がっている陰茎が露わになり、弘明は赤面する。
こんなの、こいつに見られたくない。
情欲を宿した紅の瞳が、弘明に向けられている。催眠術にでもかかったように、そこから目が離せなかった。
今まで見た、どんなものよりもヘルマンは美しい。世界で一番美しい化け物だ。
ヘルマンはベッドに上がると弘明にのしかかってきた。抵抗しようと体を動かすが、手も足も触手に拘束されているのでどうにもならない。
ヘルマンがそっと弘明の頬に手を添え、唇を重ねてくる。
ぬるりと舌が咥内に侵入してきた。長い。明らかに、普通の人間のものより長かった。そして存外、熱かった。
弘明が苦しまないよう、息をするのに配慮しながらヘルマンは舌を絡めた口づけを続ける。甘い唾液を流し込まれて、弘明はそれを飲み込んだ。
ヘルマンの唾液は、禁忌の味がした。喉を焼きながら、胃の腑に落ちていく。飲んだ瞬間から、明らかに体がおかしくなっていった。
力が抜けて、触れられている部分のどこもかしこも気持ち良さを感じる。
思考が鈍くなり、逆に快感に対しては敏感になっていった。
(気が狂う……!)
「ん……、んんっ……」
残り滓のような理性で自分を叱咤し、ヘルマンから逃れようとした。しかし、無駄な努力だった。
「あなたは自分を責めていて、父親というまともな役割から降りたがっている。真っ当なものが受け入れられないんだ。なら、どうです? この関係は。あなたは僕の妻になる。育てた息子と交尾をするという歪んだ関係を結んだなら、離れずにいてくれますか?」
「ヘルマン、落ち着け」
ヘルマンが苛立っているところを初めて見たかもしれない。聞き分けの良い息子だったから。
彼は怒っていたし、すがってもいた。もう我慢できない、と感情を爆発させようとしている。
弘明の足が持ち上げられ、みっともない格好で、後孔がヘルマンの方へとさらされる。ヘルマンから伸びた触手の一本は先が卑猥な形をしており、それが弘明の秘部へと近づいていた。
何かの液が分泌された黒い触手が、体内へとめりこんでくる。経験したことのない感触に一瞬不快さを感じたが、すぐに猛烈な快感に変わった。
「あっ! あぁ……、ぐぅっ!」
そうして中を犯されている間も、他の触手の愛撫は止まらない。
「父様。これで慣らせば、楽に入りますからね」
中のものは内部をさぐるように奇妙な動きをしつつ、押し広げていく。何が起きているのかわからない。弘明は喘いで身悶えするが、快感は増していく一方で、意識が飛びそうだった。
「あん、んんっ!!」
ヘルマンに怒張したそれを握られると簡単に射精した。勢いよくほとばしり、ヘルマンの胸へとかかる。
「ヘル、マン……」
「心から愛してます。父様」
触手が抜かれ、ひくつくそこにヘルマンが己の男根を突き入れた。
「ま、待て! ヘルマン!」
ヘルマンが弘明の腰をわしづかみ、腰を叩きつけてくる。彼の言うように慣らしたおかげか、面白いくらいスムーズにそれは奥まで滑りこんできた。
とてつもない刺激だった。弘明は体をしならせて、声をあげる。
「あぁあっ、あっ、ぅあぁっんっ、ぁッああぁ!!」
「父様、父様……」
首を、胸を、腹を、この上なく優しく、そして淫らに触手が撫でていく。胸の飾りに触手の先端が吸いつき、こねまわす。
ヘルマンの勃起した男根は巨大で、奥まで貫かれると体が裂けるのではないかという衝撃を受けた。しかし痛みはなく、筆舌に尽くしがたい気持ち良さに翻弄されるだけだった。
ヘルマンの腰は止まらず、弘明は何度も達して、先から迸らせた。
自分の身はバラバラになって、消えてなくなってしまうのではないかと何度も思った。現実に引き戻されそうになった途端にまた意識が飛びかける。
少しでもヘルマンの動きが弱まると、弘明はあられもなく腰を振った。
――そうして、どれくらい時間が経っただろうか。
ベッドに横たわる弘明はいつの間にか触手から解放されていた。息を切らしながら確認すると、半裸のヘルマンはベッドの端にちょこんと腰かけている。
表情なく長い間うつむいていたが、やがてヘルマンは立ち上がると布を取って戻り、弘明の体を拭いて清め始めた。
精魂尽き果てかけている弘明は、ヘルマンのその行動をじっと眺めていた。
「何なんだ、これは、一体」
長い時間をかけ、かすれた声でようやく弘明が発したのはこの一言だった。
「エドモンドから聞いていないのですか」
「何を」
ヘルマンは、ため息未満の吐息をもらして続けた。
「あなたは、僕という化け物の番です。覚えていますか? 僕がまだ幼獣だった頃。父様と出会った時です。僕はあなたを噛みましたね。そうして、味を覚えた。その時から僕はあなたを番に選んだのです」
交尾ができるのは、成獣になってからだ。それまでは互いに性的には意識しない。だが、体が出来上がれば発情する。それは番に選ばれた側も同じなのだ。
噛まれた時に、ヘルマンの唾液が血液を通して体内に吸収されている。
その話を、弘明は愕然としながら聞いていた。初耳にもほどがある。
森の化け物の中でも、白い子供のヘルマンは特別な存在で、人間と番うことができるのだった。
「エドモンドは、それを知ってたっていうのか」
ヘルマンは頷いた。
「あの男はリオートリエ王国の王族です。森の化け物のことはよく知る立場にあった。彼は昔から化け物のこと調べていましたし、王族だけに伝わる古文書も読み込んでいた。僕が何者で、いつ現れるかも承知していたはずです。エドモンドはみんな知っていたんです」
疲労困憊でもう起き上がれないと思っていた弘明だが、怒りで目の前が真っ赤になった。
ヘルマンと何をしたとか、番だとか、混乱もあったが、今は怒りで頭が支配される。
弘明は飛び起きると、脱ぎ散らかしてあった服を身につけ、裸足のまま部屋を飛び出した。ヘルマンがそれを追いかけてくることはなかった。
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