底辺令嬢と拗らせ王子~私死んでませんけど…まあいいか

羽兎里

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美味しいお茶を入れましょう

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母様は元々綺麗だったけれど、今はそれ以上に美しいです。

「母様、とても綺麗です。一体どんな魔法を使ったのですか?」
「まあエレオノーラ、今までが魔法だったのよ。これは素のわ・た・し。分った?」
「はい、もちろんです」

何故か逆らう気が起きません。

「エレオノーラ、言っておくが今のお前は母上以上に美しいぞ」
「シルベスタ、今何か言った?」
「ジャクリーン、君が誰よりも一番美しいよ」
「オーホッホッホッ」

通常通りの楽しい我が家です。


それからの私は今一度、近隣諸国の常識。
この国と他国の関係、それぞれの国の考え方や、貴族という存在。
魔法について、その他いろいろな事をスパルタで叩き込まれました。

「あなたが成人した以上、うかうかしていられないのよ」

何がですか?
でももうこれ以上入りません、お腹いっぱいです。
これ以上無理だと脳が拒絶しています。
頭を傾ければ、耳や鼻や口から、覚えた事が流れ出そうな気がします。

「一晩寝れば、記憶何て安定するものよ」

美味しく入れたお茶を啜りながら、事も無げに母様が言いますけど、そんな物でしょうか?



『エレオノーラ、今は手が空いている?』

母様からの通信です。
いつの間にかイカルス兄様が、シャインブルク様から例の魔石を仕入れてきて、私の身内に配りまくっているそうです。
私、どれだけ皆様に人気が有るのでしょう(信用が無いだけ)

「はいはーい。また買い物ですか?」

母様はこちらのリーズナブルで新鮮な物の仕入れを、よく私に言いつけるようになりました。

「違うわ。ちょっと話があるのよ。もし時間が無ければ、このままでも構わないのだけれど………」
「行きますよ」

直接顔を見ながら話した方が楽だもの。


「母様来ましたよ~」

急ぎお茶菓子を買い求めてから移動して来ましたよ。
少しでも母様の機嫌が良くなるように。

「あら、早かったのね?」
「はい、頑張りました」

ぜーぜーぜー。
後が怖いですからね。

「まあ一息入れましょう」

母様はウキウキと私のお土産を受け取り、さっそくお茶を入れている。
買ってきて良かったわ~~。

あら、やっぱり母様のお茶美味しいわ。
私はずずっとお茶を啜りホッと一息ついた。

「所で何かあったのですか?もしお金の事なら、私もお給料を(何故か)貰っていますから、お渡しする事も出来ますよ?」

今の私のしている事と言えば、兄様にお茶を入れたり、隊長のお茶の相手とか、調理場に行って、元気にな~れ、美味しくな~れって鍋をかき混ぜているぐらいだもの。

「そんなのはどうでもいいのよ。たださっき厄介な客が来てね、そろそろ本格的に動く事になりそうだから、あなたもそのつもりでいてね」
「厄介な客?誰ですかいったい………」

母様が厄介と言うならば、実際かなり面倒くさい客なのだろう。

「……あなたの婚約者」
「え~、いないでしょうそんな人」

だって私、この辺りではまだ死んだ事になってるしでるし、死んでる人に婚約者なんていないでしょう。

「私達もそう思って油断していたわ。どうやらアレクシス様ってば、まだあなたの事を諦めてないみたいなの」
「はあぁ~~!?私の事を諦めていないって有り得ないでしょう。死んだ人間を諦めず婚約者だなんて、何の生産性も無いじゃない」
「なのよねぇ。でも更に悪い事に、あの様子だと、思い残す事が無くなったなら、あなたの下に行こうと思っているみたいなの。いや、確実に行くつもりね」
「私の下って……カリオン?」
「違う違う、あっちよ」

そう言って母様は天を指さした。

「だってあっちにいるのは、私じゃなくてミシェルでしょう?」
「なのよね。でもほら、あちらさんはあなたが生きているって知らないじゃない?でもこのまま放っておいたら、絶対ミシェルの所に行っちゃうと思うの」
「で、あちらで私では無くミシェルに会うと」
「多分そうなるわね、まあ私達は別にそれでもかまわないけれど……」

