底辺令嬢と拗らせ王子~私死んでませんけど…まあいいか

羽兎里

文字の大きさ
55 / 109

鳥さん…いえ、違います

しおりを挟む
ごめんなさい、本日二度目の投稿です。前話(お師匠様)を読んでないよって言う方。そちらからお入りください!

============


「ねぇねぇイカルスゥ」

母様が、兄様の軍服の裾をつまみ、目を輝かせながらつんつんと引っ張ります。
その意味を察したのか、チラッと父様を見る兄様。

「イカルスすまない。ジャクリーンの我儘を聞いてくれないか?」

はぁ~~。
最近の兄さまはため息がとても多いです。
可愛そうに、何やら苦労が絶えない様子。

「いえ、母上、ぜひお力添えをお願いできますか?」
「もちろんよ、任せてちょうだい!」

どうやら母様がスタンピードを収めに行くようです。
ならば父様は必ず着いて行くだろうし、私とシルベスタ兄様はお留守番ですね。

「君、その事は私達が引き受けた。一応シュカルフ様に報告だけしておいてくれ。女神一行が向かったと言えば理解してくれるだろう」
「はっ!連絡を取り次第、私どももすぐに向かいます。ご武運を!」
「あぁ………任せるよ」

まあ多分、城でお茶でも飲む羽目になると思うが。

「では兄様、母様、頑張ってください!」

そう言いながら手を振ると、その手を母様にガシッ!と捕まれた。

「さっ、行くわよエレオノーラ」
「え~私もですか?」
「何言っているの。ベルディスク砦までどれだけ有るのか分からないけど、あなたがいれば一瞬でしょう?それだけ被害が最小限で抑えられるのよ?」

なるほど納得です。
では皆さんを送りに行きましょう。
ならばと皆それぞれ手をつないでもらい、最後に私も手をつなぐ。
というか、母様に掴まれたままです。

「ところで兄様、ベルディスク砦ってどこですか?」



兄様の持っていた地図で、大体の場所は把握しました。

「今はここ、そしてこの山はあそこに見えている奴だ。その山間のここにベルディスク砦が有る」

確かにあそこに見える山と山の間が窪んでいますね、その辺にベルディスク砦が有るんですか。
でもなぁ、初めて行く場所にいきなり転移なんて、危なくないかなぁ。
それなら風さんにお願いして、空から目視しながら行った方が良いかなあ。
でもそれを下から見られたら、手を繋いで数珠状態の人が飛んでるのって、爆笑っぽく見えませんか?
それなら大きな鳥さんに来てもらって、その背に乗って飛んで行くって言うのもステキよね。

「何をしているんだ?もし出来ないなら無理をしなくてもいいぞ?」

このままこの馬車で向かってもいい。
そう言いますが、問題はそこではないのです。

「兄様、ケガを覚悟と、間抜けに見えるのと、優雅に行くのと、どれがいいですか?」
「まぁ…その三択ならば、最後の優雅を選ぶが……一体どうしたんだ?」
「分かりました!」

兄様の返事も貰いましたし、ここは優雅に参りましょう。
私はいつも通り手を組み、一心に願いを奏でます。

”お願い鳥さん、私達を乗せて運べる鳥さん、出来れば大人5人が乗っても大丈夫そうな鳥さん、どうか私の願いを聞いて”

暫くそうしていると、突然太陽を遮り巨大な影が現れました。
”我を呼びし者はお前か”
頭の中で声が響きます。

「はい、え~と、私達を運んでくれる鳥さんはあなたですか?」
「鳥さんって…あれはどう見てもドラゴンだろう!?」

そうとも言いますね。
でも、ペールブルーに光り輝く鱗が、いかにも優雅じゃありませんか。

「とにかくここに降りられたら大惨事になる!この先に広けた場所があるからそこに降りてもらえ!」
「了解しました!」

しかしその広けた場所って、よく軍隊のパレードとかセレモニーが開かれる、とても大きな広場の事ですか?
つまり市街地の中心に有る一角で、現在軍隊や騎士さん達が、来月行われる軍事パレードの練習をしている所ですね。(説明っぽ)
そして突然現れた巨大なドラゴンが、広場目指して降りようとすれば、当然そこにいた人はわらわらと逃げますわ。
お騒がせします。

”さて、我にいかような用だ。何やらおぬし達を乗せて運べと言っていたようだが”
「そうなんです。あの山間にあるベルディスク砦に行きたいんですけど、私はまだ行った事が無くて、出来れば誰かに連れて行ってほしいなぁなんて………」
”なるほど、まだ知らぬ地に転移などは自殺行為とも言えよう。見ればお前は我と同族のようだ。その願い叶えてやろう”
「同族?」

同族…私もドラゴンの血を引いているのでしょうか?
そう思い首をかしげる。

”神似者の事だ、まあ年若いお前だ。分らぬならそれでもいい”

それでもいいなら、分からないままでもいいんですね。
ありがとうございます。

「ねえエルちゃん?このドラゴンとお知り合いなの?」

いつの間にか隣にいた隊長が、おずおずと私に問いかける。

「たった今お友達になりました!スタンピードが起こっている所まで、私達を乗せてくれるそうです」
「スタンピード!!」

それを聞いた人々が、青ざめ顔た顔を引きつらせます。

「スタンピードが起きている!すぐに隊列を組み向かうぞ!」

隊長も青ざめ、それでも魔物の群れを倒しに向かうようです。

「ちょっと待てルドミラ、それは無用だ………彼女たちが行く」
「………あぁ~~理解しました。おいお前たち、ドラゴンが去った後、訓練を再開する。それまでは小休止だ」

そう言い戻っていく隊長。
その先にはジョンさん達もいました。
やっほ~と私は手を振ります。

親切なドラゴンさんは羽をスロープのように降ろしてくれて、私達は何とかその背に乗る事が出来ました。
捕まるところがほとんどない背です。
これは慎重に行かなければ。

”では参るぞ、しっかり掴まっておれ”

どこに!
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

貴方なんて大嫌い

ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...