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鳥さん…いえ、違います
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ごめんなさい、本日二度目の投稿です。前話(お師匠様)を読んでないよって言う方。そちらからお入りください!
============
「ねぇねぇイカルスゥ」
母様が、兄様の軍服の裾をつまみ、目を輝かせながらつんつんと引っ張ります。
その意味を察したのか、チラッと父様を見る兄様。
「イカルスすまない。ジャクリーンの我儘を聞いてくれないか?」
はぁ~~。
最近の兄さまはため息がとても多いです。
可愛そうに、何やら苦労が絶えない様子。
「いえ、母上、ぜひお力添えをお願いできますか?」
「もちろんよ、任せてちょうだい!」
どうやら母様がスタンピードを収めに行くようです。
ならば父様は必ず着いて行くだろうし、私とシルベスタ兄様はお留守番ですね。
「君、その事は私達が引き受けた。一応シュカルフ様に報告だけしておいてくれ。女神一行が向かったと言えば理解してくれるだろう」
「はっ!連絡を取り次第、私どももすぐに向かいます。ご武運を!」
「あぁ………任せるよ」
まあ多分、城でお茶でも飲む羽目になると思うが。
「では兄様、母様、頑張ってください!」
そう言いながら手を振ると、その手を母様にガシッ!と捕まれた。
「さっ、行くわよエレオノーラ」
「え~私もですか?」
「何言っているの。ベルディスク砦までどれだけ有るのか分からないけど、あなたがいれば一瞬でしょう?それだけ被害が最小限で抑えられるのよ?」
なるほど納得です。
では皆さんを送りに行きましょう。
ならばと皆それぞれ手をつないでもらい、最後に私も手をつなぐ。
というか、母様に掴まれたままです。
「ところで兄様、ベルディスク砦ってどこですか?」
兄様の持っていた地図で、大体の場所は把握しました。
「今はここ、そしてこの山はあそこに見えている奴だ。その山間のここにベルディスク砦が有る」
確かにあそこに見える山と山の間が窪んでいますね、その辺にベルディスク砦が有るんですか。
でもなぁ、初めて行く場所にいきなり転移なんて、危なくないかなぁ。
それなら風さんにお願いして、空から目視しながら行った方が良いかなあ。
でもそれを下から見られたら、手を繋いで数珠状態の人が飛んでるのって、爆笑っぽく見えませんか?
それなら大きな鳥さんに来てもらって、その背に乗って飛んで行くって言うのもステキよね。
「何をしているんだ?もし出来ないなら無理をしなくてもいいぞ?」
このままこの馬車で向かってもいい。
そう言いますが、問題はそこではないのです。
「兄様、ケガを覚悟と、間抜けに見えるのと、優雅に行くのと、どれがいいですか?」
「まぁ…その三択ならば、最後の優雅を選ぶが……一体どうしたんだ?」
「分かりました!」
兄様の返事も貰いましたし、ここは優雅に参りましょう。
私はいつも通り手を組み、一心に願いを奏でます。
”お願い鳥さん、私達を乗せて運べる鳥さん、出来れば大人5人が乗っても大丈夫そうな鳥さん、どうか私の願いを聞いて”
暫くそうしていると、突然太陽を遮り巨大な影が現れました。
”我を呼びし者はお前か”
頭の中で声が響きます。
「はい、え~と、私達を運んでくれる鳥さんはあなたですか?」
「鳥さんって…あれはどう見てもドラゴンだろう!?」
そうとも言いますね。
でも、ペールブルーに光り輝く鱗が、いかにも優雅じゃありませんか。
「とにかくここに降りられたら大惨事になる!この先に広けた場所があるからそこに降りてもらえ!」
「了解しました!」
しかしその広けた場所って、よく軍隊のパレードとかセレモニーが開かれる、とても大きな広場の事ですか?
つまり市街地の中心に有る一角で、現在軍隊や騎士さん達が、来月行われる軍事パレードの練習をしている所ですね。(説明っぽ)
そして突然現れた巨大なドラゴンが、広場目指して降りようとすれば、当然そこにいた人はわらわらと逃げますわ。
お騒がせします。
”さて、我にいかような用だ。何やらおぬし達を乗せて運べと言っていたようだが”
「そうなんです。あの山間にあるベルディスク砦に行きたいんですけど、私はまだ行った事が無くて、出来れば誰かに連れて行ってほしいなぁなんて………」
”なるほど、まだ知らぬ地に転移などは自殺行為とも言えよう。見ればお前は我と同族のようだ。その願い叶えてやろう”
「同族?」
同族…私もドラゴンの血を引いているのでしょうか?
そう思い首をかしげる。
”神似者の事だ、まあ年若いお前だ。分らぬならそれでもいい”
それでもいいなら、分からないままでもいいんですね。
ありがとうございます。
「ねえエルちゃん?このドラゴンとお知り合いなの?」
いつの間にか隣にいた隊長が、おずおずと私に問いかける。
「たった今お友達になりました!スタンピードが起こっている所まで、私達を乗せてくれるそうです」
「スタンピード!!」
それを聞いた人々が、青ざめ顔た顔を引きつらせます。
「スタンピードが起きている!すぐに隊列を組み向かうぞ!」
隊長も青ざめ、それでも魔物の群れを倒しに向かうようです。
「ちょっと待てルドミラ、それは無用だ………彼女たちが行く」
「………あぁ~~理解しました。おいお前たち、ドラゴンが去った後、訓練を再開する。それまでは小休止だ」
そう言い戻っていく隊長。
その先にはジョンさん達もいました。
やっほ~と私は手を振ります。
親切なドラゴンさんは羽をスロープのように降ろしてくれて、私達は何とかその背に乗る事が出来ました。
捕まるところがほとんどない背です。
これは慎重に行かなければ。
”では参るぞ、しっかり掴まっておれ”
どこに!
