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お師匠様
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「しかし女神はこの国随一の盾をご所望か……」
「いや君こそ、その知力を求められたのは頷ける」
「僕は?ねえ僕は?」
シュカルフ様、ルンデンさんから目を逸らさず、スルーしないでちゃんと答えてあげて下さい。
「いや、君の類稀なる魔力は類を見ない。だからこそ私は君も領主となるべきだと思い、国に進言したのだ。多分近々、君の爵位も上がるだろう。それに私は君のその純真さも気に入っているのだよ。だがな、もう少し慎重になった方が良い。それに付け込み、利用しようとする奴も出るだろうから(お前が言うなよ!)」
「ルンデンさんは魔法が得意なんですね。どうやら私も得意みたいなんですよ」
気が合いそうだと感じたのは、きっとそのせいなんですね。
「ルンデンさんはどんな魔法が得意なんですか?私は一瞬で薪を割ったり、お風呂の水を適温で満たしたりできるんですよ!最近では薪を使わずお鍋を沸騰させて、料理したり、風さんにお願いして、洗濯物を瞬時に乾かしてもらう事も出来るようになりました」
「へー便利そうだね、いいなぁ。僕は植物に関する事が得意かな?それに付随して、気象を操る事も少しならできるよ。でもこの間失敗しちゃって、魔力暴走?で大嵐になっちゃった。もっと鍛錬しなくちゃね?」
「気象ですか?面白そうですね。前が見えないほどの霧って、幻想的で素敵だし、先日見た雪もとても綺麗だったな………今度私もやってみよう…」
「「「やめなさい!」」」
なぜみんな止めるんですか。
そんなに怒らなくてもいいじゃないですか。
「エレオノーラちゃん、気象を操るにはルールがあるんだよ。真夏に雪なんか降らせれば、せっかく成長しようとしている植物さん達が凍っちゃうし、いきなり嵐にしたら、備えていない人たちに甚大な被害が出るでしょう?つまり気象を操ると言う事は、全てを考え予測し、責任を持って行動しなければいけないんだよ。もしそれを違えれば世界はメチャクチャになってしまうからね」
ルンデンさんがちょっとどや顔が混じった慈悲深い顔をし、私に優しく説明をしてくれました。
「凄いですルンデンさん、まるで賢者様の様です」
これからはお師匠様と呼ばせてもらいます。
「今度、ルンデンさんの所に遊びに行ってもいいですか?」
「えぇ、構いませんよ。ぜひいらしてください、僕も楽しみにしています」
シュカルフさん、何でそこで大きなため息をつくんですか?
「君たちは会わせない方が良かったかもしれない……」
「せっかくここまで来たんですもの。イカルスが仕事するところ見ていてもいい?」
あぁ、いわゆる参観日ってやつですね。
「でも母様、たいして面白くないですよ。兄様の仕事って、事務仕事とか、むさい男相手に訓練とか」
「母親の目は他の人と違うのよ。我が子が働く姿は、どれほど見ていても嬉しい物なの」
これは長時間…いえ、下手をすれば24時間貼り付くつもりですね。
「勘弁して下さい母上、そんな子供みたいなことを……」
「あら、イカルスはいつまでたっても私の子供よ?」
母様はそう言い、とても嬉しそうですが、兄様には兄様のメンツと言うものが有ります。
部下の前で母親がべたべたする姿を見せたく無いんですって。
「仕方ありません、明日一日カリオンの町を案内してあげますから、それで勘弁して下さい」
「もう、イカルスったらそんなに照れなくてもいいのに。でもいいわ、明日は家族そろってカリオン観光ね」
しかしシルベスタ兄様はどうしても外せない仕事が有ると、シャインブルクさんと共に帰ろうとしましたが、母様が強引に留まらせたようです。
残念でしたね、兄様。
「ねぇねぇエレオノーラ、この間買って来てくれたパイのお店ってどこにあるの?あれって他のバージョンも有るんでしょう?」
「あぁ、この間のフルーツパイですね。ほかにはクリームパイとかミートパイとか色々有って、カット売りもしているんですよ」
「ステキ!ねえイカルス、絶対に寄ってね」
えぇ、分かりましたよと、諦めモードの兄さまです。
今日一日付き合うと約束したから仕方ありませんね。
「イカルス、辺境の様子はどうなんだ?」
「そうですね、最近は魔物がこちらに迷い込んで来る事は以前より少なくなりました。どうやら5年ほど前に張った結界が功を奏したようです」
「なるほど、しかしこの町もあの魔の森に面している上に、その向こうには蛮族の住む広大な地域が控えている。いつ何時結界が用を果たさなくなるやもしれない以上。気を抜く訳にはいかないね」
「心得ております」
すると、そんな話が呼び寄せてしまうのか、道の向こうから馬を駆け、一人の騎士がすごい勢いでこちらに走ってきます。
悪い予感しかしません。
それは兄様も感じたのか、馬車を止め飛び降り、その馬を止めます。
「何か有ったのか!」
「これは!ガルディア様、良い所で。大変です!西のベルディスク砦付近でスタンピードの発生です!今はまだ結界で持ち堪えておりますが、時間の問題かと思われます!!」
「スタンピードが!」