かまうでしょう!
死のうとしている人を救う事が出来るのに、それを見過ごすことなど出来ないよね。

「ふふ、やっぱり放っておけないわよね。だから行動を起こすのを早めようと思います」
「その行動って、何をするのか纏まったの?」

色々な意見を出し合って、この先どうすれば良いのかを話し合ったけれど、漠然としたストーリーしか出来上がっていないのが現状だ。

「だから、母様としてはプランAとプランCを適当にミックスして、進めようと思うのよ」

なるほど、相手をビビらしてから……ってやつですね、分かりました。

「だから最終調整をしたいから、今夜はカルロスとシルベスタを連れてきてもらいたいの」
「了解しました!」


まず兄様達と打ち合わせしなくてはと、例も赤い魔石……面倒くさいので、通信石としますね。
で、その通信石で連絡を取りました。

「と言う訳なんですけど、イカルス兄様は何時頃来れますか?」

う~んと唸りながら、何やら考え込んでいる様子。
少し考えたい事が有るから、30分ぐらいしたら、こちらから連絡するから待ってくれと言われました。
了解です。

「んじゃぁその間にシルベスタ兄様に連絡を入れよう」

と思ったら、シルベスタ兄様にも同じことを言われました。
何か、また面倒になりそうな予感がします………。

すると30分もしないうちに、イカルス兄様から連絡が有りました。

「お前は1日に何度転移が出来る?1回に何人ぐらい運べるんだ?」
「さあ?どれぐらいでしょうね?数えた事無いから何とも言いませんが、かなりいけると思いますよ?」

例えば一個中隊を連れて、1日に数回どこかに移動するとか……。
それを聞いた兄様が、通信石越しに、大きなため息を吐いた。
ごめんなさい、もっと力付けて、一個大隊ぐらい運べるようにします。

「違う…、まあ今はいい。それなら無理を言ってもいいか?」
「私に出来る事でしたらなんでも!」
「いや、そんなに大げさに考えなくてもいい。ただ会談の場を、ここカリオンにしてもらいたい。それから父上達をここまで運んでもらいたいんだ。ついでにシルベスタも」
「うちじゃあダメなんですか?」
「あぁ、多分そこでは狭すぎると思う」

え~、いつも家族5人で湧き合い合いとやっていたじゃないですか。

「実はこの際、先にシュカルフ様に知らせておいた方がいいと思ったのだが、彼が動くとなると、護衛などと一緒の移動となるからね。ならばこちらに来ていただいた方がいいと思ったのだ」

なるほどね、兄様はきっと私の負担が少ない方を選んでくださったんだ。
母様たちの了承を得たので、私はこのままこちらにいて、時間が来たなら、シルベスタ兄様を拾ってカリオンに向かう事になりました。

「大変大変、久しぶりの正式なお招きだから力入れなくちゃ!」

そう言い、母様はクロゼットに走って行かれました。

ところがシルベスタ兄様にそれを話したところ、兄様も同じような事を考えていたとのこと。
兄様も裏ではシャインブルクさんと繋がっていたらしく、この話し合いに彼も出席してもらおうと思い連絡を取ったらしいです。

「彼は久しぶりにルドミラさんに会えると喜んでいたよ。それじゃあ午後5時にシャインブルク様の屋敷まで迎えに来てくれ。待っているよ」

そう言い、通信が切れました。

午後5時ですか、夕飯はどうなるのかなぁ。
イカルス兄様の所に集まるなら、シルベスタ兄さんの行く時間とか、人数の変更とか伝えておいた方がいいのかなぁ。
あれ、シャインブルクさんの護衛も行くのかな?
もしいるなら、その人達の食事はどうするのかな。

「そんな事エレオノーラが考える必要なんてないのよ。それはあちらの仕事なんだから」

母様の一言で、全て解決しました。
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