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「ねぇねぇイカルスゥ」
母様が、兄様の軍服の裾をつまみ、目を輝かせながらつんつんと引っ張ります。
その意味を察したのか、チラッと父様を見る兄様。
「イカルスすまない。ジャクリーンの我儘を聞いてくれないか?」
はぁ~~。
最近の兄さまはため息がとても多いです。
可愛そうに、何やら苦労が絶えない様子。
「いえ、母上、ぜひお力添えをお願いできますか?」
「もちろんよ、任せてちょうだい!」
どうやら母様がスタンピードを収めに行くようです。
ならば父様は必ず着いて行くだろうし、私とシルベスタ兄様はお留守番ですね。
「君、その事は私達が引き受けた。一応シュカルフ様に報告だけしておいてくれ。女神一行が向かったと言えば理解してくれるだろう」
「はっ!連絡を取り次第、私どももすぐに向かいます。ご武運を!」
「あぁ………任せるよ」
まあ多分、城でお茶でも飲む羽目になると思うが。
「では兄様、母様、頑張ってください!」
そう言いながら手を振ると、その手を母様にガシッ!と捕まれた。
「さっ、行くわよエレオノーラ」
「え~私もですか?」
「何言っているの。ベルディスク砦までどれだけ有るのか分からないけど、あなたがいれば一瞬でしょう?それだけ被害が最小限で抑えられるのよ?」
なるほど納得です。
では皆さんを送りに行きましょう。
ならばと皆それぞれ手をつないでもらい、最後に私も手をつなぐ。
というか、母様に掴まれたままです。
「ところで兄様、ベルディスク砦ってどこですか?」
兄様の持っていた地図で、大体の場所は把握しました。
「今はここ、そしてこの山はあそこに見えている奴だ。その山間のここにベルディスク砦が有る」
確かにあそこに見える山と山の間が窪んでいますね、その辺にベルディスク砦が有るんですか。
でもなぁ、初めて行く場所にいきなり転移なんて、危なくないかなぁ。
それなら風さんにお願いして、空から目視しながら行った方が良いかなあ。
でもそれを下から見られたら、手を繋いで数珠状態の人が飛んでるのって、爆笑っぽく見えませんか?
それなら大きな鳥さんに来てもらって、その背に乗って飛んで行くって言うのもステキよね。
「何をしているんだ?もし出来ないなら無理をしなくてもいいぞ?」
このままこの馬車で向かってもいい。
そう言いますが、問題はそこではないのです。
「兄様、ケガを覚悟と、間抜けに見えるのと、優雅に行くのと、どれがいいですか?」
「まぁ…その三択ならば、最後の優雅を選ぶが……一体どうしたんだ?」
「分かりました!」
兄様の返事も貰いましたし、ここは優雅に参りましょう。
私はいつも通り手を組み、一心に願いを奏でます。
”お願い鳥さん、私達を乗せて運べる鳥さん、出来れば大人5人が乗っても大丈夫そうな鳥さん、どうか私の願いを聞いて”
暫くそうしていると、突然太陽を遮り巨大な影が現れました。
”我を呼びし者はお前か”
頭の中で声が響きます。
「はい、え~と、私達を運んでくれる鳥さんはあなたですか?」
「鳥さんって…あれはどう見てもドラゴンだろう!?」
そうとも言いますね。
でも、ペールブルーに光り輝く鱗が、いかにも優雅じゃありませんか。
「とにかくここに降りられたら大惨事になる!この先に広けた場所があるからそこに降りてもらえ!」
「了解しました!」
しかしその広けた場所って、よく軍隊のパレードとかセレモニーが開かれる、とても大きな広場の事ですか?
つまり市街地の中心に有る一角で、現在軍隊や騎士さん達が、来月行われる軍事パレードの練習をしている所ですね。(説明っぽ)
そして突然現れた巨大なドラゴンが、広場目指して降りようとすれば、当然そこにいた人はわらわらと逃げますわ。
お騒がせします。
”さて、我にいかような用だ。何やらおぬし達を乗せて運べと言っていたようだが”
「そうなんです。あの山間にあるベルディスク砦に行きたいんですけど、私はまだ行った事が無くて、出来れば誰かに連れて行ってほしいなぁなんて………」
”なるほど、まだ知らぬ地に転移などは自殺行為とも言えよう。見ればお前は我と同族のようだ。その願い叶えてやろう”
「同族?」
同族…私もドラゴンの血を引いているのでしょうか?
そう思い首をかしげる。
”神似者の事だ、まあ年若いお前だ。分らぬならそれでもいい”
それでもいいなら、分からないままでもいいんですね。
ありがとうございます。
「ねえエルちゃん?このドラゴンとお知り合いなの?」
いつの間にか隣にいた隊長が、おずおずと私に問いかける。
「たった今お友達になりました!スタンピードが起こっている所まで、私達を乗せてくれるそうです」
「スタンピード!!」
それを聞いた人々が、青ざめ顔た顔を引きつらせます。
「スタンピードが起きている!すぐに隊列を組み向かうぞ!」
隊長も青ざめ、それでも魔物の群れを倒しに向かうようです。
「ちょっと待てルドミラ、それは無用だ………彼女たちが行く」
「………あぁ~~理解しました。おいお前たち、ドラゴンが去った後、訓練を再開する。それまでは小休止だ」
そう言い戻っていく隊長。
その先にはジョンさん達もいました。
やっほ~と私は手を振ります。
親切なドラゴンさんは羽をスロープのように降ろしてくれて、私達は何とかその背に乗る事が出来ました。
捕まるところがほとんどない背です。
これは慎重に行かなければ。
”では参るぞ、しっかり掴まっておれ”
どこに!
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