はい、予感が当たりました。
「父上、申し訳ありませんが私はすぐに城に戻り、軍を連れ魔物を殲滅に向かいます。父上も皆を連れ、安全な所に避難してください!」
「いや君こそ、その知力を求められたのは頷ける」
「僕は?ねえ僕は?」
シュカルフ様、ルンデンさんから目を逸らさず、スルーしないでちゃんと答えてあげて下さい。
「いや、君の類稀なる魔力は類を見ない。だからこそ私は君も領主となるべきだと思い、国に進言したのだ。多分近々、君の爵位も上がるだろう。それに私は君のその純真さも気に入っているのだよ。だがな、もう少し慎重になった方が良い。それに付け込み、利用しようとする奴も出るだろうから(お前が言うなよ!)」
「ルンデンさんは魔法が得意なんですね。どうやら私も得意みたいなんですよ」
気が合いそうだと感じたのは、きっとそのせいなんですね。
「ルンデンさんはどんな魔法が得意なんですか?私は一瞬で薪を割ったり、お風呂の水を適温で満たしたりできるんですよ!最近では薪を使わずお鍋を沸騰させて、料理したり、風さんにお願いして、洗濯物を瞬時に乾かしてもらう事も出来るようになりました」
「へー便利そうだね、いいなぁ。僕は植物に関する事が得意かな?それに付随して、気象を操る事も少しならできるよ。でもこの間失敗しちゃって、魔力暴走?で大嵐になっちゃった。もっと鍛錬しなくちゃね?」
「気象ですか?面白そうですね。前が見えないほどの霧って、幻想的で素敵だし、先日見た雪もとても綺麗だったな………今度私もやってみよう…」
「「「やめなさい!」」」
なぜみんな止めるんですか。
そんなに怒らなくてもいいじゃないですか。
「エレオノーラちゃん、気象を操るにはルールがあるんだよ。真夏に雪なんか降らせれば、せっかく成長しようとしている植物さん達が凍っちゃうし、いきなり嵐にしたら、備えていない人たちに甚大な被害が出るでしょう?つまり気象を操ると言う事は、全てを考え予測し、責任を持って行動しなければいけないんだよ。もしそれを違えれば世界はメチャクチャになってしまうからね」
ルンデンさんがちょっとどや顔が混じった慈悲深い顔をし、私に優しく説明をしてくれました。
「凄いですルンデンさん、まるで賢者様の様です」
これからはお師匠様と呼ばせてもらいます。
「今度、ルンデンさんの所に遊びに行ってもいいですか?」
「えぇ、構いませんよ。ぜひいらしてください、僕も楽しみにしています」
シュカルフさん、何でそこで大きなため息をつくんですか?
「君たちは会わせない方が良かったかもしれない……」
「せっかくここまで来たんですもの。イカルスが仕事するところ見ていてもいい?」
あぁ、いわゆる参観日ってやつですね。
「でも母様、たいして面白くないですよ。兄様の仕事って、事務仕事とか、むさい男相手に訓練とか」
「母親の目は他の人と違うのよ。我が子が働く姿は、どれほど見ていても嬉しい物なの」
これは長時間…いえ、下手をすれば24時間貼り付くつもりですね。
「勘弁して下さい母上、そんな子供みたいなことを……」
「あら、イカルスはいつまでたっても私の子供よ?」
母様はそう言い、とても嬉しそうですが、兄様には兄様のメンツと言うものが有ります。
部下の前で母親がべたべたする姿を見せたく無いんですって。
「仕方ありません、明日一日カリオンの町を案内してあげますから、それで勘弁して下さい」
「もう、イカルスったらそんなに照れなくてもいいのに。でもいいわ、明日は家族そろってカリオン観光ね」
しかしシルベスタ兄様はどうしても外せない仕事が有ると、シャインブルクさんと共に帰ろうとしましたが、母様が強引に留まらせたようです。
残念でしたね、兄様。
「ねぇねぇエレオノーラ、この間買って来てくれたパイのお店ってどこにあるの?あれって他のバージョンも有るんでしょう?」
「あぁ、この間のフルーツパイですね。ほかにはクリームパイとかミートパイとか色々有って、カット売りもしているんですよ」
「ステキ!ねえイカルス、絶対に寄ってね」
えぇ、分かりましたよと、諦めモードの兄さまです。
今日一日付き合うと約束したから仕方ありませんね。
「イカルス、辺境の様子はどうなんだ?」
「そうですね、最近は魔物がこちらに迷い込んで来る事は以前より少なくなりました。どうやら5年ほど前に張った結界が功を奏したようです」
「なるほど、しかしこの町もあの魔の森に面している上に、その向こうには蛮族の住む広大な地域が控えている。いつ何時結界が用を果たさなくなるやもしれない以上。気を抜く訳にはいかないね」
「心得ております」
すると、そんな話が呼び寄せてしまうのか、道の向こうから馬を駆け、一人の騎士がすごい勢いでこちらに走ってきます。
悪い予感しかしません。
それは兄様も感じたのか、馬車を止め飛び降り、その馬を止めます。
「何か有ったのか!」
「これは!ガルディア様、良い所で。大変です!西のベルディスク砦付近でスタンピードの発生です!今はまだ結界で持ち堪えておりますが、時間の問題かと思われます!!」
「スタンピードが!」
はい、予感が当たりました。
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