底辺令嬢と拗らせ王子~私死んでませんけど…まあいいか

羽兎里

文字の大きさ
53 / 109

ラスボス

しおりを挟む
「もしかして、皆は分かっていたんじゃないのか!」

なんちゃって討論会も終盤に差し掛かり、ようやくルンデンさんが気付き始めたようです。

「大体にして殆ど私とジャクリーン様との話じゃないか。こんな話に君が加わらず、ただ傍観しているだけなんておかしすぎる!」

そう言い、ビシッとシュカルフ様を指さしました。
こらこら、人を指さしちゃダメってお母さんに言われませんでしたか?

「おかしな事を言う。私達の聞きたい事を君が率先して聞いてくれているから、あえて言う必要が無かったただけだよ」
「嘘だ!大方僕だけ部外者で、君達はそれを利用していたんだ!」
「まあ確かに私達はエレオノーラ様と面識があるが、だからと言って君を軽んじた覚えはないよ」
「嘘だ!!……いいんだ、どうせ僕なんて君の遊び道具に過ぎないんだ。きっと君は全てわかっていて、何も知らない僕の事を、心の中で笑っていたんだ!」

いつも君はそうだ、とか言っていじけているルンデンさんが可哀そうです。
分ります!自分一人が誰かの手のひらの上で、何も知らず転がっているのって、悔しくて、空しくて、でもどうにもならないんですよね!

「エドガー、確かに君だけにジャクリーン様の相手をさせてしまったな。すまなかった。だが私達やジャクリーン様達にも”建前が”必要なのだよ。それには、少し調べればガルディア家と付き合いがあると分かってしまう私達より、付き合いの無い君が必要だったんだ」
「必要?私が必要だからだったのか?」

ルンデンさん、そう言われたとたんに顔をほころばせ、喜んでいるご様子ですが、だまされちゃぁダメですよ。

「だからもし、王家からの魔の手が迫った時、君には私達の援護射撃をしてほしい」

つまりですね、もし王家の方で、君達は元々事実を知っていて、王家を欺いていたんだろうと言われたなら、ルンデンさんが”違います、彼たちはあの時に私と共に初めてその事を知ったのです!”と証言してくれと言う事ですか。
酷くありません?
それでもルンデンさんは嬉しそうに”任せてくれ”と言っているので、あえて私はその気持ちを失墜させる事はしませんが。



「私達の事は、分かっていただけましたね。娘はあれ以来病弱となり、姿もあのように(オヨヨヨ……)本人がアレクシス様と結婚したくないと言う気持ちも有り、私達は娘を王家に輿入れさせる事が出来ないのです。しかし娘の生存が分かった時、あちらには娘が死んでも諦め切れない人もいますし、婚約者と言う立場を盾に取り、再び結婚を迫って来る事も考えられます。ですが我が家としても、断固として戦う所存でおりますので、ご容赦下さい」
「しかし、こう言っては失礼にあたりますが……、王室に入った方が、エレオノーラ様は手厚い看護が受けられるのでは?」

初対面の伯爵様に”様”を付けられちゃいました~。

「ご心配いただきありがとうございます。そちらの方はどうぞご心配なく。私自身の封印も解きましたから」

多分その意味が分かったと思われる人が、動揺を隠し切れないようで、青くなりいきなり椅子から立ち上がったり、目を見開き母様を見つめたり。
その様子を不思議そうに眺める人がいたり。
二極性に分れ、それぞれの思考力の違いが分かって面白いですね。

「まあ、そのように動揺しなくとも、私自身、常識を備えていますので恐れる事は有りません」

母様独自の基準ですね………。

「そうそう、加えて伝えておきますが、エレオノーラは”ディア・アレルヤ”であり、先日その封印を解きました」

皆さん母様以上の目を、なぜ私に向けるのですか?
私だって母様と同じく常識は持っていますよ?

「そ…れは、神似者が二人も……」
「この国の頂点は決定したと言う事ですね……」
「いや、世界……だろう」
「頂点って、王家の事ですよね?それがいかにもあの家が……」

そう言い、ルンデンさんがちらりとこちらを見る。
そうですよね、一体何を言っているのでしょう。
やはりルンデンさんとは気が合いそうです。

「あれはお飾……象徴であり、その裏で真に国を動かすのはまた別………」
「申し訳ございません、家族が大変ご迷惑をおかけします」

イカルス兄様がすごく恐縮するようにシュカルフ様に頭を下げてます。

「あぁ!あちらより力の勝るこちらの方が、真のボス、ラスボスなんですね」

ルンデンさん鋭い!って、母様、ラスボス認定来ちゃいましたよ。
どうするんですか?

「と、言う訳で、こちらは全力でこの婚約を阻止する構えです。もし何かしらのアドバイス(異論)が有れば、私どもが直談判に行く前に教えてください」
「一つ質問をお許しいただけますか?ご実家で在られるエクステッド侯爵様の方は、如何なさるおつもりでしょうか」
「取りあえず放置…ですわね。見捨てたとはいえ一応血は繋がっていますから慈悲は有ります。あちらにそれなりの実力が有ればよし、さもなければいずれ衰退するでしょう」
「御意」

固い!空気が固すぎます!なぜこうなった!
でも父様は変わらず、とても暖かい目で母様を見つめています。
私も結婚するなら、父様みたいな人がいいなぁ。

大体の日程と報告が終わったので、会議はお開きになりました。
皆さん明日もお仕事が有りますものね。
随分とヘロヘロに見えますが、大丈夫ですか?
そう思い、皆様に私特製のお茶を入れて差し上げました。
ずいぶんと驚いているようでしたが、我が家にとって、母様直伝の普通のお茶です。


「エレオノーラ様、少々お時間をいただいてもかまいませんでしょうか」

シリアスモードの隊長です。
今度は何ごっこですか?
すると隊長は私の前で片膝をつき、騎士の礼を取る。

「敬愛するエレオノーラ様、もしあなたが許されるなら、私はこの先、生涯を掛け、あなたにお仕えする事を誓いたい」

え~?この場合なんと返せば正解なんだろう。

「……許す?」
「有りがたき幸せでございます」
「って、隊長、いつまでもそんな恰好してないで下さい」

そう言い、隊長の手を引っぱる。

「でも隊長、今の凄くかっこよかったですよ。さすがミラ姉様です」

ぎゅっッと隊長に抱き着いて、スリスリしてしまいました。
うん、役得。

「エ…ルちゃん…エルちゃん可愛い!!」

はい、通常通りの隊長に戻りましたね、良かった。
でもその横で複雑そうな顔をしているシャインブルクさん。
一体どうしたんですか?
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

シリアス
恋愛
冤罪で退学になったけど、そっちの方が幸せだった

婚約破棄された令嬢は“図書館勤務”を満喫中

かしおり
恋愛
「君は退屈だ」と婚約を破棄された令嬢クラリス。社交界にも、実家にも居場所を失った彼女がたどり着いたのは、静かな田舎町アシュベリーの図書館でした。 本の声が聞こえるような不思議な感覚と、真面目で控えめな彼女の魅力は、少しずつ周囲の人々の心を癒していきます。 そんな中、図書館に通う謎めいた青年・リュカとの出会いが、クラリスの世界を大きく変えていく―― 身分も立場も異なるふたりの静かで知的な恋は、やがて王都をも巻き込む運命へ。 癒しと知性が紡ぐ、身分差ロマンス。図書館の窓辺から始まる、幸せな未来の物語。

処理中です...